編集者がベンダーに直撃 Notion、マネフォ、Backlogの最新アプデをレポ:「Japan IT/DX Week 春 2026」現地レポ(2)
国内最大級のIT展示会「IT・DX・AI総合展」が開催された。編集部では、3記事に分けて注目の製品・サービスを解説し、当日会場に行けなかった人でも最新のIT事情が分かる記事を発信している。第2回の本記事では、業務ツールのAI導入における注目ポイントを紹介する。
国内最大級のIT展示会「IT・DX・AI総合展」(Japan DX Week、Japan IT Week、EC・店舗Week、営業・デジタルマーケティングWeek)が2026年4月8〜10日、東京ビッグサイトで開催された。
その概要と編集部の注目展示やトピックスを、前回の「セキュリティ」記事に引き続き、会場に行けなかった方のために紹介する。本記事では「AI」と「業務DX」の連携に関する注目ポイントを解説していく。
バックオフィス系SaaSはAI搭載進む、各社の最新AI連携に注目
経理や人事、法務、総務などバックオフィス業務のSaaS化は、システムのオフバランス化や個別業務のコスト低減、新機能の取り入れなどクラウドならではの利点を評価され、今日ではデジタル化による経営改善の鍵として捉え直されている。とりわけ、AIの導入には各社力を入れており、これまでに無かった機能の搭載が進んでいる。
マネーフォワードはERP化、AIエージェント機能の一大強化を発表
典型的な例は、展示会にてフロア各所にブースを設けてPRしていたマネーフォワードだ。同社は数々のバックオフィス業務SaaSを開発しており、「マネーフォワード クラウドERP」と銘打って、コンポーネント型で必要な機能を組み合わせて構築するERPを打ち出している。
イベント前日の2026年4月7日に、マネーフォワードは記者会見で重要発表をしている。これまで個別業務に特定のAIエージェント機能を組み込んできた同社は、新サービス「マネーフォワード AI Cowork」(2026年7月提供開始予定)により、自然言語の対話でバックオフィス業務を自律的に遂行できるようにするという。
提供されるAIエージェントはユーザー開発もでき、AIオーケストレーションで業務を自動実行できる見込みだ。「Microsoft Excel」や「Slack」などのデータを活用できる「データマート機能」も備えるという。AIエージェント機能への注力により、バックオフィスの自動化・自律化を目指し、IT予算を人件費予算に替えることで、ツールが人間を代替するという。
その他、「リモートMCPサーバー」全プランの提供開始や、外部生成AIサービスから会計データサーバに直接アクセス可能になったこと、業務を丸ごと同社にアウトソーシングできるAI-BPOサービスも紹介された。中小企業向けの「おまかせ経理」、中堅・大企業向けの「おまかせ請求回収」マネージドサービスが代表的だ。
会見では大きな変化を強調していたが、展示会では既存サービスの包括的な使い方が紹介されており、バックオフィス現場業務の負担を軽くするイメージを伝えていた。
人事・労務、その他ツールもAIに傾注
また、人事・労務系業務に注力しているSmartHRも、社内ナレッジ検索AIやRAG活用、ルールを回答するAIアシスタント機能を追加してきた。注目は、「SmartHR」と外部システムの従業員情報を連携する仕組みをアプリストア形式で選べる「SmartHR Plus」だ。現在は120以上の外部サービスと連携が可能になっている。
LayerXの「Bakuraku」も業務特化のAI機能としてAI-OCRや入力補助、PDFの取引先ごとの自動分割などを組み込んでいる他、社内問い合わせ対応自動化のAIエージェント(ヘルプデスク)を追加している。さらに「バクラクインテリジェンス」により、データ分析によるコスト分析などを可能とした。
また、ラクスの「楽楽クラウド」も、清算内容の自動作成や運用方法提案、ナレッジデータからの自動応答などの機能を加えていた。
ナレッジの有効活用以外にも、個別業務へのAI適用による省力化や自動化はすでに当然の機能だ。今後は、自然言語での指示により、連携する業務全体をシステム連携や自動処理にいかにスムーズにつなげていけるかが、バックオフィス系SaaSの注目ポイントになりそうだ。
人事・労務系ではタレントマネジメント機能がAI利用で進化中
人事・労務系のSaaSではタレントマネジメントを全面に押し出すベンダーもあった。SmartHRやHRBrainなどが連なる中でも、カオナビのブースがひときわ目立っていた。
カオナビは「従業員の顔写真が見える」独自の手法でタレントマネジメント分野を開拓してきた。当初は従業員のプロファイル管理機能が注目されたていた同社は、評価ワークフローや目標管理機能などを加え、シャッフル分析(配置シミュレーション)、パルスサーベイ(組織診断)、スキル管理(スキルマップ)などの機能を追加し、経営課題に密着した人材活用を図るプラットフォームとして成長してきた。
