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基幹システムを任せて大丈夫? 最新「IaaS」解説IT導入完全ガイド(3/5 ページ)

開発環境や情報系システム、管理系システムの移行先として一般的な選択肢となったIaaS。基幹系システムの移行はどうだろうか?

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 では実際に基幹系システムのIaaS移行はどんな動機でどのように実現されているのだろうか。事例で見てみよう。

化学製品メーカーの事例:グループ会社からの独立に統合運用管理とスムーズな業務継続を目指す

 企業グループ内でITインフラを共有してきたA社は、グループからの独立という大きな転機を迎えた。従来共用してきたメールやグループウェア、会計、購買、総務、人事システム、A社が独自に構築して共用インフラで稼働させてきた販売、物流システムを自社独自インフラに再構築する必要に迫られたが、570人を超える従業員に対してシステム要員は8人のみ、独立までの短期間での構築という困難な作業に際して複数ベンダーに提案を求めた。

 NECからは図4のようにハウジングやIaaS、SaaS、BPOサービスを適材適所に組み合わせる統合管理可能なシステムが提案された。これが運用負荷を最小限にできる方法と判断したA社はこれを受け入れ、従来利用していたパッケージをカスタマイズし、既存の販売、物流システムとともにNECのハウジングサービスに移行した上、これらシステムの背後のファイルサーバやデータベースサーバ、認証サーバを同社IaaS上に構築した。メールなどにはSaaSを適用し、かつPCキッティングや資産管理、ヘルプデスク、保守などはIT資産管理BPOを利用することにした。

 これにより、独立後スムーズな業務継続ができたばかりでなく、少数精鋭の運用管理担当者で十分運用可能な体制が実現できた。またストレージ容量の拡張が柔軟・迅速になったことから、将来的な需要を見越す綿密なリソースプランニングの必要性がなくなり、コスト負担の少ないインフラ環境となった。

 各種環境の連携とベンダー提供の統合管理基盤が利用できたことが成功につながったケースだ。

グループからの独立に際したITインフラ再構築を短期に実現、運用管理工数も削減
図4 グループからの独立に際したITインフラ再構築を短期に実現、運用管理工数も削減(出典:NEC)

食品卸売業の事例:1万人のシステムユーザーが数億件規模の販売データを高速、柔軟に分析可能に

 経営効率化を目指す食品卸売業B社では、グループ会社統合を機にシステムのコンパクト化、スピードアップ、運用管理工数削減などのIT課題に取り組んだ結果、販売データ分析システム、倉庫管理システム、オンライン受発注、債権債務管理を行う基幹系システムをIaaS上に統合するのが最適と考えた。

 同時にサーバOS移行やシステム改修も進める必要があったため、ベンダーはIaaSそのものの信頼性の他、移行作業などのトータルサポートが提供できてワンストップ対応が可能なところに限られ、NECが選定されることになった。

 3種のシステムは約1年半で段階的に移行する計画が立てられた。NECのIaaSにはコストを抑えた「スタンダード」と高性能、高信頼を保証する「HA」の2つのサービスがあるが、システムの重要性から移行先はHAサービスが選定された。リソースの増減が柔軟にできることと、必要とあらばハウジング環境で不足を補える可能性も考慮した。

 構築されたデータ分析システムでは、約1万人のシステムユーザーが数億件規模の販売データを高速・柔軟に分析できるようBIツールが利用され、IaaS性能とあいまって従来の10分の1以下の時間で年間販売実績データレポートを出力できるようになった。

 運用管理担当者は5人のみだが運用管理体制は十分といい、サーバ監視やトラブル対応、数年に一度のシステム更改に悩まされることがなくなったことに満足している。コスト面では今後5年間で約2割を削減できる見込みだ。今後のモバイル活用の推進や、BCP強化などにもこのインフラを前提に取り組んでいくという。

 基幹システムにふさわしいHA構成が標準的に適用できたこと、開発や保守などのサポートも合わせて委託できるシステムベンダーの強みをうまく利用した事例だ。

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