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ストレスチェック運用の落し穴、注意すべき5つの点IT導入完全ガイド(1/3 ページ)

ストレスチェックの目的は制度対応にあらず。メンタルヘルス対策の推進という本質を捉えて運用体制を構築しなければそれこそ予算と時間のムダだ。

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 ストレスチェックの制度化を機にメンタルヘルス対策に取り組む企業も多いことだろう。今回は、ストレスチェック制度の趣旨を理解し、関連ソリューションの適用部分も把握した上で、実施に際して起こり得る問題について考えてみよう。

ストレスチェックの「形骸化」を防ぐ方法は?

 最も気を付けるべきことは、メンタルヘルス対策の推進という本質を忘れ、単に法令による義務をクリアすればよいという法的コンプライアンスに偏った体制を作ってしまうことだ。ストレスチェックは実施したものの職場環境は改善されず、メンタルが悪化し始めた人に有効なケアができないというのでは、コストだけかかる無用の仕事ということになる。いわゆる形骸化だ。ストレスチェック実施をきっかけにして、メンタル悪化リスクの低減につなげてこそ、投資する価値があるといえる。

 では、どうやってストレスチェックの形骸化を防ぐのか。ストレステストの受検や結果判定、面接指導の流れを作るだけでは心もとない。高ストレス者以外のメンタル悪化傾向にある従業員に対するアフターフォローやケア、さらに職場環境の改善を一連のプロセスとして構築し、絶えず改善していく活動が重要になるだろう。従業員の理解と協力が得られなければ、せっかくの投資も無駄になる。そのためには従業員が自分自身にメリットがあると納得できるようでなければいけない。

従業員の不安を招かない対策が必要

 まず考えたいのは、自分のプライバシーが侵害されはしないか、正直に回答することが自分の不利益にならないかという不安を解消することだ。法令には「従業員の不利益にならない」情報の取り扱いが明記されており、企業で策定する業務プロセスも情報保護を折り込むことになるだろう。

 また判定結果を人事に反映するようなことのない仕組み作りは当然のことだが、事務実務レベルで思わぬ漏えいが起きないとは限らない。紙の帳票を利用する場合は、中身が見えない封緘をするなどの工夫がされるだろうが、封入作業や移動に人が介在すると、そこに不安が発生する。

 そもそもストレスチェックを実施するのは企業の責任であるが、それを実施するのは産業医などの「実施者」であるところに危うさがある。紙を利用する場合には、移動中に原票の紛失やコピーなどを監視する仕組みや、分析システムへのデータ入力時に情報漏えいおよび転記ミスなどがないことを確認する仕組みが必要になり、万全を期すとコスト高騰が避けられない。

 その点、ITシステムを利用し、従業員の端末から回答を入力、暗号化してサーバに集積して、アクセス制御により認証された実施者だけが原票データを参照して判定作業などを行うようにしておけば、人の介在をなくすことができ、安全安心につながる。

 さらに言えば、社内サーバに情報を保管している場合、内部関係者がポリシー違反や操作ミスなどで情報を入手したり、システムのウイルス感染により外部に流出したりする可能性も考えられないことではない。堅牢なセキュリティ設備を持つデータセンターで運用されるSaaSであれば、むしろ社内サーバへの保管よりも情報保護について安心感が得られよう。

 実施事務従事者が完全に人事権とは無縁のスタッフであることや、情報保護のルールが明文化されていることなど、体制や規定の面も大事だが、特に回答データがどのように取り扱われるのか、従業員が納得いくように社内規定とシステムを整え、周知を図る必要がある。

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