クラウドの元祖? 20年前に消えたはずの「ASP」 調べてみたら実は……
死語となったIT用語の魂が集う「IT死語管理事務所」。本日届くはずなのは「ASP」だ。ところが、待てど暮らせどその姿を見せない。すでに死語になったはずのASPは、いったいどこへ消えたのか。
ここは、いつしか誰からも顧みられなくなったIT用語の魂がたどり着く「IT死語管理事務所」。ITの長い歴史の中で、消えゆく運命だった用語たちが「管理台帳」へまとめられていく。さて、本日到着する魂は……。
ケースNo.001「ASP」
死神管理人: 今日は「ASP」の魂が送られてくる日だが……?
アンデッド管理人: まだ到着していないようだね。
死神管理人: なんだと? もうだいぶ前に死語となっているはずだが?
アンデッド管理人: そうなんだけど……なぜか来ていないのだよ。道にでも迷ったのかな?
死神管理人: 死語の魂が? では、消滅した記録があるか調べてみよう。「IT用語アカシックレコード」にアクセスするよ。
「IT用語アカシックレコード」とは、コンピュータの始祖・ENIACの誕生から現在、そして未来に至るまで、IT用語についてさまざまな事象が記録されているデータバンクなのだ!(民明書房「IT用語の爆誕と存亡」より)
ASPは本当に死んだのか
ASP(Application Service Provider)という言葉を日常的に耳にする機会は、今ではほとんどなくなった。IT死語管理事務所においてもASPの死亡届は既に提出済み。だが、調査を進めると妙なことが分かった。
ASPという名前こそ姿を消したものの、企業ITでは今も生き続けているらしい。そもそもASPとは何だったのか……。
//アカシックレコード解説【ASP】
ASPとは、「Application Service Provider」の略で、インターネットを介してアプリケーションを提供する事業者、あるいはその提供形態を指す。1990年代末から2000年代前半にかけて、よく使われた言葉だ。当時は、企業がソフトウェアを購入し、自社のサーバやPCにインストールして利用するのが当たり前のことだった。そこに登場したのが「ソフトを買わずにインターネット経由で利用しませんか?」というサービスであり、これが「ASP」だ。会計ソフトや顧客管理ソフト、グループウェアなどをWebブラウザ経由で利用できるということで登場時から注目を集めた。
しかし、2000年前後はインターネット回線がまだまだ貧弱な時代。ADSLが普及を始めたばかりで、光回線はほぼ普及していない。ダイヤルアップやISDNといった低速回線ではデータ転送速度が遅く、快適な利用が難しかった。また、当時のWebブラウザもまだ未成熟で、安定してサービスを利用することも困難だった。さらに言うなら、ASPサービスの品質にもばらつきがあり、サービスごとにデータ形式や仕様が異なり、企業の事業に必要なカスタマイズが難しく、既存システムとの連携もハードルが高かった。セキュリティに対する懸念もあり、企業によってはASPサービスにデータを預けることを不安視するケースもあった。
こういった状況で、ASPという考え方は認知されたものの、その用語が使われる期間はそれほど長くなかった。
2000年代に入ると、ブロードバンド回線が普及し、Webを通じてサービスを利用する環境も整い始めた。その頃になると、ソフトウェアをインターネット経由で利用するサービスは、「SaaS」(Software as a Service)という新たな概念で語られるようになった。
ASPという言葉は徐々に使われなくなり、代わってSaaSが定着することとなる。つまりASPの仕組みや考え方が消滅したわけではない。現在のクラウド時代により適したSaaSという概念に受け継がれ、今も生き続けているのだ。
//--------------------解説終わり
アンデッド管理人: つまり……ASPはSaaSに転生したということか?
死神管理人: そういうことになりそうだ。名前は消えても、その考え方はITの本流に残っている。
アンデッド管理人: では今回は「死亡届」ではなく、「転生届」を作成すべきだな。
死神管理人: ああ、頼む。
アンデッド管理人: 管理台帳はどうする?
死神管理人: 「SaaSへの転生」にしておこうか。これで本日の業務は完了だ。
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