逸材も不採用に……トヨタ系企業がAIで「人材採用のブレ」解消、800件の応募を効率化
年間約800件に及ぶ応募書類の確認に加え、採用基準の共有や面接記録の作成など、人事担当者の業務負担が課題となっていた。トヨタテクニカルディベロップメントは、これらの課題に対し、AIを活用した採用業務の見直しに取り組んだ。
トヨタテクニカルディベロップメントは、JAPAN AIが提供する人事・採用業務特化型AIツール「JAPAN AI HR」を導入し、応募書類の一次評価や面接記録の作成、経歴確認などの業務にAIを活用することで、採用担当者の業務負担を軽減するとともに、現場との採用基準の共有を進めている。
年間800件の応募を「ワンオペ選考」でさばく限界……
同社は、計測シミュレーション事業と知的財産事業を展開しており、採用担当者が1人で両事業のキャリア採用を担当していた。年間約800件に及ぶ応募書類の確認に加え、候補者対応や障害者採用など幅広い業務を担う中で、採用戦略や要件の見直しに十分な時間を確保できないことが課題だった。
また、応募書類の選考では、人事担当者は現場が作成した要件定義書を基に一次確認を行っていたものの、評価基準の背景や優先順位まで十分に共有されておらず、過去には選考を通過していたような応募者が不通過となるケースも見られた。現場の判断理由が十分に可視化されていなかったため、人事担当者は都度基準を調整しながら対応していたという。さらに、一次面接では人事担当者が進行役と議事録作成を兼務しており、応募者との対話に集中しながら記録を残すことが大きな負担となっていた。
人事部門内でAI活用への関心が高まったことをきっかけに、トヨタテクニカルディベロップメントは応募書類の確認業務と面接議事録作成の効率化を目的としてAI導入の検討を始めた。特に、年間約800件に及ぶ応募書類の確認業務を優先課題とし、書類選考の効率化に取り組んだ。
製品選定では4〜5社のサービスを比較し、受託開発とパッケージ製品の双方を検討した結果、多様な職種に対応しやすく、導入・運用のしやすさを評価して「JAPAN AI HR」を採用した。
採用の決め手となったのは、職種ごとに評価項目の重み付けを設定できる機能だった。導入前には「Microsoft Copilot」を使って要件と履歴書の照合も試したが、評価項目ごとの優先順位を反映しにくいことが課題だった。一方、JAPAN AI HRは標準機能で重み付けに対応しており、複数職種へ柔軟に展開できる点に加え、機能とコストのバランスも評価された。
導入に際しては、職種ごとの評価基準をシステムへ登録し、各評価項目に重み付けを設定。その過程で現場担当者との打ち合わせを重ねたことで、採用時に重視するポイントを明確化し、現場と人事の認識を共有することができた。
運用開始後は、採用管理システムから履歴書や職務経歴書を取り込み、AIが要件との適合度を一次評価した。担当者は総合評価だけでなく各評価項目の内容も確認した上で、最終的に判断している。
また、面接業務では文字起こしデータを基に、AIが面接内容の要約や評価内容、懸念点を自動で整理・記録するほか、経歴確認機能も活用している。現在は一次面接を通過した全ての候補者を対象に運用している。
AIによる一次評価の導入により、年間約800件に及ぶ応募書類の確認業務を効率化した。従来は要件定義書と応募書類を1件ずつ照合していたが、AIの評価結果を基に確認を進めることで、作業負担を大幅に削減できた。
さらに、AIの評価結果を現場担当者と共有することで、共通の評価指標に基づいた選考が可能となり、判断理由の説明や過去との判断基準の違いも整理しやすくなった。その結果、採用基準の標準化と人事・現場間の認識共有が進んだという。
面接業務においても、議事録作成の負担が軽減されたことで、人事担当者は応募者との対話により集中できるようになった。担当者は、AIの活用によって採用判断への不安が軽減されただけでなく、業務効率の向上や現場との認識共有にもつながったと評価する。
今後は、現在2〜3職種で運用している評価基準を約30職種まで拡大する予定だ。職種ごとの評価基準をさらに整備することで、現場による確認工数の削減と採用スピード、判断精度のさらなる向上を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
