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千代田区、Copilot全庁導入で月2000時間削減 10カ月でAIを根付かせた定着の仕掛け

千代田区では「Microsoft 365 Copilot」の実証実験を重ね、2025年10月に全庁導入を果たし、業務時間を約2000時間削減したという。同区が全庁導入後にどのように職員のCopilot活用を推進させたのか。その方法をキーマンズネットが独自取材した。

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 千代田区は、質の高い多様な行政サービスを提供するために、職員が「考える時間」を確保することを重視してきた。一方で、各種会議における議事録作成などは全て人手で行われており、日常的かつ定型的な事務業務の省力化が課題だった。

 こうした背景から、千代田区は2023年ごろに「ChatGPT」の利用を開始した。しかし、職員は日常業務の大半で、2022年3月に導入した「Microsoft 365」の各種アプリケーションを利用していた。hatGPTの活用時には、必要な情報や生成された回答をその都度コピー&ペーストする手間が発生していた。

 そこで千代田区が目をつけたのが、「Microsoft 365 Copilot」(以下、Copilot)だ。千代田区の岡本翼氏(政策経営部 デジタル政策課 デジタル政策係 係長)が、導入を決定した要因を語った。

千代田区が職員に「今後も使い続けたい」と言わせた方法

 岡本氏によると、選定の背景には既存環境との親和性だけではなく、強固なセキュリティへの信頼があったという。

 「Copilotは、区の専用テナント内でデータが管理される契約となっており、入力した情報が外部に流出したり、AIモデルの学習に利用されたりしないことを確認した上で導入を決定しました」(岡本氏)

 技術的な安全性を確認した千代田区は、2024年8月から約150人の職員が参加する実証実験を開始した。

 まず、Copilot活用を支援する組織横断型のプロジェクトチームを発足し、「Microsoft Teams」(以下、Teams)で情報共有をしながら活用促進施策を進めた。2024年8月には、Copilot活用の基礎を学ぶための説明会を開催した他、Copilot活用に関する疑問を解決したり、各自の活用例を共有したりする「なんでも相談会」をスタートさせた。

 これらの施策を実施した実証実験で、月平均300時間の業務削減効果に加え、利用者の心理的安全性の向上も確認できた。さらに、Copilotのアクティブユーザー率は97%、「今後も使い続けたい」と回答したユーザーの割合は91%に達し、プロジェクトチームは「これなら確実に業務を効率化できる」と確信したという。

 実証実験で高い効果を確認した千代田区が次に向き合ったのは、「一部の職員が使う便利なツール」から「組織全体の業務基盤」へどう広げるかという課題だった。そこで同区は、2025年4月にCopilotのライセンス数を300へ拡充し、さらに検証を進めた。そして、2025年10月には900ライセンスを全庁規模で展開。ほぼ全ての事務職員が利用できる環境を整えた。

 こうした成果の裏には、庁内でCopilotを定着させるための地道な試行錯誤があった。

全庁導入で組織の基盤に Copilotを日常に組み込む活用法

 千代田区でのCopilot活用が進む中、特に効果を発揮したのが、文書作成や情報整理といった日常的な事務業務だ。岡本氏は、具体的な活用例として以下の3つを紹介した。

1. 会議や打ち合わせ内容を基にした資料作成

 オンライン会議や打ち合わせの内容を踏まえた資料作成を効率的に進められるようになった。

 以前は、決定事項を基にして「次にどのような資料を作るか」といったことをゼロから考える必要があったという。現在ではまず、Teamsで音声を録音して要約や決定事項を抽出し、Copilotにチャットで相談しながら資料の方向性を決めている。

 方向性が定まった後は、「Microsoft Word」や「Microsoft PowerPoint」などのアプリケーションを立ち上げ、Copilotにドラフトを作成させる。職員はドラフトを編集する作業からスタートできるため、資料作成にかかる時間が大幅に短縮された。

2. 国や東京都からの調査依頼への対応

 国や東京都から頻繁に届く調査依頼の資料は長文かつ複雑で、「まず何をすべきか」といったタスクの整理が職員の負担になっていた。そこで千代田区では、届いた資料をまずCopilotに要約させ、進め方や提出期限といった必要事項を把握することにした。さらにチャットで、庁内向け依頼文の作成までをシームレスに実行している。Copilotの活用によって、調査内容の把握から他部署への業務展開までがスムーズになり、作業時間の大幅な短縮に成功した。

