グローバルソーシング、4つの成功条件:すご腕アナリスト市場予測(4/4 ページ)
日本でも広がりつつあるオフショア開発だが、本来の目的に達しないケースも。そんなグローバルソーシング成否の分かれ目とは?
【ポイント2】グローバルソーシング先の選択肢を見極める
グローバルソーシングを行う国の選び方にもコツがある。これまでのオフショア開発やBPOなどの実績により、国別に得意、不得意分野があることに注意が必要だ。
例えば、インドは国際的に普及しているパッケージアプリケーションのアドオン開発と運用に豊富な知見を持った技術者が多い。フィリピンはオープンソースソフトウェアに強く、また英語が公用語なので日本から海外に向けての製品やサービスの開発に必要な英語版アプリケーションやサービスを開発するのに好都合だ。マレーシアも同様によるサービス運用に強みがある。ミャンマーは注目度の割にはいまだにトライアル状態を出ていない。
中国の場合は独特で、日本のグローバルソーシング先の8割が中国だ。これには先方の日本語の理解力が大きな要因になっている。中国の業者は日本語ドキュメントを読みこなせ、日本流の仕事にもある程度対応してくれる。
また、場所によっては時差があまりなく、人の行き来がしやすい利点もある。古くから日本企業からの受託先になってきた企業は日本流のプロジェクトから教育や開発の作法などを学ぶ姿勢があり、高品質が期待できる面もある。
もっともそこを退社し再就職する人もひっぱりだこなので離職者も多く、せっかく自分たちで育て上げた人材があっさりと転職の憂き目にあうこともある。その点は日本企業にとって痛し痒しだ。
中国の対抗勢力にはベトナムが挙げられる。日本語への対応は難しいが、中国と技術と文化が似ており、また国として雇用創出のための対策として積極的に受託を推進しているので今後のよいパートナーになるかもしれない。
なお、各国の法律についてもある程度調査しておく必要があるだろう。グローバルソーシングではプラットフォームとしてクラウドサービスを利用することが増えている。しかし複数国にまたがるクラウドサービスの利用に関する課税や規制はグレーゾーンの場合が多い。
例えば、ベトナムで日本のSaaSを利用した場合、「サービス輸入」と見なされ10%の課税が行われたというケースがあった。リスクと考えられる場合には、別の国の業者を選ぶなどの選択をしなければならない。
また、米国パトリオット法のように、データを保管する国の法律によりデータの差し押さえや閲覧などが行われる可能性がゼロではないので、本番データは絶対に国内から出さないといった運用ポリシーを確立して、リスク管理をしっかりとしておきたい。
【ポイント3】管理スキルの未成熟を補う方法を検討する
現地スタッフのプロジェクト管理スキルの問題に関しては、ユーザーである委託元の企業が積極的にプロジェクトのレビューを行い、その結果をメンバーに表明してプロジェクトの進捗と品質を常に管理しながら、徐々にスキルを上げていく協力関係が大切だ。
これにはビデオ会議やWeb会議、あるいは進捗が時系列やタスク単位などで可視化して管理できるプロジェクト管理ツールも役立つだろう。プロジェクトのポータルを作成して、メンバー間の情報共有を図ることも有効な手段だ。特に人の入れ替わりが激しい海外企業では、何らかの形でプロジェクトの情報やQ&Aなどの情報を保存して、新しい担当者が前任者の仕事を効率よく引き継げる体制にしておくことが望ましい。
【ポイント4】5年先を見た腰を据えた取り組みを意識する
最後に、コストをどう下げるかと、グローバルソーシング比率をどう上げるかという課題は分けて考えるべきであることを指摘しておきたい。グローバルソーシングの主なメリットは先に上げた3点なので、そのメリットを早期に享受できるソーシングの方法を行うことは大事だが、同時にコスト削減を図ることは難しいはずだ。管理のオーバーヘッドがかかることを前提にして、5年くらいは先を見て、腰を据えて取り組むことが成功の秘訣(ひけつ)といえる。
また、いきなり基幹系システムの開発や、特殊なサービス開発を海外業者との間で行うのは失敗の元で、コスト超過や品質の問題を生みやすい。できれば、他社がグローバルソーシングしている業務(情報系アプリケーションやサービス、ヘルプデスクなど)と同じものを委託することで、品質を保ちながら徐々に自社の業務に慣れてもらい、数年後にはコスト削減可能になるよう、下地を作っていくことが薦められる。
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