M2Mプラットフォームの国際標準「oneM2M」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)
第4次産業革命を支えるIoTの重要な要素技術であるM2M国際標準「oneM2M」。リリース1規格の全貌を徹底解説する。
通信のプロトコルは何?
デバイス、ゲートウェイ、サーバの相互の通信プロトコルは何かも気になる。ところが、oneM2Mのコンセプトは「特定通信技術やネットワークプロトコルに依存しない」ことだ。
プロトコルを全て規定するのではなく、コア部分だけを規定し、異なるプロトコルの利用や相互接続を可能にしようとしている。これにより既存のM2Mプロトコルへの対応が図れ、さまざまなサービスが容易にスタートできると考えられる。そのための手段として、現在、HTTP、CoAP、MQTTのプロトコルバインディングが規定された。
なお、デバイスからの通信ネットワーク(足回り回線)は携帯電話網やWi-Fiなど多様なネットワークが利用されることを想定し、サービスレイヤーは特定のネットワークに依存しない仕様になっている。
oneM2Mの今後の展開は?
oneM2Mは、リリース1ベースで「OM2M」など3つの実装が既にオープンソースとして公開され、リリース2ではデバイス管理を中心にした標準プロトコルである「OMA LightweightM2M」や、オープンソースのIoTフレームワークの「Alljoyn」、移動通信システムの標準化プロジェクト3GPPとの相互連携に向けた取り組みが進む。
特に韓国はoneM2Mを推す政府方針のもと、相互接続実証にとどまらず、機器認証制度の構築にも積極的だ。欧州ではフランスやイタリアが積極的で、ETSIのプロモーション活動でもoneM2Mが推される。
また、ホームオートメーションをはじめとするビジネス視点での垂直統合型のソリューションも動き始めた。日本ではまだ事例がほとんどない状況だが、工場やプラントの制御への適用、交通管制システムなど自動車関連のサービスなどが検討されている。
oneM2Mプロジェクトは既にリリース2に向けた議論が始まり、(1)セキュリティの機能拡張、(2)プロトコルバインディングの拡張(Web Socketの追加)、(3)サービスレイヤーのAPI(特定プログラミング言語のバインディング)、(4)oneM2Mの抽象化とセマンティクス対応などが主要なテーマになりそうだ。
なお、セマンティクス対応とは、データにXMLのタグのようにデータの意味を表すメタデータを付加することで、これができれば異なる情報ソースのデータの意味を機械が翻訳し、情報モデルやモデル言語が変わっても意味の互換性が保たれ、アプリケーション間でのデータの広範囲な相互互換性が実現しそうだ。
リリース2は2016年5月に仕様が固まる(凍結)予定となっており、その後リリース3の議論が始まり、さらにリース4へと続くロードマップが描かれている。リリース1で規定された基本機能に加えてさまざまな仕様が整うことで、実装例が増えていくことだろう。
関連するキーワード
3GPP(3rd Generation Partnership Project)
3G移動体通信システムの標準化プロジェクトとして誕生し、LTEやLTE Advanced(4G)の仕様策定も行ったグローバル組織(法人格は持たない)。米国のT1、欧州のETSI、日本のARIB、TTC、韓国のTTAが1998年12月に結成、後に中国のCWTSも加わった。現在は5G仕様の標準化に向けた議論も行われている。
「oneM2M」との関連は?
oneM2Mも法人格を持たないグローバルな標準化プロジェクトであるところが共通する。M2Mの足回りには携帯電話網が利用されるケースも多く、3GPP仕様との相互接続性は重要だ。
oneM2Mと3GPPの連携実証やより高度な連携研究がされ、例えば自動車の状態の情報(エンジン停止中か走行中かなど)を収集して、停車中には自動車がいる特定のセル(携帯電話基地局)だけにページング(一斉呼び出し)して隣接したセルでは行わないように制御してコアネットワークの負荷を低減するといった技術が提案された。
セマンティクス
データの「意味」を表す言葉。データの形式や構造はシンタックスというが、それを規定しただけでは、データのどの部分が何を表すかは分からない。データを受け取る側が何ビットめから何ビットめまでが○○を表すという共通ルールを知っていなければならない。一方、XMLではタグ(メタデータ)を使ってデータに意味を付与することができ、受け取る側はタグの意味を理解して適切な処理ができる。
「oneM2M」との関連は?
リリース2のテーマの1つとなりそうなのがM2Mデータにメタデータを付加してセマンティクスをデータ自身に持たせる試みだ。XMLが多様なシステムとのデータ相互利用に用いられているように、業種や業界を超えるような広がりを持つM2Mの相互接続性をもたらすかもしれない。
AllJoyn
AllSeen Alliance(非営利団体)が推進するIoT規格。フレームワークがオープンソース製品として提供される。2009年から米Qualcommが開発に取り組んできた。AllJoynフレームワークを利用することにより、デバイスの違いを乗り越えてIoTサービスが相互接続可能になる。これにはネットワークレイヤーは規定されておらず、Bluetoothなどの既存通信手段が利用される。
「oneM2M」との関連は?
oneM2M仕様にのっとりM2Mの共通機能を提供するプラットフォームがM2Mシステムの相互接続を容易にするところが似ている。こちらはサービスレイヤーを規定するが、ネットワークレイヤー、アプリケーションレイヤーの一部を含む。AllJoynなどのIoT規格のデバイスとoneM2Mデバイスとの相互接続、運用の実証など連携への取り組みが進められている。
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