検索
特集

期限迫る、マイナンバー制度の影響と対策 総まとめすご腕アナリスト市場予測(1/3 ページ)

2016年1月から始まるマイナンバー制度だけに、対策が急がれる。何をすべきか具体的な対策をアナリストの視点から整理する。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

アナリストプロフィール

岩上由高(Yutaka Iwakami):ノークリサーチ シニアアナリスト

早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻卒業後、ジャストシステム、ソニーグローバルソリューションズ、ベンチャー企業などでIT製品およびビジネスの企画、開発、マネジメントに携わる。ノークリサーチでは技術面での経験を生かしたリサーチ、コンサルティング、執筆活動を担当。


 2015年に入ってから関心が急速に高まってきている「マイナンバー制度」。番号通知を知らせるテレビコマーシャルを見た人も多いと思われるが、2016年1月から運用が始まるマイナンバー制度は、個人だけでなく企業における業務や情報システムにも大きな影響を与えることになる。そこで今回はマイナンバー制度について詳しく見ていくことにしよう。

そもそも「マイナンバー制度」とは何か?

 マイナンバー制度を一言でいえば、「国民一人一人に番号を割り振ることによって、税や社会保障、災害対策における行政の事務や手続きを効率化/精緻化するため国の施策」ということになる。

 現在の日本ではさまざまな行政サービスが存在し、それらが別々に運用されている。例えば、社会保障の場合であれば

  • 年金分野(国民年金、厚生年金など)
  • 労働分野(ハローワークなど)
  • 福祉/医療分野(生活保護、健康保険、介護保険など)

 といった幾つかの分野に細分化される。そしてこれらの各分野は確定申告などの税務分野とは切り離された形で運用されている。その結果、「年金給付を申請する際に申請者が自ら税務関連の書類を集めなければならない」といった煩雑さや、「十分な収入があるにもかかわらず、生活保護を不正に受給する」などの問題が生じやすくなる。

 そこで、複数の行政サービスや税務を横断する形で個人を特定することができれば、こうした問題を解決すると同時に行政サービスにおける利便性や効率を改善することができるはずだ。

 この「複数の行政サービスや税務を横断する形で個人を特定する」という目的のために個人(実際には法人に対しても番号が振られる)に対して付番されるものが「マイナンバー」であり、マイナンバーを活用した行政サービスや税務の改善を実現する上で個人や企業が取り組むべき事柄を法制度として取りまとめたものが「マイナンバー制度」というわけだ。

法律、取り組み、スケジュール マイナンバー制度の実際

 根拠となる法律、対象企業、企業が取り組むべき主な事柄などをまとめると以下のようになる。

根拠となる法律

 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」およびその関連法(2013年5月成立)

対象企業

 規模を問わず、従業員などに給与を支払う全ての企業が対象になる(※日本版SOX法や省エネ法と違って対象企業は広範囲にわたる)。

企業が取り組むべき主な事柄

  • 源泉徴収票や被保険者資格取得届を発行する際は、該当する従業員のマイナンバーを記載する必要がある
  • 報酬、料金、契約金などの各種支払調書にも対象者のマイナンバーを記載しなければならない
  • 従業員およびその扶養家族のマイナンバーを収集し、適切に管理しなければならない(※マイナンバーを適切に管理せず、個人情報漏えいなどが生じた場合には処罰の対象となることもある)

施行スケジュール

 2015年10月 個人向けに番号配布を開始
2016年1月 運用開始(※2015年中には企業側の対応を終わらせる必要がある)

 上記が示すように、マイナンバー制度は以前の日本版SOX法や省エネ法と比べても対象となる企業が多く、大企業のみならず中堅・中小企業から小規模企業、SOHOに至るまで非常に広範な企業に対して影響を及ぼす。さらに罰則も設けられており、個人情報の漏えいにつながるような事象に関しては最高で懲役4年の実刑が科せられる可能性もある。その一方で、運用開始は2016年1月に迫っており、企業に残された時間的な猶予は極めて短いのが実情だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る