生体認証とは、身体的または行動的特徴を認識し、同一性を確認するセキュリティシステムのこと。パスワードなどに比べてなりすましが難しく、不正アクセスのリスクが低いのがメリットだ。他の認証方式と組み合わせて使われることもある。
以下はキーマンズネットで掲載している、生体認証の関連記事だ。サービスの導入、運用にぜひ役立ててほしい。
生体認証の手法はさまざまなものがあるが、ここでは「指紋認証」「顔認証」「虹彩認証」を挙げる。
指紋には人それぞれ特有のパターンがあり、これを利用した認証方法だ。指紋センサーに指を押し付けることで、あらかじめ登録された指紋データと照合し、ユーザーの身元を確認する。スマートフォンのロック解除や金融機関の認証など、さまざまな場面で利用されている。
顔認証はカメラで取得した顔の画像を分析し、特徴を判別することでユーザーの同一性を確認する認証方法だ。顔の形状、眼間距離、鼻の形状など、多数の特徴を用いて認証する。スマートフォンのロック解除や、空港の入国管理などに利用されている。
虹彩認証はユーザーの虹彩のパターンを認識して同一性を確認する認証方法だ。虹彩のパターンは人それぞれで固有のもので、非常に精度の高い認証が可能だ。カメラで眼球を撮影し、その画像から虹彩を認識する。非接触で認証するため衛生的に利用できる、帽子やマスクを着用していても認証できる、赤外線カメラを使用するため暗い場所でも認証できる、などのメリットがある。
上記の通り、生体認証にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴が異なる。ここでは企業のIT担当者が生体認証製品を選定する際のポイントをまとめた。
生体認証の種類によって、認証精度と利便性はトレードオフの関係にある。例えば、指紋認証は比較的精度が高く導入コストも低いが、指の状態によって認証エラーが起こりやすい。一方、虹彩認証は非常に高い精度を誇るが、専用の機器が必要で導入コストが高くなる。
企業の用途や予算に合わせて、最適なバランスを見極めることが重要だ。セキュリティを最優先するなら虹彩認証や静脈認証がおすすめだが、コストを抑えたい場合は指紋認証も検討に値するだろう。
生体情報は、一度漏洩(ろうえい)すると取り返しがつかない。特に顔認証のように、個人の外見に関する情報は慎重に扱う必要がある。生体認証を導入する際は、データの暗号化や厳重な保管体制の構築が不可欠だ。
また、従業員のプライバシーにも配慮しよう。生体情報の取得や利用目的を明確にし、適切な同意を得ることが求められる。専門家の意見を参考にしながら、セキュリティとプライバシーのバランスを取ることが肝要だ。
生体認証は便利な反面、運用面での課題もある。例えば、指紋認証は怪我や手荒れによって認証エラーが起きやすくなるし、顔認証はマスクの着用や経年変化で認証率が下がる可能性がある。
こうした事態に備え、代替の認証手段を用意したり、柔軟に再登録できる体制を整えたりしておく必要がある。生体認証を日常業務に組み込む際は、現場の声に耳を傾け、運用マニュアルを整備していくことが求められるだろう。
生体認証は多要素認証(MFA)ツールの一機能だったり、PCやスマートフォンなどのデバイスに元から備わっていたり、専用ツールがあったりと、その導入形式がさまざまだ。以下ではそれぞれの代表例を挙げる。
製品名 | ベンダー名 | 特徴 |
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Okta Workforce Identity Cloud | Okta Japan | Oktaが提供するIDaaS。「Okta Verify」という認証アプリを使用し、デバイスの生体認証を利用できる |
HPE IceWall MFA | 日本ヒューレット・パッカード | HPEが提供するMFAツール。認証の標準規格である「FIDO」に準拠し、さまざまなデバイスの生体認証機能と連携可能 |
Windows Hello | 日本マイクロソフト | 「Windows 10」と「Windows 11」で使用できる生体認証機能。指紋認証と顔認証に対応。PCへのサインインだけでなく、対応するアプリケーションやWebサイトへのログインにも利用できる |