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クラウド、モバイル、IoTで見直されるBPMすご腕アナリスト市場予測(3/3 ページ)

クラウドなど昨今のITプラットフォームの大転換により、あらためて価値が再認識されているBPM。そんな活性化するBPMの今に迫る。

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これからのBPM導入のトリガーはクラウド、モバイル、IoT

 さて、そんな日本でもITプラットフォームの変化に伴ってBPMの普及がこれから本格化することは十分考えられる。普及を促進するキーワードは「クラウド」「モバイル」「IoT」だ。

 現在、企業システムはクラウド化が大きく進展し、フレキシブルなシステム環境がこれまで以上に求められている。そこで環境整備が急がれるのか、オンプレミスでもクラウドでも柔軟にシステム拡張が可能となるシステム共通基盤の構築だ。

 システム共通基盤を整備することで、ビジネスの変化に柔軟に対応できるだけでなく、メンテナンスコストも大幅に軽減できるようになる。そのシステム共通基盤の上では、さまざまな環境から部品としてサービスが呼び出せるSOAアーキテクチャを前提にさまざまなアプリケーションが開発されることになり、必要なプロセスに応じて自由にサービスを呼び出し、業務に役立てていくBPMがますます広がっていくことになるだろう。

 これは企業の中に閉じた話ではない。パブリッククラウドを利用する企業が増えれば、クラウド内での柔軟な連携が求められてくるのは必定だ。企業間はもちろん、国際拠点間で行われる業務プロセスの連携なども十分に考えられる。

 また、センサーを含めたあらゆるモノがインターネットにつながるIoTによって、パブリックネットワークを介したシステム連携もこれまで以上に必要になるだろう。ここで活躍するのがプロセスも含めて設計できるBPMだが、パブリックスペースでのプロセス連携を実施するためには、何もオンプレミスにBPM機能を持たせる必要はない。

 パブリッククラウド上にBPM機能があれば、より利便性が高まるはずだ。ここで期待されているのが、パブリッククラウド上からBPM機能を提供するPaaSとして提供されてきたオンライン機能にビジネスプロセスまでをパッケージ化したBPMaaS(Business Process Management as a Service)だ。BPMaaSの台頭がBPMの普及を加速すると考えられる。

新たに台頭する「BPMaaS」とは?

 BPMaaSはクラウドを利用して提供されるビジネスプロセスのことを指すが、そのサービス自体にビジネスプロセスの実行とモニタリングを実装しているのが特徴だ。これを利用すれば、BPM専用のサーバ導入や運用管理の必要なく、従量課金のサービスとして利用できることになる。

 また、特定拠点ばかりでなく、遠隔地の事業所、例えば海外支社や営業所でも同じサービスを簡単に利用できるところも重要だ。さらにパブリッククラウド上のサービスであることから、複数企業が連携する事業やプロジェクトにも活用しやすく、社会インフラから必要な情報を収集するIoTとの相性もよい。

 なお、BPMaaSを加速させる可能性を秘めたものの1つに挙げられるのが、Salesforce.comのアプリケーション開発用PaaSであるForce.comへのBPM機能搭載だ。Force.comを共通アプリケーション基盤とすることで、その上で開発されたアプリケーションならBPM機能を利用して連携の組み換えを行うことが容易になるのが利点だ。

 また、モバイルデバイス用の開発環境がそろっており、オンプレミスの既存業務システムとはAPIで連携させることが可能、しかも各種IoT機器とのAPI連携も提供されるとあって、ビジネスプロセス合理化を望む企業に歓迎されている。

 2014年5月にはマイクロソフトとSalesforceが戦略パートナーシップ関係を結んだことを発表しており、Office 365などとsalesforceとの相互利用が可能になると予想されている。このようなBPM機能を内包したPaaSを利用したアプリケーションの自社開発も今後進むだろうし、サービス提供会社によるBPMaaSパッケージの提供もますます盛んになると考えられる。

モバイル、ソーシャル、IoTへの対応

 今後のBPMの普及を考える上で、企業アプリケーションのデータの入り口の多様化という観点も見逃せない。例えばスマートフォンの利用拡大に伴うGPSデータを利用する場面が考えられる。

 ビジネスで例をとればGPSによる位置情報をSFAツールで用いれば訪問営業活動の支援のためのビジネスプロセス実行に役立てることができよう。また、コンシューマー向けのマーケティングを想定するとGPS情報を不特定多数が持つデバイスから収集、分析して、顧客が今いる場所に関連するコンテンツの自動配信を行う例も登場している。

 個人が了承した範囲において、写真や物品の購買履歴、身体情報、性別、居住地、趣味などの「ライフログ」情報を個人向けの各種サービス会社が容易に収集可能なので、それら情報を生かせばさらに効果的なターゲティングを行うことも可能である。

 さらに、ソーシャルメディアでの「口コミ」も重要な顧客の声を集める手段になり得る。ソーシャルメディア解析とマーケティングや商品販売、開発へのフィードバックを自動化することができれば、人手をかけずに販売戦略の意思決定や売れる商品の開発、高品質なサービスの提供に結び付けることができそうだ。

 加えてIoTと呼ばれる「モノ」の世界の情報もビジネスに組み込みやすくなる。例えば自動車や家電製品が情報源となり、その情報解析からマーケティングに役立つ情報を抽出することが可能になるだろう。

 多様な情報ソースからの情報を処理し、解析し、意思決定に役立て、ビジネスを実行するプロセスを統制するためにBPMを活用し、関連する業務プロセスとその流れを最適に設計し、いつでも変更や追加が行えるよう運用していくことで、マーケティングオートメーションが実現する。それが競争力の決め手になる時代の到来は遠くない。

 今日、企業のシステム基盤は仮想化の進展やクラウド基盤の利用によりインフラレベルでの統合が進んだが、現在のグローバルな競争環境の中で必要なアジリティを得るためにはさらに上位のミドルウェア層の標準化を進め共通アプリケーション基盤による迅速で効率的なアプリケーション開発やビジネス環境の変化や継続的な改善を実現することが必要になる。

 このような環境を実現するためにBPMは必然的な選択だ。BPMやSOAは話題としては沈静化しているものの、決して陳腐化したテクノロジーではない。これまでにないスピード、あるいはコスト効率で、ビジネス改善およびビジネス創造ができる道具として、新しい視点で見直す必要がある。

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