ソフトウェア定義型ストレージ(SDS)の利点とは?:KeyConductors(1/3 ページ)
SDSを分かりにくくしている理由の1つは、製品によって特性や用途が異なっている点だ。ITインフラの運用管理へのアプローチに注目するとスッキリする。
ここ数年、ソフトウェア定義型ストレージ(Software Defined Storage:SDS)が注目を集めている。SDSの利点は、ストレージをハードウェアとしてではなく「ソフトウェア」として扱える点にある――といわれても、すぐにはピンとこないのではないだろうか。ユーザーの視点からすると、既存の「何か」との違いが分かりにくい。
そもそも、ソフトウェア定義型○○とは何か?
「ソフトウェア定義型○○」といわれるITソリューションは、特性によっていくつかの種類があるが、いずれもが、繰り返し発生するインフラ調達と設定、管理の手間を効率化することを目的に、物理的な計算機資源にレイヤーを用意して抽象化し、「リソース」を運用管理の単位として扱えるようにする点が特徴だ。インフラ担当者は個別のシステムごとの見積もりをせずにまとめて物理リソースを調達でき、システム開発部門は、インフラの物理構成を知らなくても新しい計算機資源を調達できるようになる。
「ソフトウェア定義型」などと表現しているが、実のところ導入する側から見ていままでのITインフラと最も異なるところは、「ソフトウェアか」という点よりも「安く早く楽に管理できる」という点にある。サーバ仮想化技術などを応用したクラウド型の自動化されたITインフラ運用管理が注目されているが、SDSはその文脈で注目されているといえる。ここでの「クラウド型の自動化されたITインフラ運用管理」とは、およそ次のような特徴を備えている。
- ユーザーや開発者は欲しいときに欲しいだけのリソースを獲得できる
- 運用者は開発案件ごとの個別対応が不要になる
- 運用者はリソースの管理に注力でき、余剰リソースを柔軟に振り分けられる
- 運用者は案件によらず、標準化したシステム運用管理ができる
SDSの適用領域は製品によって異なる
「ソフトウェア定義型○○」を整理したところで、ソフトウェア定義型ストレージ=SDSについて見ていこう。SDSを分かりにくくしている理由の1つに、製品によって特性や用途が異なっている点が挙げられる。
SDSを名乗る製品には、既存の物理的なストレージ装置を抽象化して管理することを軸にする製品から、いわゆる「第3のプラットフォーム」のような新しい領域のデータを扱うのに適したものまでが混在している。「Amazon Simple Storage Service(S3)」のようなストレージサービスを自前で運用する場合に適した「Ceph」や「Cloudian」などの「ハイパースケール」と呼ばれるストレージソフトウェアもSDSに含まれる。その上、ソフトウェアのみを提供する場合もあれば、ソフトウェアとハードウェアを組み合わせたアプライアンス型で提供されるものもある。
どちらもSDSと呼ぶので混乱しやすいところだが、前述したように、ITインフラの運用管理に対する考え方の違いから見ていくと、どの製品も目指すところは運用管理の自動化や標準化だ。
SDSによって、ITインフラ運用者やストレージ管理者からするとオペレーションコストを大きく削減できる可能性がある。ストレージを「製品の箱」や個別のストレージOSなどから分離することで、将来的な調達計画で大幅なコスト削減を実現することも考えられるだろう。
例えば、ストレージOSが提供する運用管理向けのオプション機能が必要なためにハイエンド製品を購入していた場合は「システム更新でローエンド製品ないしホワイトボックス製品に置き換え、運用管理はSDS側の運用管理ソフトウェアに統合する」といった切り替えでコスト削減が可能になる可能性がある。
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