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オンラインストレージは第3のデータストアの地位を確立するか?すご腕アナリスト市場予測(2/3 ページ)

DropboxやBoxなどさまざまなオンラインストレージサービスが登場したが、その使い分けの心得とは? アナリストが勘所を伝授する。

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どこのサービスを活用している? オンラインストレージサービス概況

 次に「具体的にはどのようなオンラインストレージサービスが導入されているのか」や「代表的なサービスの最新動向はどうなっているのか」を見ていくことにしよう。

 以下のグラフは冒頭のグラフにおいて「オンラインストレージサービス」に該当する具体的な各サービスの導入割合をプロットしたものだ。個人での利用や企業に承認を得ない形での利用は含まれていない点に注意いただきたい。

企業として導入済みのオンラインストレージサービス(複数回答可)
図2 企業として導入済みのオンラインストレージサービス(複数回答可)(出典:ノークリサーチ「2014年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」)

 以下では上記の中から代表的なサービスを幾つかピックアップし、それぞれの特徴や最新動向を列挙していく。

サービス概要:容量無制限は当然、ベンダーの独自性が問われる時代に

その1:Office365、Sharepoint Online、OneDrive for Business(日本マイクロソフト)

 個人でも利用可能な「OneDrive」の企業版に当たるものが「OneDrive for Business」で、「Office365/Sharepoint Online」や「Sharepoint 2013」を導入することで利用可能となる。先に述べた「コラボレーション系SaaS」(=「Office365」)に伴って導入が進んだ代表例といえる。

 同サービスの最も大きな強みはMicrosoft Office文書との親和性だ。各種のOfficeアプリケーションからのシームレスな利用に加えて、共有した文書を複数ユーザーが同時に編集できるなど、高度な文書共有が可能となっている。

その2:Dropbox for Business(Dropbox)

 個人向けの「Dropbox」の企業版が「Dropbox for Business」である。コラボレーション系SaaSを伴わない単体のオンラインストレージサービスの中では最も導入率の高いものの一つといえる。

 同サービスはスマートデバイスの普及に伴って導入率を高めてきた背景がある。2014年11月にはDropboxとMicrosoftが提携を発表し、今後リリースされるMicrosoft OfficeのiOS版とAndroid版からDropboxをデータストアとして利用可能となる予定だ(逆にDropbox側のアプリケーションからはMicrosoft Office文書の編集が可能)。導入率の高いサービス同士の連携でもあるため、今後の動向には要注目といえるだろう。

その3:Google Drive for Work(グーグル)

 個人向けの「Googleドライブ」の企業版に当たるものが「Google Drive for Work」である。コラボレーション系SaaSである「Google Apps for Work」を包含しているため、位置付けとしては「OneDrive for Business」に比較的近い。ファイル操作を記録する監査機能などセキュリティ関連が充実している。

その4:Box(Box)

 「Box」は当初から企業利用に注力しており、単体のオンラインストレージサービスとしては「Dropbox」と並んでIT業界内では知名度の高いサービスである。同サービスはデータストアにとどまらない取り組みが大きな特徴だ。

 2014年9月にはビジネスプロセスの管理や運用を担う「Box Workflow」や小売業やヘルスケアなどの業界別に最適化された「Box for Industries」を発表している。業務シーンまで踏み込んだオンラインストレージサービスの活用を目指す取り組みとして今後の動向が注目される。

その5:Bizストレージファイルシェア(NTTコミュニケーションズ)

 外資系が多くを占める中、国内企業が提供するサービスとして比較的多く挙げられたのがNTTコミュニケーションズの「Bizストレージファイルシェア」だ。前身である「ShareStage ASPサービス」(2002年開始)も含め、早期から企業向けサービスを展開してきたことが比較的高い導入率を示す大きな要因の一つと考えられる。

 「大容量ファイルを拠点間や取引先と安全にやりとりしたい」といったニーズを持つ日本企業が主な顧客層である。また2014年11月には小規模企業や中小企業が手軽に利用できることを意図した「Bizストレージeフォルダー」の提供も開始している。

その6:クラウドファイルサーバー(富士通)

 「Bizストレージ」と同様に国内企業が提供するサービスとして比較的多く挙げられたのが富士通の「クラウドファイルサーバー」である。一般的に国内企業がコスト面でグローバル企業に対抗するのはなかなか難しいが、ファイル自動暗号化、MACアドレスによるアクセス制限、操作ログ記録、データ冗長化による高度な耐障害性といった点を差別化ポイントとして、国内外の拠点間でデータ共有を行い企業などに導入されている。

その7:フレッツ・あずけ〜るPROプラン(NTT東日本)

 「フレッツ・あずけ〜るPROプラン」は個人および小規模企業で利用できる「フレッツ・あずけ〜る」の機能強化版という位置付けとなっている。回線認証、端末認証、紛失端末の遠隔ロックなどのセキュリティ面の強化に加え、スケジューラや掲示板といったデータ共有をサポートする機能が備わっている。このようにキャリアからの新規参入が見られる点もオンラインストレージサービス市場の特徴の一つとなっている。

 オンラインストレージサービスという言葉が注目されるようになった当初は「容量当たりの価格」と「最大容量」がサービス比較の最重要ポイントとなっていた。だが、昨今ではグローバル企業が主導する形で「一定価格かつ容量無制限」への取り組みが進んでおり、価格や容量だけではない差別化要因が求められてきている。

 上記で紹介したように「他社との連携」「セキュリティ強化」「個別の業種、業態への対応」など注力ポイントはさまざまだ。ユーザー企業としては価格面だけでなく、各サービスが目指す方向性と自社のニーズが合致しているかを見極めることが重要だ。

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