「IT人材がウチの会社を辞める理由」 “給料が安いから”は2位、1位は?:IT人材に関する意識調査(2026年)/前編
多くの企業がIT投資額を増やす一方で、現場からはIT人材不足を訴える声が聞こえてくる。キーマンズネットの読者調査から浮かび上がった、IT人材が思うように集まらず、なかなか定着しない理由とは。
企業のIT投資が活発だ。ITコンサルティングと調査を手掛けるアイ・ティ・アールによると、企業のIT予算の増減を示す指数は5年連続で上昇している。2025年度の指数は、2006年度に記録した過去最高値を更新した(注1)。
一方で、キーマンズネットが実施した「IT人材に関する意識調査」(実施期間:2026年5月20〜29日、回答数149件)では、自社におけるIT人材の充足状況について「非常に不足している」、あるいは「やや不足している」と答えた割合が65.8%に上った。
IT投資額が増える中でも、IT人材不足はなかなか解消されない。IT人材が期待通りに集まらず、定着しないのはなぜか。今回の調査で読者の票を最も集めた理由は、「相場に見劣りする給与・待遇」ではなかった。
この記事で取り上げる内容
- IT人材がわが社に集まらず、定着しない理由
- ユーザー企業は「中途採用重視」、ITベンダーは?
- 今、最も不足感の強い「IT人材」の職種
安い給料より多くの支持を集めた、「ウチの会社を辞める理由」
今回の調査では、「勤務先でIT人材が集まらない、あるいは離職してしまう原因」として考えられるものを3つまで選んでもらった。最も多くの票を集めたのは「IT人材の専門性を正当に評価する報酬・評価体系がないため」(40.3%)だった。「市場相場と比較して、給与や待遇が見劣りしているため」(35.6%)、「IT人材として専門性を磨いても、それに見合う役職が与えられないため」(26.2%)が続いた。
専門性を評価する仕組みの不在は、中長期的なモチベーション低下につながる。IT人材という専門性の高い人材を適切に評価する難しさや、報酬や役職にそれを反映させる取り組みの遅れが浮かび上がる結果となった。
読者からはフリーコメントとして、「会社はDX推進やAI活用、ITシステムの高度化を掲げている。しかし、IT人材を評価する体制もキャリアパスの提示も専門性への評価もなく、『コストセンター扱い』が変わらない。そのため、能力の高い人材が管理職になった瞬間に転職する悪循環が続いている」(ユーザー企業/情報システム部門所属)、「IT人材は、特に運用系は優遇されていないので、やりたがらない」(ユーザー企業/製造・生産部門所属)といった声が寄せられた。
全体的に、人材育成への投資を求める声や待遇を改善すべきといった指摘が多い。事業成長に貢献するITシステムを実現する「攻めのIT人材」、ITシステムの運用を支える「守りのIT人材」、それぞれの専門性への適切な評価や、人材育成制度が求められているようだ。
ユーザー企業は、新卒よりも中途重視
IT人材の採用状況はどうだろうか。
2027年度のIT人材の採用予定数を尋ねたところ、「今年度とほぼ変わらない」と答えた人が33.6%で最も多く、「若干増やす」(22.1%)が続いた。「採用は実施しない」との答えも一定数(19.5%)存在する。人材不足を実感している層(65.8%)の大きさに対し、採用を増やそうとしている層は多くないようだ。
来年度に採用を実施すると回答した層に、重点を置く対象を尋ねたところ、「中途採用を重視する」が53.9%で最も多かった。
中途採用を重視するのは、製造業や流通・サービス業などをはじめとするユーザー企業のようだ。ユーザー企業に勤務する人の68.0%が「中途採用を重視する」を選んだ。SIerや受託開発などのIT企業に勤務する人は、「新卒(または第二新卒)採用を重視する」(40.0%)だった。
若手を一から育てるよりも、既に育った人材を中途で採ろうとする傾向は、ユーザー企業で強いようだ。多くのユーザー企業が即戦力を求め、経験者を奪い合っている実態が浮かび上がる。
その定着施策、本当に求められている?
思うように人材が集まらない、あるいは離職してしまう原因が評価や報酬の制度にあるのであれば、これまでの施策の見直しが必要になる。
IT人材の確保や定着のために新たに実施、または強化している施策について尋ねた設問に対し、最も多い回答は「賃金水準の引き上げ・改定」(22.1%)だった。
多くの読者がIT人材が集まらない、あるいは離職してしまう原因として考えている評価制度や報酬制度関連はどうか。「IT人材専用の評価・報酬体系の導入」を選んだ人は16.1%にとどまった。
人手が集まらない、定着しない原因として多くの読者が指摘する、専門性の評価や報酬制度の不在に踏み込んでいる企業は多くないようだ。
最も足りないのは「上流人材」
最後に、今最も足りていないIT人材は何か。
現在、不足感の強いIT人材の職種を尋ねた設問に対しては、「プロジェクト管理・統括」が39.7%で最も多くの票を集めた。「AIツールの利活用・データ抽出」(29.4%)、「IT戦略・企画」(28.7%)、「セキュリティ戦略の立案・ガバナンス構築」(23.5%)、「インフラ・クラウドの要件定義・設計」(22.1%)と続く。
全社を見渡してIT施策のかじ取りをする上流人材に加えて、AIツールの実装を担当するスキルを持つ人材の不足感が強いようだ。
今後、評価される人材に関しても同様の傾向が見られる。「AIツールの普及に伴い、今今後勤務先で高く評価されるIT人材像」を尋ねたところ、最も多く票を集めたのが「ビジネス課題を解釈し、要件定義する能力に長けた人材」(36.9%)だ。将来的にも上流人材が評価されると考える人が多いことが分かった。
その他に多くの人が選んだ選択肢を見ると、「AIを使いこなすことを前提に、より広範で高度な技術力を持つフルスタック人材」(35.6%)、「AIをシステムや業務に組み込む設計・実装ができるスペシャリスト」(34.9%)、「AIが生成したアウトプットを検証・修正できる人材」(24.8%)が続いた(複数回答可)。AI活用が前提となる時代では、AIに関するスキルに加えて、より広範、かつ実装も含めたITスキルが求められると予測する人が多いようだ
現状で足りないIT人材、これから求められるIT人材としてともに上流人材を多くの人が選んでいることは、今回の調査で注目すべきポイントだろう。
上流人材を確保するためには、他社よりも高い待遇を用意して中途人材を採用するだけでなく、既存の人材がスキルアップに励むためのモチベーションを確保する制度設計も重要になる。専門性を適切に評価し、それを待遇に反映するための仕組みを整えることは、IT人材に限らず、労働人口が減少する今後、優秀な人材をライバル企業に奪われないためにも必須になりそうだ。
後編では、AIに代替されやすい業務に関する調査データを紹介しつつ、AI時代に求められるIT人材像をさらに掘り下げていく。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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