400万のサーバが1900万に? PC・ハードの価格高騰の渦中で起きたIT担当者の悲劇:PC価格の上昇が企業にもたらす影響(2026年)/後編
PCの価格高騰による影響はもはや避けられない。企業は、価格上昇によるコスト増加をどのように抑えていくべきだろうか。調査を通して分かった対策の傾向やトラブルの事例などから、対処法を探る。
各メーカーのPC価格の相次ぐ値上げが、企業のコスト負担を押し上げている。前編で紹介した通り、約半数の企業が前年比で5〜15%のPC調達予算増加を見込んでおり、調達部門にとっては頭の痛い問題だ。
後編では、企業が価格高騰にどのように対応しているのか、調達台数の削減やスペックダウン、リースの延長といった具体的な対策の実態を、2026年2月27日〜3月19日の調査結果(回答247件)を基に解説する。さらに、納期の遅延や価格変動に伴うリスクへの対応状況にも触れ、今後のPC調達で検討すべきポイントを整理する。
2026年度のPC予算修正「対策できていない」が過半数
はじめに、「2026年現在のPC価格上昇を受け、予算計画をどのように立て直すかを聞いたところ、「現時点では具体的な予算対策はできていない」(55.5%)という回答が半数以上を占め、次いで「上昇分を見込んで予算枠を増額した」(19.4%)、「予算総額は変えず、調達台数を減らして調整する」(13.0%)、「スペック(CPU、メモリ等)を下げて単価を抑える」(7.3%)が続いた(図1-1)。
各メーカーが2026年に入ってから値上げに踏み切ったということもあり、まだ具体的な予算対策を立てられていない企業が多い。予算総額を変えずに調達台数の削減やスペックを落とす場合、旧PCやスペックが合わないPCを使い続けることによる生産性の低下やセキュリティリスクの増大にもつながりかねず、苦渋の選択を迫られている様子だ。
400万のサーバが1900万に? 担当者も震えたハード値上げの悲劇
続いて、フリーコメントで寄せられた「PCの価格上昇を実感した具体的なエピソード」や「PCの値上げにより発生したトラブル事例」を紹介する。
前者のエピソードでは、「値上がり前は400万円で購入できたサーバが、見積もりでは1900万円と言われた」や、「以前は1台8万円以下で導入できたが、数年前からは10万円以内でも難しくなった」といった、価格高騰を実感した声が多く寄せられた。
「顧客に提出した見積書が1日で無効になるため、顧客からのクレームも多く、混乱が続いている」や「見積期限が切れて再見積もりしたら、価格が10万円も上がっていた」のように、見積もり期限も短縮傾向にあるとの声が寄せられた。
その他、「メモリ、HDDの価格が4倍になった」や「HDDとDRAMメモリの市場価格が前年の1.5倍以上」「256GBのSSDを12月初めに購入したら3600円をオーバーしていた(半年前は3000円前半)」など、SSDやメモリといったパーツまでも価格高騰の煽りを受けていると嘆く人も多い。
後者のトラブル事例では「期限に調達できず、入札不調になった」や「納期に間に合わず、顧客に迷惑をかけたことが多々ある」「買い換えをためらい業務が遅れている」などPC調達ができず業務に支障が出ているケースや、「スペックダウンを提案したところ、クレームの嵐に……」「予定していた台数が買えず、動作の重い旧型機を数名が使い続けることになり、業務効率の低下と不満が噴出した」のように、予算を抑えるためスペックダウンや旧PCを使い続けたところ、従業員トラブルに発展したとのケースも多く寄せられた。
スペックダウンされやすいパーツはどれ? PC予算割合で違いも
始めの項のアンケートでは、「スペック(CPU、メモリ等)を下げて単価を抑える」選択肢が選ばれていることにも言及した。それでは、PCを調達する際にスペックを下げる必要がある場合、どのパーツの性能を優先的に抑えることが多いのか。
アンケートでは、ファイルの整理などユーザーの工夫で使用を抑えやすい「ストレージ」が38.9%と最も多く、次いで「CPU」(36.8%)、「GPU」(26.7%)、「メモリ」(21.1%)、「ディスプレイ」(21.1%)と続いた。
また、前編で紹介した「予想されるPC調達コストの増額割合(昨対比)」とのクロス集計で見ると、予算に占めるPC調達コストの増額割合が大きい企業ほど、CPUなどの高額パーツを削る判断を下す傾向にあった。増額が10%未満では半数近い49.1%が「ストレージ」の性能を抑える傾向にあったが、10%以上では「CPU」や「メモリ」の割合が高い。また20%以上では「GPU」が40.0%と極端に高まっており、主にクリエイティブ領域で活用されるAI開発用PCなどの高機能PCですら、ダウングレードするしかない厳しい判断を迫られているようだ。
コスト増に納期遅延……PC調達で有効なリスク回避策はある?
次に、PC調達において最も懸念していることを聞いたところ、「本体価格の高騰による予算超過」(47.4%)、「円安によるさらなる価格改定」(24.7%)、「納期遅延による新入社員配備やリプレース計画の破綻」(22.3%)、「旧世代パーツ(DDR4メモリ等)の欠品による保守・修理への影響」(5.7%)と続き、主にコスト面と納期面の影響が大きい。2026年もなお続く円安基調により、値上げや価格安定化が遅れてしまう懸念もあり、納期遅延による業務破綻リスクを心配する声が多い。
現在、メモリやSSDの供給不足により納期が3カ月〜半年に長期化する可能性があるとも言われているが、調達時に考えられる対応策には、どのような手法があるのだろうか。
「特に何もしていない」(45.7%)を除くと、「発注から納入までのリードタイム設定を長くする(半年程度)」(23.1%)、「特定のメーカーにこだわらず、納期が早いモデルを随時選定する」(17.8%)、「3月までの『値上がり前在庫』を確保すべく早期契約する」(13.0%)、「予備機(ストック)の保有数を増やす」(10.5%)と続き、特定のメーカーにこだわらず早く届くPCを都度選ぶという実利重視の動きをとる企業が目立つ(図2-1)。
この結果を業種別で見ると、商社や小売、流通、物流などの「流通・サービス業全般」と、IT製品販売や受託開発などの「IT製品関連業」で、納期が早いモデルを随時選定する割合が高い。前者は、PC1台の稼働状況が発注から在庫管理までの物理的な流れに影響し、業務停止につながるリスクが特に大きい業界だ。後者は、IT関連の業務経験が比較的多いこともあり、特定のPCメーカーにこだわらずに選定している企業もある。
関連して、PCの調達・運用コストを抑えるために検討あるいは実施している手法を聞いたところ、「社内の余剰PCの棚卸しと部署間での再配置」(50.2%)、「リースの期間延長(再リース)」(28.3%)、「1人複数台利用の制限(1人1台の徹底)」(17.4%)が続いた(図2-2)。
基本的には新規購入やリースを避け、社内資産を再活用する施策が中心だ。コロナ禍を機に注目を集めたDevice as a Service(DaaS)への移行は現状そこまで検討されていないものの、価格変動への対応や「Windows 10」終了後の運用支援などのメリットもあり、今後再注目される可能性がありそうだ。
PCは今や企業活動においてなくてはならない存在である。だからこそ影響も甚大になりがちで、今後はそうしたリスクも想定した上で調達ルールを制定していくことが不可欠となるだろう。
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