基幹システムを任せて大丈夫? 最新「IaaS」解説:IT導入完全ガイド(4/5 ページ)
開発環境や情報系システム、管理系システムの移行先として一般的な選択肢となったIaaS。基幹系システムの移行はどうだろうか?
アパレルメーカーの事例:アパレル業テンプレを組み込んだERPで低コスト、短期間のシステム構築
国内、米国、アジア、欧州にビジネスを展開するアパレルメーカーのC社は、日本と香港、米国拠点とで異なる基幹システムや会計システムを運用していたが、業務の標準化や委託販売に伴う処理の基準が統一できない課題に直面していた。
そこで新たな基幹システムとしてERP導入を決断したが、問題はそのコストと導入期間。2年にわたり各種の方法を検討していたが、2014年秋にIBM SoftLayerから提供された、業界特有の要件があらかじめ組み込まれた「業界業務プロファイル」に「中小アパレル業プロファイル」を発見した。
これはメジャーなERPツールである「SAP Business One」に事前に開発したアパレル業テンプレートを組み込んだものだ。オンプレミスでは3000万円前後の初期費用と半年から1年程度の移行期間が必要と見込まれるシステムが、IaaSに組み込まれた業界業務プロファイルなら初期費用は数十万円、導入期間も極めて短くて済む。
C社はこの特長に注目し、詳細に検討したところ、ERPライセンスはグローバル導入で時差を利用すれば節約できる可能性があり、OSやミドルウェアのバージョンアップ対応などの手間や不安もなくなるため、ランニングコストもオンプレミス構築よりも抑えられる見込みが立った。さらにSoftLayerは世界各地を結ぶ高速ネットワークが利用できる点も評価し、導入に踏み切った。
業界業務プロファイルの利用はIaaSの一般的な利用法とは異なるものの、低コスト、短期間の基幹システム構築のためには検討してみる必要がありそうだ。
ITサービス業の事例:毎年130台以上の仮想マシン増加、簡単に変更せずオンプレからクラウドへ移行
D社はSE 500人以上を要するITサービス業者。10台の物理サーバ上で約1300の仮想マシンを構成、300の開発プロジェクトが利用しており、毎年仮想マシンが130台以上増えるため、綿密な運用管理と定期的なインフラ増強という難題を解決する方策を探していた。オンプレミスサーバ追加では際限がないため、IaaS利用が適切と考えられた。
しかしオンプレミス構築された1300台の仮想マシンを業務中断せずに全体をIaaS移行するのは不可能。そこで、仮想マシンをシームレスにIaaSに移行できるvCloud Airに注目した。使い慣れたツールがそのまま利用でき、操作修得などの手間がいらず、オンプレミスからクラウドへの移行が簡単で設定変更すらいらない点、また定額制であるため予算の可視化も可能なところを評価し、導入を決めた。
導入したのは占有の物理サーバを仮想化基盤とするDedicated CloudとvSphere環境向けのDR環境をサービスとして提供するDisaster Recovery、高スループットの専用型ネットワークvCloud Air Direct Connect。これらのサービスの利用により、従来必要だったインフラ担当とネットワーク担当の役割分担が必要なくなり、簡単、迅速、低コストな基盤管理が実現した。
システム開発に従来の3〜4倍のリソースが必要な案件が増えてる折から、リソース増強がスピーディになると同時に開発者が仮想マシン上の作業だけに専念できるようになったのにも手応えを感じている。同社は今後開発はクラウドで、負荷テストなどはオンプレミスで行う仕組みを造ろうとしている。
オンプレミスとクラウドの境界をなくした運用が、IaaSの標準機能で可能になったことが導入成功のポイントだ。
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