Excelや紙でバラバラな人事データ……安芸高田市が挑む、人事労務の一元管理
人事評価データなどをExcelや紙で管理し、進捗状況の把握や集計に頭を悩ませていた安芸高田市は、あるツールを導入して「データの一元化」による業務効率化へ舵を切った。
広島県安芸高田市は、職員の人事評価や異動希望調査、年末調整といった業務を「Microsoft Excel」(以下、Excel)や紙で実施していた。しかし管理が煩雑で担当者に負荷がかかっていたため、人事評価・労務管理のシステム化を決めた。
限られた人員と財政状況の中で、同市はどのようにして業務改善への一歩を踏み出したのか。導入の背景とツール選定の決め手、そしてシステムによって実現を目指す未来像について、安芸高田市の総務部総務課職員係の小野氏(係長)と吉川氏(主任)に聞いた。
Excelと紙による管理に限界を感じ、人事労務のシステム化を決める
安芸高田市は当初、人事評価や異動希望調査をExcelや紙で実施していた。
人事評価はまず、期首面談を実施し、職員が目標を設定してExcelシートに入力し、所属長に提出する。所属長は全員分のシートを総務部に提出し、職員係がそれをチェックする。その後、期末面談の前に所属長が面談で達成度を評価し、データを入力したシートを再度職員係に提出する。職員係は結果をExcelに入力して、市長や副市長に展開する。
小野氏は、「庁内メッセージのやりとりだけでは、『提出データがどの段階で止まっているのか』といった進捗状況の把握が難しく、集計にも膨大な時間がかかっていました」と当時を振り返る。
さらに毎年の年末調整では、臨時職員を含む全職員が用紙に必要事項を手書きし、資料を添付した上で総務課に提出していた。職員係は、提出された書類を確認しながら1件ずつ手作業で給与システムにデータを入力する必要があり、時間外労働や人為的ミスの発生抑止が大きな課題だった。
こうした中、2026年度から新たに「DX推進課」が創設されることになる。組織全体でDXを推進する機運が高まったことをきっかけに、職員係は人事評価・労務管理のシステム化に向けた予算を申請し、導入するに至った。
システム導入を後押ししたある機能とは
複数のシステムを比較検討する中で、安芸高田市が選んだのが、「HRBrain タレントマネジメント」と「HRBrain 労務管理」だ。選定で主に重視したのは、「価格」と「操作性」だったという。
「他社製品も幾つか検討しましたが、最終的にHRBrainのシンプルなUIが導入の決め手になりました。例えばある製品は、メインメニューとは別の画面から年末調整サービスにアクセスしなければならないものもありましたが、HRBrainは、メインメニューから人事評価や人員配置、年末調整、ストレスチェックなど全てのサービスにアクセスできます。シンプルな操作画面は直感的で使いやすく、現場の職員が活用しやすいのではないかと考えました」(吉川氏)
吉川氏によると、導入をさらに後押ししたのが、同システムに備わっている「HRBrain WorkSuite」機能だったという。
HRBrain WorkSuiteは、運用スタイルに合わせてカスタマイズが可能なノーコードのアプリ構築機能だ。テンプレートを基にカスタマイズできるため、一般的な人事業務であれば、プログラミングの知識がない現場担当者でも短時間でアプリを開発して業務を効率化できる。
「幹部会で共有する事業の進捗管理資料がExcelシートだったため、HRBrain WorkSuite機能を使って進捗管理用のアプリを開発してみました。すると、システムに詳しくなくても直感的にアプリを開発できて驚きました」(吉川氏)
同市は2026年3月の議会で予算が確定したのち、「HRBrain タレントマネジメント」「HRBrain 労務管理」の導入を正式に決定した。
年末調整の負担軽減とデータ一元化による人材活用の最適化に期待
導入から約2カ月が経過した現在、安芸高田市はシステムの本格稼働に向けて人事評価シートを作り込んでいる段階だ。小野氏は、「まずは1年間を通じてシステムを確実に稼働させることが直近の課題です」と強調するが、既に具体的な業務効率化のロードマップは見えている。
最も期待されているのが、年末調整における事務負担の軽減だ。新たな業務フローでは各職員がシステムに直接データを入力するため、集約したデータをCSVで書き出し、既存の給与システムへ一括インポートする運用に変えることができる。これによって、提出された年末調整の用紙を確認しながら1件ずつ手入力していた手間がほぼゼロになり、職員係の時間外労働の削減と人為的ミスの抑止効果が期待される。
「これまでは必要項目を用紙に手書きする必要があったため、職員に大きな負荷がかかっていました。システム化によって、前年度のデータなどを参考にしながら入力する形になれば、作業が大幅に効率化され、組織全体の事務負担軽減につながります」(小野氏)
また、吉川氏は、「アンケート機能を活用すれば、アンケートの結果をすぐに集計して可視化できるだけでなく、他のデータとひも付けられます」と期待を寄せる。
「これまでは、職員を対象にしたアンケートを『Google Forms』などで実施してきましたが、職員が名前や所属を逐一入力する必要がありました。システム内でアンケートを実施できるようになれば、既にアカウントを登録しているため、そうした手間がかかりません。また、データの集計や他データとのひも付けが容易なため、職員ごとのデータを蓄積して人事評価や人員配置などに活用できます」(吉川氏)
市役所などの自治体では、定期的な人事異動はつきものだ。小野氏は、「複数のデータを一目で確認できるようになれば、在職年数や本人の希望をひも付けた、より客観的で適切な人員配置が可能になると考えています」と強調する。
「システム化によって、これまでは個別データだった職員の所属や経歴、異動希望などの情報が一元的に管理できるようになります。システムには、ツリー構造で組織を可視化し、人材抜てきや適正配置を実現する『組織図ツリー』機能が備わっています。この機能を使えば、職員のキャリアを確認しながら画面上で配置をシミュレーションできるため、適切な人員配置の実現に貢献できるのではないかと考えています」(小野氏)
少子高齢化や労働力不足により、地方自治体を取り巻く環境は年々厳しさを増している。小野氏は最後に、これからの自治体経営におけるシステム活用の重要性を次のように語った。
「職員数が減少傾向にある中で、DXを推進して事務の効率化を図ることの重要性は増しています。まずは紙を使った業務をできるだけ減らすなど、職員係としてできることを進めていくつもりです。今回のシステム化によってデータを一元管理し、より良い人材育成や適正配置を進めることで、職員の離職防止や人材確保にもつなげていきたいと考えています」
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