ストレスチェック運用の落し穴、注意すべき5つの点:IT導入完全ガイド(2/3 ページ)
ストレスチェックの目的は制度対応にあらず。メンタルヘルス対策の推進という本質を捉えて運用体制を構築しなければそれこそ予算と時間のムダだ。
メンタルヘルス状態の改善を図る仕組みがあるか
ストレスチェックはあくまでメンタル不調の未然防止目的で行う「一次対応」であり、それ自体でメンタルヘルスを健全に導くものではない。しかし、「判定結果の報告書」や「セルフチェック」機能ではメンタル改善に結び付くヒントを従業員に提供することができる。
また集団分析の結果に基づき、問題のある領域にメスを入れていくことも可能だ。メンタルヘルス改善を意識してストレスチェックを実施していけば、徐々に職場環境を改善していく端緒がつかめるのは間違いない。
集団分析では、職場ごとのストレス度合いとその全国平均との比較を行う分析手法(図1)などが厚生労働省から提示されており、対応ソリューションでも同様の分析レポートが出力できるようになっている。こうした分析により、職場の問題点を把握し、改善を図る取り組みを行うことが、ストレスチェックでメリットを得ることにつながる。
メンタルヘルス改善が可能なことが従業員に理解されれば、ストレスチェックへの協力や積極的な受検が推進できることになろう。同時に研修や健康診断などの機会を捉えて、あるいは専用の研修の時間を設けてメンタルヘルスケアの手法や社内関連制度、相談窓口の利用法などの周知を図っていく努力も必要だろう。Eラーニングなどを使ってセルフサポートを促進する方法もある。
なお、対応ソリューションの中には、「認知行動療法(CBT)」の理論に基づいたセルフサポートを提供するものもある。3つのツールが利用可能で、その1つは気持ちが沈んだときの自分の考えに対して別の見方ができないかを問いかけて書き出し、バランスのとれた考え方に導く「認知再構成法」を端末画面上で実行できる。これには入力した内容を解析して自然応答する独自の対話技術が使われている。
もう1つは問いかけに答えて取り組む課題を明確にし、順を追って解決策を対話的に練っていく「問題解決技法ツール」で、目の前の問題に対処する力をつけることを目的にしている。
さらに1つは、毎日の「活動」とその時の「気分」を記録し、1週間後に自分の活動と気分の関係を振り返ることができる「行動活性化ツール」だ。これは気分の改善に役立ち、生活自体を振り返って生活のリズム改善に役立つとされていて、NECソリューションイノベータが2015年12月に提供を開始する。
こうしたセルフサポートや、メンタルヘルス関係のEラーニングツールなどを自由に利用できるようにすることが、メンタルヘルス改善や悪化予防に役立ちそうだ。コストはかかるが、メンタル悪化による休職者の抑制につながれば、コスト以上の効果を得ることになる。またセルフチェックやセルフサポートが自身のメンタル改善につながることが実感できれば、従業員の意識も高まり、職場環境改善に向けた土台固めにつながることも期待できよう。
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