2026年2月には、採用管理システム「カオナビ採用」をリリースした。人材採用から定着、活躍までを支援するプラットフォームに成長させていくという。各種のデータ連携や、AIエージェント機能も準備中だ。
同社は2025年10月に新ビジョン「Talent intelligence」を発表しており、人材データプラットフォームにAIを加えて、汎用性の高いソリューションを提供することを宣言している。すでにAI-OCR、目標・評価アシスト、ダッシュボード診断、人材情報要約などにAI機能を実装している。
人材不足解消や適材適所の配置、あるいは従業員の満足度向上を目指す企業にとって、人事担当者の知識とノウハウに依存する体制からの脱却は重要だ。AIによる分析や提案機能を通して、データに基づく客観評価を利用していく方向性は、今後ますます顕著になるだろう。
NotionはカスタムAIエージェントで業務自動化プラットフォームに進化
コラボレーション領域では、2025年に続き「Notion」の機能が注目された。展示会では数々の事例がパンフレットなどで紹介されていた。Notionの前年からの大きな追加要素は、カスタムエージェント作成が可能になったことだ。
カスタムエージェントは、既存ドキュメントやデータベースをコンテキストとして使い、SlackとNotionのイベントをトリガーとして規定のワークフローを実行できる機能だ。テンプレートが提供されているので、それを利用してトリガー(またはスケジュール)を設定し、定義された自動処理を流れ通りに実行する。
「Notion AI」のエージェントはオンデマンドで質問や回答、コンテンツ要約などの単発タスクに対応しており、カスタムエージェントではトリガーに応じて自律的な指示に従って動作する。
メールやカレンダーと接続すると、メール自動検索や自動回答、イベント作成、更新などが容易になる。Webや外部アプリの接続も可能だ。PCに人間が張り付いて作業するのではなく、24時間バックグラウンドで業務をこなすことで、人間の業務を代替する新しい使い方が可能になった。
その他の注目製品は?
このほかにもさまざまな業務に特化したAI組み込みツールが紹介されていた。特に目をひいた4件を簡単に紹介しよう。
AIチャットbotシステム チャットプラスの「AI AgentPlus」機能
チャットプラスのAI AgentPlusは、「エージェントに人格を与える」ことで、共感を優先することができるAIエージェントだ。顧客対応に利用すれば、顧客の履歴などの情報から状況を分析して最適な対応方針を提案できる。独自開発の「ChatPlus AI」と他の生成AIを組み合わせて運用でき、精度と速度、コストにおいて最適な利用ができる。「Salesforce」との連携機能も注目だ。
既存Webサイトやアプリを最大45言語に翻訳するWovn
Wovn Technologiesの「WOVN.io」は、既存のWebサイトに1行のスクリプトを挿入するだけで多言語に翻訳した各国用Webサイトを作成できる。Webサイトだけでなく、スマホアプリやチャットbot、メール、画像、データベース、FAQなど、多様なコンテンツに適用できる。
独自の翻訳基盤により、3000を超える分野特化型生成AI翻訳エンジンや、50以上の機械翻訳サービスと連携でき、30種類以上の業界用語集に対応する。また、ChatGPTと連携した独自オプション「WOVN.copilot」により、訳文の評価や指摘、修正提案を実行でき、確認・承認プロセスを入れることができる。質の高い「新しい人力翻訳」が可能な点が特徴だ。
プロジェクト・タスク管理ツールのbacklogにAIアシスタント追加
ヌーラボの「Backlog」は、AIアシスタント機能を2026年3月に正式リリースした。BacklogのAIアシスタントに「進捗レポートを作成して」「◯◯さんの稼働状況は?」など、言葉で指示や質問をすると、レポートや回答を返してくれる。コメントの要約や報告書の自動生成、タスク入力などの簡素化などの効果が表れているという。
クラウド型ワークフローツールのkickflowにもAI機能が追加
ワークフローツール「kickflow」にもAI機能が追加され、入力補助やワークフロー検索、申請前レビュー、フォーム作成補助に役立てられるようになった。
正規表現のフォーマット提案にもAIで対応した。また、2025年5月にMCP対応サーバを開発し、各種AIエージェントがkickflowに接続できるようになっている。もともと多様なSaaSやチャットツール、iPaaSなどとのAPIおよびWebhookによる連携機能を持っており、多機能性が操作のさらなる簡素化によって生かせるようになっている。
以上、DX Weekで興味をひかれたツールについて、展示会での詳細紹介の有無にかかわらず特徴を紹介した。発展の目覚ましいAI分野は、業務DXの中核となっている。会場にはこれらに加えたAI・業務自動化展フロアもある。次回は、主に同フロアの展示の中の注目ソリューションを紹介していく。
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