失敗事例から学ぶ、失敗しない「UPS」選び:IT導入完全ガイド(3/6 ページ)
東日本大震災で電力不安を体験した企業の多くは「UPS(無停電電源装置)」の見直しを図った。あれから数年、想定外の事態を体験した企業も少なくないという。
管理ツールの使いやすさにもベンダーの特徴が表れる
繰り返しとなるが、バッテリー管理こそがUPS運用のキモとなる。しかし、UPSの状況は毎日チェックするような類いのものではない。だからこそ管理ツールには使いやすいものを選択するといいだろう。また、UPS自体の管理だけでなく、UPSに接続した機器を自動シャットダウンする機能が使いやすいかどうかも重要なポイントだ。
オムロンのUPS管理ツール「PowerAct VHA」(図6)は、同社のUPSに冗長構成をとった仮想化サーバを接続した場合の管理機能と、自動シャットダウン機能を備えたツールだ。VMwareの仮想化ソフト「vSphere」にも対応する。
APCのUPS管理ツール「PowerChute Network Shutdown」(図7)も仮想環境に対応。Webブラウザ上で動作し、UPSを介して接続したサーバを安全にシャットダウンできる。ユーザーの声を受け、最新バージョンではUIが日本語化される。
バッテリーが短寿命化? 置いた場所が問題だった
失敗事例
交換タイミングが3〜5年といわれていた内蔵バッテリーなのに、わずか1年ほどで寿命だとアラートが表示された。バッテリーの交換コストが急に必要に。原因は?
これは、オフィス向けのUPSを適当な場所に設置しているとはまりがちな失敗事例だ。バッテリーの寿命の目安は3〜5年といわれているが、これは使用する環境によって大きく変化するからだ。
その最大の原因はズバリ「温度」。使用環境の温度が上昇すれば鉛電池は劣化が進みやすくなり、想定よりも早くバッテリーの寿命が訪れる。そもそもカタログ値は周囲温度25℃での使用を前提としており、これが10度高くなればバッテリーの寿命が半分になるという。
「特に暑いところに置いたつもりはないけど……」というのであれば、排熱不良が怪しい。ラックマウント型UPSは、適切にサーバラックに組み込んであれば排熱不良はほぼ発生しない。しかし、床置き型、特にコンパクトサイズのUPSだと棚やデスクの下に押し込むような形で配置することもある。このとき、UPSの排気ファンをふさぐような形で配置してしまうとUPS筐体内に熱がこもり、バッテリーの劣化につながるのだ。
さらに床置きではフロアで発生するホコリを吸い込んでしまって、排気性能が低下しがちとなる。特にカーペットを敷いた環境では注意が必要だ。排気ファンにはホコリが集まりがちなので、小まめに掃除をしながらUPSの状況をチェックするとよいだろう。
また、使わないからといってUPSを電源に接続しないで放置するのも厳禁だ。ある会社では毎晩退室時にUPSの電源も落としていたという。鉛電池は過放電(充電ゼロ状態)が長期間にわたると一気に劣化が進み、あっという間にバッテリーは寿命を迎えることとなる。たとえUPSに接続する機器がなくても、UPS自体はコンセントに接続しておくことが必要だ。
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