HDDも世代交代? Microsoftがこっそり開発中の「1万年消えない不滅のディスク」:869th Lap
AIの活用が進む中、増え続けるデータの保存と、ストレージの寿命が課題になっている。Microsoftは、従来10年程度しか持たなかったHDDの寿命を超える新しい技術を開発した。理論上1万年もデータを保存できる“不滅のディスク”だ。記録に使われている素材は意外なものだという。
生成AIブームを追い風に、世界各地でデータセンターの増設が進んでいる。その結果、GPUやメモリだけでなく、HDDの供給にも一部で逼迫(ひっぱく)している。AIの学習データやバックアップなど、膨大なデータを保存するニーズが急増しているためだ。
振り返れば、ITの発展は常にストレージ技術の進化とともにあった。磁気テープからHDD、SSDへと、高速化と大容量化を繰り返し、クラウド時代には分散ストレージが標準となった。「より速く、より安く、より多く保存する」ことは、ITインフラにとって永遠のテーマといってよい。
そうした進化が続くなか、Microsoftの研究チームが、理論上少なくとも1万年も読み取り可能な新しいストレージ技術を開発したという。しかも、その記録媒体の素材は、ハイテクとは無縁に見えるキッチンで使われるあの素材だという。HDDもついに世代交代か。Microsoftがこっそり完成させた、「不滅のストレージ」とは?
基礎研究から最先端技術までを担うMicrosoftの研究機関Microsoft Research(MSR)は、AIや量子コンピューティング、セキュリティ理論など、10年先を見据えた研究テーマに取り組み、その成果を積極的に公開してきた独立性の高い組織だ。
MSRが2025年2月18日に次世代ストレージ技術に関する研究成果を発表した。この内容は学術誌『Nature』にも掲載され、注目を集めている。
同機関が進めてきた「Project Silica」は、フェムト秒レーザーを使ってガラス内部にデータを記録するプロジェクトだ。ガラスを記録媒体とするこの技術は、電磁波や水、熱、粉じんといった外的要因に対して高い耐性を持ち、290℃の環境下でも1万年以上データを保持できると推定される。室温環境ではさらに長期の保存が可能だという。およそ10年で劣化リスクが高まる磁気テープやHDDと比べ、長期アーカイブ用途において飛躍的な優位性を備えている。
フェムト秒レーザーは、1000兆分の1秒という極短パルスで発振する高エネルギーレーザーで、熱影響をほぼ与えずに材料内部を精密加工できるのが特長だ。今回の発表で特に注目すべき点は、記録媒体として従来の高価な石英ガラスではなく、調理器具やオーブン扉などにも使われる安価なホウケイ酸ガラスを採用したことだ。これにより、ストレージ製造コストの大幅な低減が見込まれる。
さらに、データ書き込み方式を「位相ボクセル」方式に変更したことでプロセスが簡略化され、読み取り用カメラシステムの小型・低コスト化を可能にした。加えて、複数のフェムト秒レーザーを並列動作させることでスループットも向上。4本のレーザーによる並列書き込みでは、65.9Mbit/sの速度を実証した。HDDやSSDと比べれば高速とは言えないものの、本技術は超長期保存を目的とするアーカイブ用途を想定しており、実用性は十分に高い。
実験では、直径12センチ、厚さ2ミリの石英ガラス片に最大4.8TBのデータを保存することに成功した。ホウケイ酸ガラスでも2.02TBを記録できるという。また、Warner Bros.の映画『Superman』を保存・再生するデモンストレーションと通して、技術の実用可能性が示された。
MSRによれば、Project Silicaは既に研究フェーズを完了しており、今回の成果公開によって外部での応用やさらなる技術発展が期待されている。超長期保存を可能にするガラスストレージが実用化される日は、そう遠くないのかもしれない。
上司X: Microsoft Researchが研究してきた、ガラス製ストレージがいよいよ実現するかもよ、という話だよ。
ブラックピット: Project Silica、数年前にも話題になりましたよね。ここでも話した記憶が。
上司X: そうだな。以前はまだまだ研究段階だったが、いよいよ現実味を帯びてきたということだ。
ブラックピット: ストレージの歴史の中でもいろいろな記録媒体が採用されてきましたが、ガラスに記録とはなかなかやりますね。
上司X: そうだな。今回の発表では高価な石英ガラスじゃなくてホウケイ酸ガラスを使えるってことが大きなポイントだ。
ブラックピット: 学生時代、化学実験室にあったビーカーとかフラスコに使われていたガラスですよね。
上司X: ああ、あの透明感があって耐熱性に優れたガラスだ。
ブラックピット: いやあ、化学実験室でいろいろあった青春時代を思い出しますねえ。あの三角フラスコの輝きが脳裏に浮かぶとともに、ガラスストレージ早く製品化してほしいものです。
上司X: キミの青春時代に化学実験室で何があったのかは正直どうでもいいのだが……(苦笑)。ガラスストレージが実現してほしいのは俺も同意だよ。きっと、ストレージが紙テープから磁気テープへ変遷した瞬間に立ち会った人はかなり感動したと思うんだ。俺もその気分を味わってみたいものだよ。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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