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1枚で300GB超、Blu-rayの後継規格「Archivel Disc」とは?(1/3 ページ)

従来のレーザー読み書きヘッドの仕様のまま1枚当たり1TB記録を視野に入れる新規格「Archival Disc」。その規格概要を探る。

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 今回のテーマは、従来のレーザー読み書きヘッドの仕様をそのままに、1枚の12センチディスクで1TB記録をも視野に入れる新規格「Archival Disc(アーカイバルディスク)」だ。2014年3月、ソニーとパナソニックが共同で策定した業務用光ディスク規格にはどんな技術が使われているのか。

「Archival Disc」とは

 Archival Discは、ソニーとパナソニックが共同で策定するデータアーカイブ用大容量光ディスク規格で、2014年3月に公表された。現時点で、1枚当たりの記録容量300GBの仕様が策定され、第2世代で500GB、第3世代で1TBへの拡張も予定される。

 Blu-rayディスクの技術がベースで、従来使われてきたレーザーの波長や開口率を変えずに大容量化を達成することがポイントだ。

 例えば、「Optical Disc Archive(オプティカルディスクアーカイブ)」として既に商品化された12枚を装填(そうてん)可能な光ディスクカートリッジ(図2)を使えば、タワー型PCの5インチベイにもマウントできるサイズで300GB(両面記録による1ディスク当たりの記憶容量)×12枚=3.6TBの大容量ストレージを実現できる。1TBのArchival Discが実現すれば12TBがまかなえるわけだ。

Archival Disc規格のロゴ12枚格納光ディスクカートリッジ 図1 Archival Disc規格のロゴ、図2 12枚格納光ディスクカートリッジ(図2)(出典:ソニー)

なぜ「光ディスク」に新規格が必要なのか

 長期保管が必要なデータの記録媒体として主に用いられるのはHDD、磁気テープ、光ディスクの3種類だ。HDDは容量としては申し分なく、価格もかなり下がった。しかし、問題は寿命だ。ご存じの通り3〜4年が限界なので、長期保管には定期的に新しいディスクへのデータ移し替え作業が発生する。また、保管中も常時通電が必要なのでコストがかかってしまう。

 磁気テープは、昔からアーカイブに使われてきた。現在、1カートリッジ当たり最大2.5TB(LTO-6非圧縮の場合)に達し、容量当たりコストは他のどの記録メディアよりも安いのが特長だ。ただし、ランダムアクセスに時間がかかる点と現実的な寿命に問題がある。

 テープ寿命は、一部メーカーでは30年程度とするものの、テープ仕様の世代がほぼ2年で変わる状況が続き、2世代よりも前の世代のテープは最新ドライブで読めなくなるのが現実だ。テープベンダー自身が「10年経ったら新媒体にデータを移行」することを推奨する。また、保管環境により劣化が進むため、環境温度と湿度を指定された範囲に保つ必要があり、空調コストがかかる。

 寿命と保管コストの問題を解決するのが光ディスクだ。光ディスクの寿命は一説に100年といわれるが、ISO標準に基づいた加速エージング試験の結果から、ソニーでは従来の光ディスクで「50年以上」の寿命を検証した。

 また、容量当たりコストもHDDより安い。温度や湿度などの保管環境もマイナス10度〜55度、湿度3〜90%の環境でも短期間なら劣化しないため、空調コストもあまり問題にならない(長期間の保管には10〜30度、湿度30〜70%環境が推奨される)。例えば、光ディスク利用の動画撮影カメラは南極や砂漠地帯での実績を積んでおり、環境変化や塵埃(じんあい)に強いことが実証済みだ。

 ただし、光ディスクの弱点は媒体当たりの容量がHDDやテープに比べて見劣りすることだ。現時点でBlu-rayディスク(BDXL規格)の片面128GBが最大だ。この弱点を克服できれば、アーカイブ媒体として最適なものになるのではないかと、大容量光ディスクの新規格が期待されていた。

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