大予想2020年、統合運用管理はどうなっている?(2/3 ページ)
ビッグデータやAI、IoTといった新技術がシステム運用管理にどのような影響を与えるのか。今後続々と実用化されるであろう先端技術を取り入れた統合運用管理製品の未来予想図を描いてみる。
ビッグデータ分析を応用した「障害の予兆検知」
こうした製品群は、単にイベントログ情報を一元管理したり、参照、検索のインタフェースを提供したりするだけでなく、その内容を分析して問題の原因特定に役立つ知見も提供する。ここで使われているのが、大量データの高速処理、分析の技術だ。
例えば、システム全体の構成情報を基に異なるサーバやネットワーク機器、ソフトウェアのログ情報の間に関連性を見いだし、あるコンポーネントの障害が他のコンポーネントやアプリケーション、業務に及ぼす影響を即座に割り出して提示する。そのためシステム管理者は、あるシステム障害が起きた際にその影響範囲を即座に把握して適切な対処を施せる。
ただし、ビッグデータの真骨頂はこうした“静的な”データの解析だけではなく、過去に蓄積された大量のイベントログデータに対して、複雑なアルゴリズムを駆使した分析処理を極めて手軽に行える点にある。
例えば「ある機器でこのようなイベントが上がると同時に、別のサーバでこのようなイベントが上がった場合には、このような障害が起こりやすい」といったように、異なるシステムのイベント同士の相関性を過去のデータの中から見いだし、それを基に現在差し迫っている障害の予兆を検知するといった具合だ。
あるいは、ある測定値の過去の動向やパターンを学習し、それと比べて現在の測定値がどれぐらい離反しているかによってシステムの異常(あるいはその予兆)を検知するという技術も実用化されつつある。現在、統合運用管理製品を提供するベンダー間で、こうした「障害の予兆検知」技術の研究開発競争が活発化しており、その成果が徐々に製品に反映されつつある状況だ。
この障害予兆検知の精度をいかに上げていくか。あるいはその使い勝手やコストパフォーマンスをいかに高めていくかが、今後の統合運用管理製品のトレンドの1つになると予想される。近い将来には、現在よりさらに高度で高速なビッグデータ処理の技術が適用されるだろう。
今後はAI技術を応用したより高精度な予兆検知や自律化に期待
また、AI(人工知能)技術の応用も徐々に始まっている。例えば、機械学習の機能を使って過去のシステム障害のパターンを詳細に分類することで、現在のシステムの動作状況をリアルタイムに、かつよりインテリジェントに認識、解釈できるようになるかもしれない。そうなれば、現在よりはるかに高精度な予兆検知が実現するだろう。
ちなみに予兆検知の技術は、システムの安定稼働やサービスレベル向上に寄与するだけでなく、システム運用の自律化、自動化を進める上でも欠かせない技術になる。今後は、障害の予兆を管理者に通知するだけでなく、障害の兆しを検知したツールが自律的に予防策を講じ、人が介在せずとも勝手にシステムを安定稼働させてくれるような世界が実現するかもしれない。
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