失敗事例から学ぶ、失敗しない「UPS」選び:IT導入完全ガイド(1/6 ページ)
東日本大震災で電力不安を体験した企業の多くは「UPS(無停電電源装置)」の見直しを図った。あれから数年、想定外の事態を体験した企業も少なくないという。
2011年の東日本大震災において電力不安を体験した企業の多くは「UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)」の新規導入や見直しを図ったことだろう。あれから数年が経過し、UPSの導入や運用に関して想定外の事態を体験した企業も少なくないという。今回はそういった「失敗事例」をピックアップしながら、UPSにまつわる不安要素を排除していく。
2015年も火山活動が活発化したり豪雨被害があったりと、まだ大事には至らないもののUPSの必要性は高いと感じる。未導入の企業には導入の検討を、導入済み企業ならリプレースやバッテリーのチェックをお勧めしたい。なお今回は、一般的なオフィスでの導入に適した小型から中型のUPSを対象とし、その選び方についても解説する。
「UPS」導入の意義
停電などの電源トラブルが発生すると、PCやサーバなどのIT機器は強制的なシャットダウンを余儀なくされ、未保存データの喪失により業務に支障が生じる原因にもなる。また、書き込み動作中のHDDが電源喪失による強制停止で故障するといったハードウェアへの損害が発生する可能性もある。
このような事態に陥らないように、UPSは接続した機器が電源トラブル発生時にも動作できるように給電を行う。さらに「瞬断(瞬間的に発生する停電)」を防いだり、落雷時の「サージ電流」を遮断したりしてIT機器を守るという役割も持つ。最近では、ネットワークカメラを使った監視システムや各種IoTデバイスによるデータ収集など、極力停止したくない機器が増えてきたため、ネット接続環境を維持する目的でもUPSの採用が多くなっている。
ただし、UPSによる給電の本質は停電発生時にIT機器の動作を継続させるためではなく、あくまで安全にシャットダウンする時間を確保するためのもの。電源トラブルが発生したら、まずは機器を安全にシャットダウンし、電源復旧を待つのがセオリーだ。
ここ数年でUPSはコンパクト化が進み、小型UPSをオフィスやサーバルームで分散活用するのが定番となった。また、サーバ仮想化が進んだことにより、仮想環境での電源管理に対応した製品も一般的になっている。
ここからは、UPSの導入や運用における「失敗事例」を紹介する。UPSの特徴を理解し、導入と運用に活用してほしい。
電気工事に床補強? まさかの落とし穴
失敗事例
納品されたUPSを接続しようとしたら、コンセントの形状が普通と違っていた。えっ、電気工事が必要だって?
オフィス向けのUPSの中でも、高容量の製品の中には入力電源のプラグ形状が「家庭用コンセント」と合致しないものがある。形状の違いだけではなく、入力電流も20A以上が必要となることもあり(家庭用コンセントは1基あたり最大15A、コンセント全体で20Aが一般的)、電気工事をしなければUPSが使えないという事態に陥ることがある。
例えば、オムロンの「BN300T」(画像1左)はオフィス向けのコンパクトなUPSだが、3000VA/2700Wという高い出力容量を誇る。入力プラグは丸型で3ピンの「NEMA L5-30P」仕様で家庭用コンセントでは利用できない。一方、同じBNシリーズの「BN150T」(画像1右、出力容量は1500VA/1350W)は一般的な家庭用コンセントに差し込んで使える“普通の”プラグ形状をしている。
プラグ形状はカタログにも明記されているが、意外と見落としがち。メーカーによっては電気工事を請け負うこともあるが、導入における失敗を防ぐためにも必ず確認しておきたい。
また、UPS内部のほとんどを占めるバッテリーの重さにも注意したい。主流は「鉛電池」であり、見た目以上に重いのだ。富士電機の「RXシリーズ」は、ユニット型の増設バッテリーモジュールを追加できる床置き型UPSだが、2ユニットを内蔵した「M-UPS070RX22S」(画像2、出力容量7000VA/5600W)の重量は320キロとなる。
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