ジュラシック・パークに映る“あのPC”、実はとんでもないマシンだった:889th Lap
ジュラシック・パークと聞いて思い浮かぶのは、やはり恐竜だろう。だが、PCファンが注目すべきは別の場面にある。博士たちの机やコントロールルームに並ぶコンピュータは、実は単なる小道具ではなかった。
コンピュータ表現のリアリティーで高く評価されている映画の一つに、1993年公開の『ジュラシック・パーク』がある。世界興行収入は9億ドルを超え、その後も続編が制作され、シリーズは全7作品に及ぶ人気作となった。リアルな3DCGで描かれた恐竜が印象的だ。
だが、この作品の見どころは恐竜だけではない。コントロールルームや博士たちのデスクに映るコンピュータにも、映画の小道具とは思えないほどのこだわりが詰め込まれていた。公開から30年以上が過ぎた今、あるソフトウェア開発者が劇中に登場するコンピュータやソフトウェアを片っ端から調べ上げ、意外な事実を次々と見つけ出した。これを知ると、もう一度ジュラシック・パークを見直したくなるかもしれない。
ソフトウェア開発者のファビアン・サングラール氏は2026年7月13日、自身のブログ「Fabien Sanglard's Website」で「Jurassic Park computers in excruciating detail」(ジュラシック・パークのコンピュータを詳細に解説)を公開し、映画に登場するコンピュータやソフトウェアを1台ずつ特定した。恐竜や俳優ではなく、背景に映る機器に注目して作品を見直したという。記事には劇中の画像も掲載されており、実際の機器と照らし合わせながら楽しめる。
劇中で最初に登場するコンピュータは、古生物学者アラン・グラント博士とエリー・サトラー博士がトレーラー内で使用する「Apple PowerBook 100」だ。1991年発売のこのノート型Macは、16MHzのMotorola 68HC000と2〜8MBのメモリ、9インチのモノクロ液晶ディスプレイ(640×400ドット)を搭載している。当時としては小型・軽量で人気を集めたモデルだった。
恐竜たちが暮らすイスラ・ヌブラル島のコントロールルームには、さらに豪華な機器が並ぶ。書籍『The Making of Jurassic Park』によると、セットにはSilicon Graphics(SGI)から約87万5000ドル分、Appleから約35万ドル分、その他、約50万ドル分のハードウェアやソフトウェアが提供されたという。
代表的なのが、チーフエンジニアのレイ・アーノルドの机に置かれた「SGI R4000 Indigo」と、プログラマーのデニス・ネドリーの机の横にある赤い筐体「SGI IRIS Crimson」だ。どちらも1992年発売の高性能ワークステーションで、MIPS R4000系プロセッサと優れた3Dグラフィックス性能を備え、当時最先端のCG制作環境を支えていた。
ネドリーの机には、このほか「Macintosh Quadra 700」が2台置かれている。Motorola 68040(25MHz)と4MBのRAMを搭載した1991年発売のMacで、省スペース設計も特徴だった。劇中にはビデオ通話のような場面もあるが、実際はSystem 7の「QuickTime Player」であらかじめ録画した映像を再生していた。また、携帯情報端末(PDA)の「Motorola Envoy」も確認できる。
外付けストレージとして使われていたのは「PLI Mini Array」。アーノルドの机には2台、ネドリーの机には5台並んでおり、1GBモデルが1台3598ドルという高価な製品だった。当時としては非常にぜいたくなストレージ環境だったことが分かる。
劇中でネドリーが仕掛ける「マジックワード」のアニメーションは「Adobe After Effects」で制作され、画面に表示される「Nedryland」のソースコードは「Macintosh Programmer's Workshop」で書かれたPascal(プログラミング言語)とみられる。
