クラウド、モバイル、IoTで見直されるBPM:すご腕アナリスト市場予測(1/3 ページ)
クラウドなど昨今のITプラットフォームの大転換により、あらためて価値が再認識されているBPM。そんな活性化するBPMの今に迫る。
アナリストプロフィール
草地 慎太郎(Shintaro Kusachi):IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリスト
国内アプリケーション開発およびミドルウェア市場の分析、市場予測、競合分析、ユーザー調査に従事。ベンダーでのプロダクトマーケティングおよび事業開発を中心にIT業界で10年以上の経験を有する。ベンダーでのワークステーション、UNIXサーバ、ストレージなどのプロダクトマーケティングを皮切りに通信事業者でのWAN事業の立ち上げに従事したのち、SIerでの仮想化ソフトウェアのプロダクトマーケティングを経験。IDC入社の直前は、セキュリティソフトウェアベンダーにおいてクラウド環境での事業開発を担当した。
BPM(Business Process Management)ソフトウェアはアプリケーションと業務プロセスを分離し、可視化することで業務目的に最適なプロセスの構築と継続的な改善を実現するソフトウェアである。
ビジネスプロセスをアプリケーションに組み込んだ場合、業務の変更や効率改善に伴いプロセスを変更しようとしてもアプリケーション自体を回収する必要が生じ、効率が悪い。一方、BPMソフトウェアを利用するとプロセスを可視化して監視し、プロセスあるいはプロセス連携の効率性や生産性を判断、問題プロセスや連携を組み替えることで継続的に業務の最適化を図ることができる。
かつてSOAの掛け声とともにブームを巻き起こした後、その反動もあって沈静化していたBPMだが、昨今のITプラットフォームの大転換により、あらためて価値が再認識されている。今回は、クラウド、モバイル、IoTというキーワードで活性化しているBPMの現状を確認してみよう。
SOAブームを経て、新しいプラットフォームでBPMが再び脚光を浴びる時代に
2000年代初めから半ばにビジネスプロセスの最適化がITの大きなテーマとしてクローズアップされた時代に注目を集めたのが「BPM」だ。
当初はEAI(Enterprise Application Integration)による業務システム連携の上位で各システムとその連携を管理する機能を果たしていたが、やがてソフトウェア機能を「サービス」としてくくり、その連携により企業システム全体を構築するSOA(Service Oriented Arachitecture)と呼ばれる方法論が台頭した。
そのシステムおよびネットワークへの実装基盤であるESB(Enterprise Service Bus)が登場すると、BPMはそれらを利用してより柔軟にビジネス変化に適応する業務改善を成し遂げる道具として、さらに重要な役割を担うようになった。ビジネスプロセスに従ったサービスを設計、記述するための標準言語であるBPEL(Business Process Execution Language、業務プロセス実行言語)が生まれたのもこのころだ。
しかし、BPM、EAI、SOA、ESBというキーワードを耳目にする機会は著しく減っている。その理由は、一時のブームが去ったというだけでなく、実は既に当たり前の概念や技術になっており、ことさらに話題にする必要がなくなってきたというのが真相だろう。
ところが最近になって、BPMに再び光が当たるようになってきた。その背景にあるのは、アプリケーション共通基盤がビジネス変化への柔軟な対応のための解答の1つになり得ることへの理解が進んだことと、プライベートクラウドやパブリッククラウドの利用拡大とともに新しい業務改善への取り組みが必要になっていること、さらにはモバイルコンピューティングの急速な広がりと、ソーシャル技術、IoTと総称されるGPSをはじめとする各種センサーなどからの情報活用ニーズの高まりにより、それらを組み合わせたプロセスオートメーションがビジネスを改善する可能性が明確になってきたことが挙げられよう。
BPM市場はグローバルで拡大中、主要プレイヤーは固定化
ではまず、BPMツールの現在の立ち位置を確認しておこう。世界市場を見ると、図1のように漸増傾向が続いており、これから5年間で10億ドル以上が上積みされ、2018年には40億ドルの市場に成長するとIDCでは予想している。
図1 世界でのBPMソフトウェア売上(2014年以降は予測)。Worldwide Business Process Management Software 2014-2018 Forecast(出典:IDC Japan)
BPM市場の主要なプレイヤーは、プロセス改善と自動化を果たす機能を豊富に備えたIBMとオラクルのBPMスイートだ。業務プロセスの可視化はもちろん、プロセス設計とプロセス運用監視機能を利用して、ボトルネックや非効率な部分を発見しては改善していく業務改善のサイクルが実現できる。
また、SAPは同社ERPに付随したBPM構築、運用に実績があり、メジャープレイヤーの一角を占めている。国内ではやや存在感が小さいが、欧米を中心にペガシステムズ、SoftwareAGもBPM分野の包括的なソリューションを提供し、上位の一角を占めている。加えてオープンテキスト社が2011年にBPMツールベンダーのGlobal 360とMetastormを買収してBPM関連製品を強化しており、グローバルでのベンダー集約の流れを作って存在感を示している。
一方、国内では富士通、日立などの大手ITベンダーが製品を提供しており、自社でのSI案件を中心にシェアを持っている。また、アプレッソなどのEAIやESBなどシステム統合の基盤ツールベンダーもBPMを実現するツールを提供している他、「ワークフローツール」と呼ばれるソフトウェアもBPM関連製品の1つとして考えられている。
図2にBPMツールに含まれる機能要素を図示する。これら要素の全てを上から下まですっかりそろえようとしているのが狭義のBPMツールだ。いわゆるワークフローツールは図の上部の「実行」部分を中心に担当するイメージ、EAIやESBツールなどは下部のデータアクセスやAPI、インテグレーション、メッセージングを担当するイメージで捉えることができよう。
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