Claude、NotebookLM、Genspark……238社が選んだ「現場が支持する」AIサービス:IT製品・サービスの認知、活用状況(2026年)/後編
IT製品・サービスの選定から導入まで、企業はどのような視点で判断しているのか。238件の読者アンケートの回答から、製品選びの基準や導入時の課題、注目を集めるサービスの傾向を探る。
前編に引き続き、「IT製品・サービスの認知度調査」(2026年6月3日〜29日、回答件数:238件)の回答結果を取り上げる。
後編となる本稿では、企業がIT製品・サービスを選定する際に重視するポイントや、導入時に直面する課題、情報収集の方法について分析した。調査から見えてきたのは、生成AIをはじめとした新たなサービスへの関心が高まる中、企業の評価軸は「最新技術かどうか」から「自社の業務で成果につながるか」へと変化していることだ。
製品選定、中小は「現場で無理なく」、大企業は「組織で安全に」
IT製品・サービスの選定では、コストや機能、使いやすさなど、さまざまな要素を総合的に判断する必要がある。一方で、企業規模や導入目的によって重視するポイントは異なる。
そこでまず、IT製品・サービスの選定時に重視するポイントについて読者企業に尋ねたところ「導入コスト」(53.4%)、「社内で定着・活用しやすいこと」(50.8%)、「他ツールとの連携性」(41.2%)という並びとなった(図1)。
企業規模別の結果を見ると、重視する項目そのものが大きく異なるというよりも、選定時の優先順位が変化していることが分かる。従業員数が少ない企業では、コストや使いやすさ、定着のしやすさといった「現場で無理なく活用できるか」が重視される一方、従業員数が増えるにつれて、セキュリティ機能やベンダーの信頼性、会社の方針といった「組織全体で安全かつ継続的に運用できるか」が重要な評価軸となる傾向が見られた。企業規模の拡大に伴い、製品単体の評価から、組織全体での運用を前提とした評価へと選定基準がシフトしている様子が見えた。
238人に聞いた、現場がホンネで選んだAIサービス
次に、現在、読者企業が注目しているIT製品・サービスについて尋ねた結果をまとめた。
生成AIサービスへの関心が高いことは予想通りの結果だが、自由回答を見ると、想定以上に特定のAIツールへ評価が集まった。2026年の「Microsoft Build」でもAIエージェントをはじめとする最新技術が相次いで発表されたが、重要なのは技術の新しさや生成AIの性能だけではなく、自社の業務課題に対してどのサービスが適合するかという点だ。
最も回答が集中したのが、「Claude」シリーズだ。「『Claude Code』の機能がコードアシスタントとして優れているので、今後の機能向上に注目している」「基本的に非エンジニアが集まる会社のため、それでもある程度の開発ができるのかが気になり、Claude CodeやCursor」「Claude。PCを動かせるAIツールとして期待したい」といった声が寄せられ、長文処理能力やコード生成能力を業務に生かしたいという期待が見られた。
また、「AIエージェントが人員削減につながるかどうかに注目している」「Athena Workflowによる複数のAIツールを連動させた業務自動化についてPoCを開始しており、効果が高ければ導入を見込んでいる」といった回答もあり、自律的にタスクを遂行するAIエージェントへの関心も高まりつつあることが分かった。
その他、「『NotebookLM』で社内Q&A集やWikiを作成したい」「『Microsoft Copilot』のみ利用しているが、プレゼン資料の作成ではNotebookLMやClaudeも比較している」「Copilotや『Gemini』(Google Workspace)、『Genspark』の導入を比較検討中」といった回答も寄せられた。
自由回答全体を通して見ると、「生成AIを導入するか」ではなく、「どのAIを、どの業務で活用するか」という比較・選定のフェーズへ関心が移りつつあることが読める。特定のサービスに一本化するのではなく、開発支援や資料作成、ナレッジ管理、業務自動化など、用途ごとに複数のAIを使い分けることを前提とした検討も目立った。
一方で、前編でも触れたように、急速な技術革新やサービスの多様化、利用コスト、セキュリティやガバナンスへの対応など、導入・運用に伴う課題を挙げる声も少なくない。生成AI活用は「導入の是非」を議論する段階から、「自社に最適な組み合わせをどう見極めるか」が問われる段階へ移行しつつあると言えそうだ。
企業規模でここまで変わる「IT導入のリアルな懸念」
続いて、新規でIT製品・サービスを導入する際に「障壁となること」について尋ねた。全体では、「現場に定着しない・使われない懸念」(37.0%)が最も多く、次いで「導入・運用できる人材がいない」(34.0%)、「予算が確保できない」(33.6%)という並びになった(図2)。
企業規模別に見ると、中小企業ほど「予算が確保できない」「導入・運用できる人材がいない」といった、導入前の体制に関わる課題を挙げる割合が高い。加えて「現場に定着しない・使われない懸念」といった導入後の活用に関わる課題も上位に挙がった。一方、中堅〜大企業では、「既存システムからの移行が大変」「移行コストが高い」「ベンダーロックイン(乗り換え困難)が不安」といった、既存環境との調整に関する懸念が目立つ。
この結果から、IT導入における課題は、企業規模によって単純に多い、少ないで分かれるのではなく、成長段階に応じて異なることが分かる。小規模企業では、限られたリソースの中で導入した製品をいかに業務へ定着させるかが焦点となる一方、大企業では、既存システムや業務プロセスを抱えた状態で、いかに変化を進めるかが課題となる。
つまり、IT導入の成否を左右するのは製品そのものの性能だけではなく、自社の組織や環境に合わせて導入後の活用まで設計できるかどうかだ。企業規模が大きくなるほど、個別の業務改善ではなく、既存資産を含めた全社的な変革をどう進めるかが重要な論点になるだろう。
他社の「情報収集ルート」と情報の見極め方
最後に、IT製品・サービスの情報収集について尋ねたところ、「Webメディア(IT系ニュースサイト)」(83.6%)が最も多く、次いで「公式サイト・ベンダー資料」(50.4%)、「展示会・イベント」(40.3%)が続いた(図2)。
多くの企業がまずWebメディアを情報収集の入口として活用し、その後、公式資料やイベントを通じて具体的な製品理解を深めるという流れが見られた。単一の情報源だけで判断するのではなく、第三者の評価とベンダー発信の情報を組み合わせながら、導入候補を絞り込んでいることが分かる。
企業規模別に見ると、中小企業では「比較サイト・レビューサイト」の利用割合が高い一方、中堅・大企業では「社内の情報共有」を挙げる割合が高い傾向にある。この違いは、情報収集の方法だけでなく、意思決定のプロセスの違いを示していると言える。中小企業では限られたリソースの中で効率的に比較検討するため外部情報を活用し、大企業では複数部門で検討するため、収集した情報を組織内で共有しながら判断する傾向が見られる。
IT製品・サービスの選定では、単に情報を集めるだけでなく、自社にとって信頼できる情報をどう見極め、組織内の意思決定につなげるかが重要になっているようだ。
IT製品・サービスの選定では、機能や価格だけでなく、自社の課題や運用体制に適した価値を見極めることが、これまで以上に重要になっている。変化の激しいIT環境の中で、企業には「導入すること」ではなく「成果につなげること」を前提とした判断が求められている。
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