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AMD初のCPUはIntelのパクリだった? それでも公認せざるを得なかった裏事情:862nd Lap

今やAIチップで世界をけん引するAMD。だが50年前、同社が初めて製造したCPUはIntelの「完コピ品」だったという。現代のコンプライアンスでは考えられない“危うい手法”で誕生した製品を、なぜ宿敵Intelは黙認し、最終的にライセンス契約まで結んだのか。

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 半導体市場において、「Ryzen」や「Radeon」で知られるAMDは、最近ではAI向けGPU「Instinct」シリーズによってNVIDIAを猛追するなど、最先端テクノロジーをけん引する存在となった。

 だが、そのAMDが初めて世に送り出したCPUは、Intel製CPUを徹底的に解析し、そのまま再現した“クローン”だったという。コンプライアンスが厳格化した現在では想像しがたいが、実際にそうして生み出され市場に受け入れられた。

 現在のコンプライアンス重視の時代ではまず考えられない、“危うい方法”で生まれたというが、なぜそんなことが可能だったのか。そして、なぜIntelはそれを許し、最終的にはライセンス契約に踏み切ったのか。50年前のシリコンバレーで起きた“創業期の闇”を説明する。

 AMDが初めてCPUを市場に投入したのは、今から約50年前の1975年だ。その原点となったのが「Am9080」というプロセッサだ。実はこのAm9080は、Intelの「Intel 8080」をリバースエンジニアリングによって忠実に再現した、いわば“クローンCPU”だった。

 この経緯は、Tech系情報サイト「Tom’s Hardware」が2025年10月25日に公開した記事で詳しく紹介されている。そこでは、今では考えにくい手法でAm9080が誕生し、販売に至った過程が明かされている。

 物語の発端は1973年の夏にさかのぼる。当時Xeroxに勤務していたエンジニアのアシャウナ・ヘイリー氏、キム・ヘイリー氏、ジェイ・クマール氏の3人は、退職に当たり社内にあった量産前のIntel 8080試作チップを撮影した。撮られた写真は約400枚に及び、彼らはそれを基に8080の回路図や論理構造を再現したという。

 今日であれば重大な問題になりかねない行為だが、彼らは完成した設計情報を手に、シリコンバレーの企業を回って売り込みをした。その中で関心を示したのが、当時NチャネルMOSプロセス技術を開発していたAMDだった。

 AMDは、この設計情報があれば自社プロセスでCPUを製造できると判断し、生産を開始した。1974年には初期ロットが出荷され、翌1975年に量産が本格化した。この製品こそがAm9080だ。互換チップというより、設計そのものを忠実に再現した“コピー品”であり、これがAMD初のCPUとなった。

 Am9080は1個当たり約0.5ドルで製造され、主に軍需市場向けに700ドル前後で販売されたという。大きな利幅によって得られた資金は、後のAMDのCPU事業を支える重要な基盤になったという。なお、Intel 8080の量産開始は1974年であり、AMDがあえてその翌年にAm9080を市場投入した点には、一定のマーケティング的意図があった可能性も指摘されている。

 当初、Am9080はIntelの正式なライセンスなしに流通していたが、一定の販売実績を受けて両社はクロスライセンス契約を締結する。これはIntelの善意によるものではなく、特に軍需分野では主要部品の「セカンドソース化」が求められていたため、Am9080をIntel 8080の公式なセカンドソースとして認める必要があったからだ。

 法廷闘争に発展することなく契約は平和的に成立し、AMDは契約金2万5000ドル、年7万5000ドルのライセンス料を支払うことで、著作権侵害の責任も免除された。この契約は、その後のAMDとIntelの関係において極めて重要な意味を持つことになる。

 実際、AMDは1980年代前半にIntel 80286の互換チップ「Am80286」(Am286)を製造し、IBM PC/AT互換機ブームの波に乗って知名度を高めた。この提携関係の法的根拠も、Am9080時代に結ばれたライセンス契約にあった。

 その後、Am386を巡って両社は深刻な対立に陥ることになるが、それはまた別の話だ。いずれにせよ、現代まで続くAMDのCPUビジネスの起点が、Intel 8080のコピー品であるAm9080にあったことは間違いない。競争の激しいIT業界にも、どこか牧歌的な時代があったということだ。


上司X

上司X: AMDが初めて販売したCPU「Am9080」は、実はIntel 8080のクローン製品だった、という話だよ。


ブラックピット

ブラックピット: まさかコピー製品だったとは。なかなか面白いお話です。


上司X

上司X: 現代だと面白がるどころの話じゃないけどな。そもそも会社を辞めるときにサンプル製品の写真を撮って持ち出すのはアウトだろう。


ブラックピット

ブラックピット: まあ、そうでしょうねえ。しかも、そこから勝手に設計図を起こすし。


上司X

上司X: AMDは、自社で初めてCPUを製造したものの開発自体はしていない、という主張なんだよな。


ブラックピット

ブラックピット: そういうことになるんですかね? NチャネルMOSプロセス技術である程度工夫したのでは?


上司X

上司X: 今回の記事では、Am9080はIntel 8080よりもダイサイズが小さくてクロック数も高かった、と書いてあるな。その点ではAMDの技術力がIntelを上回っていたのかもしれない。


ブラックピット

ブラックピット: なるほど、AMDとしての実力は発揮されていたのですね。Am9080がオリジナルではなかったのが残念です。もし設計からCPU開発を手掛けていたら、また今とは違うAMDが存在していたのかもしれません。


上司X

上司X: そうかもしれないけど、逆に言えばIntel 8080のコピー品を作らなかったら、今のAMDは存在しなかったのかもしれない。ともかく、過去の事実があったからこそ今のAMDがあるのだろう。まさに企業に歴史あり、というところだな。

川柳

ブラックピット(本名非公開)

ブラックピット

年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)

昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。

上司X(本名なぜか非公開)

上司X

年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)

中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。


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