広島県府中市のAI-OCR実証で成果 クセのある手書き文字も読み取り、データ化を加速
広島県府中市は、生成AI型AI-OCR「GenOCR」を活用した行政DX実証を実施している。手書き申請書や図面の読み取りを通じて、紙資料のデータ化を進め、庁内の知識基盤への発展や個人情報を扱う業務への拡大、全国自治体への展開を目指す。今回、実証における成果が報告された。
広島県府中市は、行政業務の効率化・ナレッジ化の実証として、ジンベイが提供する生成AI型AI-OCR「GenOCR」を活用している。ジンベイは2026年7月9日、同ツールが庁内の複数業務で活用され、実証を通じて成果と知見が得られたと発表した。
広島県府中市、20社提案からGenOCRを選定し庁内実証へ
実証は、広島県主催の「The Meet 広島オープンアクセラレーター 2025」で、府中市課題解決枠に採択されたことを受けて実施された。同プログラムは、自治体の行政課題と企業の技術提案を結び付け、実証を支援する取り組みだ。府中市は2025年、約20社の提案からGenOCRを選定し、2026年から庁内業務で検証を始めた。
背景には、人口減少や少子高齢化に直面する自治体の共通課題がある。行政サービスの質を維持しつつ、業務を効率化し、持続可能な自治体運営を実現する必要が高まる一方、市役所業務では紙の申請をなくすことが難しい。誰も取り残さない行政サービスを保つ観点から、紙の手続きとデジタル処理をどう両立させるかが問われてきた。
検証においては、住民の手書き申請書の読み取りで高い精度を発揮した。市役所で頻度が高い手書き書類を対象に、達筆な文字や独特のクセがある文字も読み取れた。選択肢の「はい・いいえ」に丸を付ける項目でも、丸の位置がずれたり、枠からはみ出しても正しく判別可能だったという。
活用範囲は手書き申請書にとどまらない。建築・土木系の図面や、マンホール位置など細かな情報を含む資料、既存システムが出力した数値帳票の読み取りにも使われた。入力ミスが許されない業務において、職員が確認にかける負担の軽減につながった。
操作面においては、複雑な範囲指定やコード記述を必要とせず、普段使う日本語で指示できる点が評価された。ITに詳しくない職員でも迷わず使える点が、現場での受け入れにつながったという。
実証を通じ、GenOCRが担う領域と別ツールに任せる領域の分担も明確になった。GenOCRで正確に読み取り、その後の複雑な計算や処理は別ツールと連携させる形が有効と分かった。現場の実務に即した自動化の形が見えたことも成果の一つとなる。
府中市では総務部DX推進課が中心となり、制約の少ない業務領域から活用実績を積み上げてきた。導入時には、ジンベイの担当者が職員を対象としたオンライン説明会に登壇した。事前アンケートでは「難しそうで使いこなせるか不安」といった声はほとんどなく、「こうした業務で使ってみたい」といった前向きな意見が多数を占めた。
府中市は、トップダウンで押し付ける形ではなく、現場職員が主体的に使い方を広げる手法を採る。これによって、同市が目指す「DXの文化」の組織的な定着にもつながるとしている。
今後は、庁内に保管された大量の紙情報をデータ化・構造化し、過去の類似事例を速やかに検索し、活用できるナレッジ基盤への発展を目指す。個人情報を扱う業務への拡大も視野に入れ、庁内の閉域環境やガバメントクラウドでの処理を含め、府中市とジンベイが協議を続ける。ジンベイは、府中市との実証で得た知見を行政文書活用のモデルケースとして整理し、広島県内や全国の自治体への展開を図る。
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