面接で「落とされている」のは企業側? ITエンジニアが選考を辞退する本当の理由
ITエンジニア採用で相次ぐ選考辞退。「他社に決まった」という辞退理由は、実は建前かもしれない。調査では7割超が本当の理由を隠していることが分かった。面接で企業側が「失格判定」されている理由とは。
採用活動で、見えにくいのが「選考辞退の本当の理由」だ。企業からすれば、「他社に決めました」「条件面を考慮した結果、今回は辞退します」といった連絡を受ければ、それ以上踏み込むのは難しい。だが、候補者が企業に伝えた辞退理由と、実際に辞退を決めた理由は、必ずしも一致しない。
ITエンジニアの場合、その傾向は特に顕著だ。キッカケクリエイションが、過去の転職活動で二次面接以降に選考を辞退したITエンジニア221人を対象に実施した調査では、辞退の本当の決め手を企業に正直に伝えなかった人が71.2%に上ったという。つまり、企業が「なぜ辞退されたのか」を把握できないまま、同じ採用課題を繰り返している可能性があるということだ。
なぜ、求職者は「本当の辞退理由」を企業に伝えないのか
実際の辞退理由を見ると、「年収・待遇が希望と合わなかった」が24.0%で最も多かった。転職において待遇が重要であることは、当然とも言える。だが、2位以下を見ると事情が変わってくる。「他社からより魅力的なオファーを受けた」が14.0%、「AI開発やDX案件における自分の役割が想定と異なっていた」が11.3%。「面接官の発言や態度に違和感があった」「業務内容が求人票の記載と異なっていた」も、それぞれ9.5%を占めた。
ここから分かることは、エンジニアが企業を条件だけで判断しているわけではないということだ。どのような仕事を任されるのか。自分はどのポジションで何を期待されているのか。求人票に書かれている内容と、実際の現場は一致しているのか。そして、この会社で働いて大丈夫なのか。選考が進むほど、こうした「入社後のリアル」に対する候補者の目は厳しくなる。
では、なぜ企業は辞退の本当の理由を聞き出せないのか。
大きな理由の一つは、候補者自身が本音を伝えることを避けているからだ。
調査では、本当の決め手を伝えなかった理由として、「角が立ったり、気まずくなったりするのを避けたかった」が48.2%で最も多かった。「当たり障りのない理由の方が、円満に辞退できると思った」も35.5%に上る。
これは企業に対する不満がないという意味ではない。むしろ、不満があっても、それをわざわざ企業に伝えるメリットが候補者側にはないということだ。
「面接官の態度が気になった」「仕事内容が求人票と違った」と正直に伝えたところで、選考を辞退する候補者にとっては、その企業が改善されるかどうかを待つ必要はない。
より条件の良い会社や、より納得できる仕事が見つかれば、候補者はそちらへ進めばいい。その結果、企業側には「なぜ辞退されたのか」という重要な情報が残らない。
7割超が面接官に「違和感」を経験
もう一つが、面接そのものが候補者の企業評価を下げている可能性だ。
調査では、面接官の発言や態度に違和感を覚えた経験が「複数回ある」と答えた人が52.0%、「1回ある」が21.3%。合計73.3%が何らかの違和感を経験していた。具体的には、「威圧的・高圧的な態度を取られた」が25.3%で最多だった。
他にも、「質問への回答が曖昧で、組織として整理されていない印象を受けた」が18.5%、「長時間労働や休日対応を前提とした発言があった」が11.7%となった。企業側は候補者を「見極める側」と考えがちだが、候補者もまた、面接を通じて企業を見極めている。特にITエンジニアは、技術的な話ができるのか、現場の状況を理解しているのか、自分のキャリアを任せられる環境なのかといった点を、面接で判断している。
面接官の何気ない一言が、候補者にとっては「この会社では働きたくない」という判断材料になっている可能性がある。
候補者が知りたいのは「入社後の姿」
では、企業は何を改善すべきなのか。辞退した企業への改善要望で最も多かったのは、「業務内容や役割の具体的な説明」で38.5%だった。続いて、「求人票と実態のズレを事前に解消すること」が28.1%、「配属予定チームのメンバーや雰囲気の事前共有」が22.6%となった。
これらをまとめると、候補者が求めているのは、単なる求人情報の充実ではない。「入社したら、自分は誰と、何を、どのように進めることになるのか」。その具体像を、選考の段階で知りたいということだ。自由回答でも、求人票を実務担当者が確認した上で公開してほしい、企業に不利な情報も含めて正直に説明してほしい、就業規則など契約に関わる情報を事前に開示してほしい、といった声が寄せられた。さらに、入社後のキャリアプランを描ける情報や、現場担当者と直接話せる機会を求める声もあった。
「辞退を防ぐ」より「辞退される理由をなくす」
ITエンジニアの採用競争が激しくなる中、企業は選考辞退を単純に「他社に負けた結果」と捉えない方がいい。
年収や待遇はもちろん重要だ。だが、それと同じほど、求人情報と実態が一致しているか、仕事内容や役割が明確か、面接官が信頼できるか、配属後の姿をイメージできるかが問われている。そして、候補者はその不満を必ずしも企業に伝えてくれるわけではない。だからこそ、「なぜ辞退されたのか」を聞くことだけに頼るのではなく、そもそも候補者が辞退したくなるような情報の不足や認識のズレが、選考プロセスのどこで生まれているのかを見直す必要がある。
選考辞退を減らすために重要なのは、候補者を引き留めることではない。候補者が「ここで働く自分」を具体的にイメージできるだけの情報を、企業側が最初から開示することだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



