既存光ファイバーの10倍以上の伝送速度「マルチサブキャリア光送受信」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)
基幹ネットワークの高速化が期待される中、1波長当たり1Tbpsを超える超高速伝送技術が登場した。既存速度のおよそ10倍を達成する。
マルチサブキャリア光送受信を実現した2つの技術進歩
この仕組みが実現できたのは、主に2つの技術進歩が寄与している。1つは、従来周波数チューニングが難しかった光源の進歩により、精度の高いコントロールができるようになったこと。もう1つは光のスペクトル波形(通常はすそ広がりになって幅をとる)の整形技術の進歩で、急峻(きゅうしゅん)に立ち上がる波形への整形(すそ広がりを抑え、幅を狭くする)が容易になったことだ。
理論上はこれだけで速度向上が見込めるのだが、現実の光ファイバーにはひずみもあり、介在する各機器にも動作に微少な誤差がある。そのため、そのままでは送信されたそれぞれのサブキャリアが受信側に届くまでの波のタイミングが異なり、データ損傷を引き起こしてしまう。サブキャリアを利用した高速化技術は他機関でも研究や実証実験が行われているものの、多くのサブキャリアを詰め込むことができずにいたのはこの課題が解決できなかったからだ。
課題解決のために、三菱電機では各サブキャリアにパイロット信号を付加して送信する技術を開発した(図5)。受信側でいったんはタイミングがずれた状態のサブキャリアを受け取り、後段の信号処理モジュールにより、パイロット信号を基準にタイミングを正確に補正できるようにしたのである。
多数のサブキャリアによる伝送を、理論だけでなく、実際に装置を開発し、実験によって実証したのが今回の発表の重要なポイントだ。
また、伝送速度の向上により、送受信器の数を減らせるところにも注目したい。従来技術で1Tbpsを実現するためには、例えば100Gbps対応の送受信機を10組用意しなければならないが、マルチサブキャリア光送受信技術を使えば1組で済む。現在の製品でもそうだが、信号処理などの多くの関連部品はLSIワンチップに集積可能だ。チップ数が少なくなる分だけ消費電力が削減でき、機器筐体もコンパクトにすることができる(図6)。
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