3. リサーチ業務

 東京23区に属する千代田区では、23区の他の自治体の取り組み状況を調べるリサーチ業務が日常的に発生する。従来は各自治体のサイトを1つずつ巡ってプレスリリースなどを探していたが、CopilotにWeb上の公開情報を横断的に検索・要約させることで、情報収集の効率が飛躍的に向上した。

 これらの他にも、各アプリケーションごとに日常的な業務に直結する実践的な活用が進んでいる。以下はその一例だ。

文章表現の精査(Word/Outlook):

 文書や対外的なメール等の作成時に、相手に対してふさわしい表現かどうかをCopilotに聞いて校正・レビューさせる。

アンケート分析(Forms/Excel):

 「Microsoft Forms」などで集計し、Microsoft Excelに出力されたアンケートデータに対し、最適な分析方法や効果的な表示方法などをCopilotに相談しながら結果をまとめる。

資料作成の均一化(PowerPoint):

 手作業では位置合わせに手間がかかる図形やテキストボックスなどのオブジェクト配置も、Copilotに指示することで一括して整えられる。

専門用語の解説(Teams):

 Teamsによるオンライン会議中、Copilotを起動し、会議のポイントや専門的な用語の意味をその場で質問して確認する。

Copilot全庁導入で約2000時間の業務時間削減

 Copilotの全庁導入によって、千代田区は2026年3月の時点で月間約2000時間の業務時間削減に成功した。

 大幅な業務時間の削減に加え、業務の質そのものや職員のマインドに与えた影響も大きい。岡本氏は定性的な効果として、「業務の質の向上」と「心理的安全性の向上」の2点を挙げる。

 「作成した文書をCopilotにレビューさせることで客観的な視点が加わり、独りよがりではない、質の高い成果物を生み出す相乗効果も生まれています。また、多忙な先輩への質問に気後れしがちな若手職員にとって、時間を気にせずに気兼ねなく質問できるCopilotは『頼れる相談相手』であり、心理的な安心感につながっているようです。Copilotを使い込んでいる職員からは、『もうこれなしでは仕事にならない』といった声が上がっています」(岡本氏)

 月間約2000時間という大幅な業務時間の削減に成功した千代田区だが、Copilotを頻繁に活用する職員がいる一方で、活用にそれほど積極的でない職員もいる。デジタル推進係はこうした現状を踏まえて、活用層の底上げや最新機能のキャッチアップなどを目的とし、2025年から2カ月に1回のペースで「Copilot Lab」を開催している。当初は参加職員が10人程度にとどまることもあったが、2026年の初回のCopilot Labには、約100人の職員が自主的に参加した。

 「背景には、Copilotに対する期待値の高さがあります。かつては各アプリケーション内でアドバイスするだけだった仕様が、現在は指示すればファイルを直接編集する仕様へと進化し、実用性が飛躍的に向上しました。対応できる業務の幅が広がり続けているため、Copilotによる業務効率化に期待する職員が増えているようです」(岡本氏)

 Copilot Labでは今後、Copilotに読み込ませるデータの作成方法なども紹介される予定だ。研修動画などのコンテンツ展開も予定されており、こうした施策を通じて、まだ十分に機能を認知していない職員への丁寧なサポートを継続していくという。

 千代田区は今後、各部署の特定業務への専用エージェントの展開を予定している。

 具体的には、「Agent Builder」や「Copilot Studio」を活用し、各部署が保有する膨大な業務マニュアルや複雑な法令・要綱のデータを読み込ませた、庁内ルールや特定業務に対応した専用エージェントの構築を目指す。業務ナレッジを学習させた専用エージェントを構築すれば、異動してきたばかりの職員や経験の浅い職員であっても、エージェントに問いかけるだけで、ベテラン職員と同等の知識をもって窓口業務や特定事務に臨むことが可能になる。

 日常業務のインフラであるMicrosoft 365を基盤に据え、Copilotによって着実な時間削減と業務の質の向上、職員の心理的安心感をもたらした千代田区。AIと人間が役割を分担し、行政のかじ取りを高度化させていく同区の「次の一手」である専用エージェント展開の動向に今後も注目していきたい。

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