コントロールルーム奥で赤いLEDを点滅させる大型機器は、Thinking Machines Corporationのスーパーコンピュータ「Connection Machine CM-5」をモデルにしたものだ。CM-5は1991年に登場した大規模並列計算システムで、劇中でもネドリーが「8台のConnection Machineをネットワーク接続し、200万行ものコードをデバッグした」と語る場面があり、作品設定にも組み込まれている。ただし、実際の撮影では本体ではなく、LED付きの前面パネルのみが使用されたという。
そして最も有名なのが、少女レックスが「UNIXだ! これなら知ってる!」と言って操作する3Dのコンピュータ画面だ。一見すると映画のために作られた架空のインタフェースに見えるが、実際には「File System Navigator」(fsn)という実在のソフトウェアだった。
fsnはSGIのUNIX系OS「IRIX」向けに開発された実験的なファイル管理ソフトで、ディレクトリやファイルを3D空間に表示し、立体的に移動しながら操作する仕組みを採用していた。正式な製品にはならなかったものの、「UNIX風の演出」ではなく、本物のUNIXソフトウェアが使われていた。
サングラール氏はこの他にも、ディスプレイやキーボード、書棚に並ぶ技術書まで細かく分析している。その結果、劇中に登場する機器の多くが1990年代前半の実在する最先端製品だったことが分かった。こうした本物の機材を惜しみなく使用したことが、映画のリアリティーを支えていたのだろう。
ジュラシック・パークは、革新的なCGで映画史を変えた作品として知られている。だが、コンピュータという視点で見直してみると、当時の最先端技術をリアルに映し出した「コンピュータ映画」としても新たな魅力を発見できる。動画配信サービスやテレビ放送で作品を見る機会があれば、恐竜だけでなく、背景に映るコンピュータにも注目してみてはいかがだろうか。
上司X: ジュラシック・パークに登場するコンピュータを詳しく調べたら、当時の本物の高性能機器やソフトが大量に使われていた、という話だよ。
ブラックピット: あの女の子が「UNIXだ!」という場面も本物なんですね。いかにも映画用に作った画面だと思っていましたよ。
上司X: そうなんだよ。有名な話だったようだが、俺は知らなかった。
ブラックピット: いやあ、まったくですよ。当然、全ての画面を俳優がその場でリアルタイムに動かしていたわけではないでしょうけど。
上司X: そりゃそうだろう。他のシーンでも画面が映り込むところは俳優ではなくスタッフが別室で操作したり、事前に作った映像を映したりしていたそうだよ。全部が全部リアルタイムで動いていたわけじゃない。
ブラックピット: えっ、本物のコンピュータを大量に借りたのにですか?
上司X: まあ、撮影現場では俳優の演技に合わせて画面を確実に出す必要もあるだろうからな。動作音も問題になるようだ。記事ではSGI Crimsonの動作音が大きすぎたって紹介されていたよ(笑)。
ブラックピット: 30年前の高性能ワークステーションは騒音レベルも高かったのですね。でも、ここまで本物を使うことにこだわる姿勢は、潤沢な予算があったからこそ実現できたのでは?
上司X: そうかもしれない。でも、やっぱり作品としてのクオリティーを追求するからこそ予算をかけるのだと思うけどね。30年越しにジュラシック・パークのこのエピソードを知った後では、これからテキトーなコンピュータ演出をしている映画やドラマを見たら、製作サイドの本気度を疑ってしまうかもしれないな。
ブラックピット(本名非公開)
年齢:36歳(独身)
所属:某企業SE(入社6年目)
昔レーサーに憧れ、夢見ていたが断念した経歴を持つ(中学生の時にゲームセンターのレーシングゲームで全国1位を取り、なんとなく自分ならイケる気がしてしまった)。愛車は黒のスカイライン。憧れはGTR。車とF1観戦が趣味。笑いはもっぱらシュールなネタが好き。
上司X(本名なぜか非公開)
年齢:46歳
所属:某企業システム部長(かなりのITベテラン)
中学生のときに秋葉原のBit-INN(ビットイン)で見たTK-80に魅せられITの世界に入る。以来ITひと筋。もともと車が趣味だったが、ブラックピットの影響で、つい最近F1にはまる。愛車はGTR(でも中古らしい)。人懐っこく、面倒見が良い性格。
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