サーバ移行の第4の選択肢、IaaS最新事情徹底解説:IT導入完全ガイド(5/5 ページ)
Windows server 2003サポート終了を前に、移行の選択肢の1つとしても考えられるIaaS。20社の比較表一覧や事例から、IaaSの最新事情を分かりやすく解説する。
自社の必要にフィットする機能で選ぶ
IaaSの機能面ではAmazon EC2が豊富な機能を誇っていて、高速、巨大ストレージ、高速I/O、グローバルIPのインスタンスの自動再割当て、負荷分散、複数ロケーションのサーバ対象の負荷分散、オートスケール、GPUインスタンスなど、企業の基幹系処理にも適する機能がかなりそろっている。
他のIaaSも機能充実に努めていて、IaaSそのものというよりも、PaaS領域に近いミドルウェアの拡充や、同一業者のPaaSやSaaSへの連携、あるいは移行の面で便利な機能が続々投入されている。例えばコンテンツ配信のためのCDN(Contents Delivery Network)機能や、NFSプロトコルで使えるファイルストレージ機能、DNSサーバ機能などである。
会社からIaaSまでの回線に注意
通信品質を求める場合はインターネットでなくVPNを利用したい。安定した帯域が保証可能で優先制御などの機能も利用できる。これにはIaaS業者側での対応が必要だ。最初からVPNを選択肢として選べるメニューを備えたサービスでは、VPN接続前提で、先ほどのような環境作成作業が行える(図11)。
VPNを使う場合、特にIaaSと社内環境とのIP割り当てを区別せず、プライベートIPアドレスで集中管理できるところも利点の1つだ。サービスによってはVPNへの対応ができない場合、できても追加コストが大きくかかる場合もあるので、注意しておきたい。
盲点になりがちな注意点とは
IaaSはオンプレミス構築なら固定費になるところを変動費にでき、しかも一見して劇的なコストダウンに感じられるため魅力的に感じられるだろう。サーバについては仕様と利用時間を正確に割り出すことで予算見積もりができるが、意外に見落としがちなのが「データ転送料」だ。
これは転送の従量課金のことだ。CPUやストレージの単価を見て安いと思っても、いざ請求されてみると2〜3割のデータ転送量が乗せられてコスト効果のもくろみが崩れたという場合もあり得る。
また、業者側からユーザー側へのデータ転送に高いコストがかかることが多い。サービスを乗り換えようとするときに、ユーザー側、あるいは新しく契約したクラウド業者側へのデータ転送に膨大になり、断念するケースもありそうだ。
このような懸念が拭えない場合、あるいは業者へのロックインを嫌う場合には、データ転送で料金が発生しない契約ができる業者、あるいは従量制でなく月額固定制で契約できる業者を選ぶとよい。変動費がその分少なくできるので、事前見積もりが正確になり、コスト効果を見誤る可能性も少なくなる。
データ保護や災害対策に利する冗長化の仕組みを調べる
最後に、大事な業務データを破損することのないよう、サーバやストレージのバックアップの冗長化についても仕組みを調べておきたい。例えば、2014年、マイクロソフトが国内で初めてのデータセンタを東京(埼玉)と関西(大阪)に開設している。
この2リージョンの同時開設は、もちろん国内ユーザーのサービス利用レイテンシ改善が主目的ではあろうが、同時に地理的冗長化による災害対策も可能なデータ保護体制をつくるためでもあった。
これらのリージョンでユーザーがストレージに記録したデータは、直ちに別々のラックで2つのレプリカ(合計3重の冗長化)を作成した上、地理的に離れた別リージョンに常時コピーする体制が実現可能になっている。合計すれば6重の冗長化が図れ、万が一、一方のリージョンが災害で機能しなくてももう一方で業務継続が可能になる。
このような冗長化によるデータ保護の仕組みは、国内でも大手業者から比較的小規模の業者まで、それぞれの考え方で必ずとられている。契約前にどのような仕組みを採用しているのか、そのためのコストはどうなるかを調べておきたい。
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