第3のプラットフォームへの変遷期に見るユーザー部門のIT予算:すご腕アナリスト市場予測(4/5 ページ)
クラウドやモバイルなど第3のプラットフォーム時代に見る、ユーザー部門のIT予算の動きとは。アナリストが徹底解説する。
ユーザー部門がIT投資している企業ほどIT部門への満足度が高い
ユーザー部門がIT投資をして業務効率を上げているなら、IT部門はそれに関わる必要がないのではないかと考えるのは早計だ。実は調査では面白い結果が出ている。ユーザー部門がIT投資している企業ほど、IT部門への満足度が高いのだ。
部門IT投資がある企業(n=115)ではIT部門に「満足」「やや満足」を合わせて33.0%、部門IT投資がない企業(n=135)では、同項目で22.4%だった。「不満」「やや不満」という回答は、前者で19.1%、後者で19.3%とほぼ同じである。
この結果の背景には、IT部門とユーザー部門との関係性の深さの違いがあるようだ。部門IT投資を行っている企業でも、ユーザー部門が必ずしも全て自己完結しているわけではなく、分からないところ、アドバイスが欲しいところがあれば、IT部門に相談しているケースが多いのだ。
IT部門とユーザー部門との間にコミュニケーションがあれば、IT部門の方でもユーザー部門の状況を理解し、専門的な立場から適切なアドバイスができる。そんな関係性が築けると、ユーザー部門にしてみれば、自らが求める業務効率化、あるいは新規のビジネス推進などのIT導入目的に即してIT部門が協力してくれていると映るはずだ。満足度は上がって当然だろう。
一方、IT部門の方はユーザー部門の要望に従ってサポートを提供している格好だが、これも視点を変えて見れば、IT部門は得意とする技術面で貢献しながらも、業務要件については、それをもっとも理解しているユーザー部門にイニシアチブを持ってもらうことで、より現場ニーズに即したIT導入が実現できるというわけだ。
企業IT全体の管理を最終的に行うのがIT部門であるとすると、ユーザー部門のIT投資はIT部門の大きな負荷軽減につながっていると見ることもできよう。
逆に部門IT投資がない企業の場合は、IT部門とユーザー部門の関係性は従来通りなので、ユーザー部門からの要求は必ずしも望むタイミングでは応えてもらえない。交流があまりないため、ビジネスや業務プロセスについても的確に把握してくれているかどうか分からない。そんな状況が変えられず、ユーザー部門は不満をかこつことになる。
企業ITの今後についてどちらが有意義かは明らかではないだろうか。IT部門とユーザー部門が協力関係、信頼関係で結ばれて、売上拡大、業績アップに手を携えてまい進することこそ望ましい。だが、それには解決しなければならない課題がある。
IT部門が主導する全体最適なITアーキテクチャへの合致が必要
課題の1つはガバナンスが効きにくくなりがちなこと、もう1つはそのためにセキュリティ上の問題が生じかねないことだ。
企業のIT予算は、基本的には経営の方針によって割り振られる。そのパターンは3通りで、1つはIT部門だけにIT予算を割り振り、ユーザー部門には持たせないという以前から最も多いパターン、もう1つはユーザー部門には部門内予算だけを割り振り、その中から部門の裁量でIT投資を行えるようにするパターン、最後の1つはユーザー部門にIT予算として用途を限った予算を、他の部門内予算とは別に割り振るパターンだ。
分かりやすいのは最後のパターンで、こちらは少なくともIT投資が誰の目にも明らかになってガバナンスを効かせやすい。しかし他の2パターンはいわゆる「シャドーIT」を増やしてしまう危険性がある。
シャドーITとは、IT部門や経営が管理していない従業員の隠れたIT利用のことだ。この場合はIT部門が把握していないIT、あるいは把握だけはしていても何も関与しない、ユーザー部門が自部門の予算で導入、利用しているITのことを指す。
シャドーITの危険性は、よく言われるように、ITシステムのサイロ化を招き、同じデータを重複して保管したり、ハードウェアやソフトウェアへの重複投資が生じたり、また、ハードウェアの増強や刷新あるいはソフトウェアのアップグレードなどのシステム更改が必要になった際にユーザー部門では対応できなくなっているなど、全体的な最適化が図れなくなってしまうことだ。
ユーザー部門が業務効率を優先してITを導入すると、それは得てして部分最適化にとどまり、営業とマーケティング部門で同じデータを2重に持つようなことが起こりがちになる。それに加え、本来はIT部門が設計して計画的に組み立ててきたセキュリティの枠組みから外れたシステムを増やすことにつながる可能性もある。それは思わぬ情報漏えいやサイバー攻撃被害を招かないとも限らない。
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