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AIを活用する次世代ERPの実力IT導入完全ガイド(2/3 ページ)

ビジネスのデジタル化が加速し、企業はより正確で素早い意思決定が必要となった。AIを活用する次世代型ERP製品として「HUE」と「SAP S/4HANA」を紹介しよう。

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人工知能搭載を掲げる「HUE(ヒュー)」

 ワークスアプリケーションズといえば、ERPパッケージ「COMPANY」で1100社以上の導入実績を持ち、ノーカスタマイズでの導入や無償バージョンアップの提供などで企業のITコスト削減に寄与してきた。そんな同社が次世代ERPとしてリリースしたHUEの開発は「処理速度を圧倒的に高めること」、具体的にはレスポンスタイム0.1秒の実現を目標とすることから始まった。

 一般的なエンタープライズ向けシステムの性能評価では、1秒以内のレスポンスタイムが標準とされる。だが、既にコンシューマーITの世界ではその10倍から100倍の速度で性能評価が行われている。また、ある研究論文によると「人間が一瞬だと感じる時間は0.1秒」ともいう。

 だが、一般的なリレーショナルデータベース(RDB)ではパフォーマンスに限界があり、0.1秒の世界を実現できない。そこでオープンソースの分散データベース管理システムであるCassandra(カサンドラ)を採用した。これはもともと大容量データを格納するためにFacebookで開発されたテクノロジーだ。DB自体を分散して並列処理を行うことで、RDBの約30〜50倍の性能向上を達成した。

 分散型DBの問題はデータの整合性、つまりトランザクション処理の前提となるACID特性をどう確保するかだ。そこで独自のトランザクション管理システム「Barbatos(バルバトス)」を開発し、分散環境におけるデータの整合性を保証した。

 さらに処理速度の高速化には、同じく独自開発の画面描画エンジン「Forneus(フォルネウス)」が貢献する。データ通信の方法に独自の工夫を凝らし、Webブラウザへの描画速度を従来の5倍へと高めた。このようなテクノロジーを駆使することで、HUEは0.1秒という応答速度を達成している。

人工知能がユーザー業務を先回りしてフォロー

 今後、知識労働は人工知能(AI)に置き換わっていくだろう。ワークスアプリケーションズでも同じ前提に立っている。つまり経理や労務管理などの処理プロセスを定型化できる業務はAIが代替するだろうということだ。

 HUEに搭載したAIは、エンドユーザーのインプットを学習する。いつ、どのユーザーが、どんな業務シーンで、どんな処理を行ったのかというシステム内に蓄積されたビッグデータを解析することで、ユーザーにより精度の高いサジェストを与える。例えば、承認すべき書類がたまっていたら優先順位を付けて自動選別を行い、マネジャーに対して“確認した方がいいですよ”と教えてくれるのだ。

 もっとシンプルにAIの搭載で大きな恩恵を受けることができるのが入力業務だ。ユーザーが一文字入力するだけで、過去に登録された情報から適切だと思われる候補が次々と提案され、それを選択するだけで業務処理が完結する。究極的にはエンドユーザーによるキーボードでの入力作業が限りなくゼロに近くなるという。

 HUEは、予測と提案、そしてこの2つを高度化するための学習という3つのプロセスをループさせ、エンドユーザーの「有用なパートナー」として機能することを目指したERPである。

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出典:ワークスアプリケーションズ

COMPANYからHUEへの移行は?

 既にCOMPANYを導入している企業にとっては、移行ロードマップが気になることだろう。ワークスアプリケーションズでは、国内外を問わずHUEへの移行は2020年をめどに終わらせることを打ち出している。HUEに搭載されたAIは、既存システムからのスムーズなデータ移行にも役立つという。

 だが、ユーザー企業側で留意しておくべきポイントもある。そもそもAIという技術は、学習ありきで効果も上がっていくものだ。移行時には既存システムと併存させる形でHUEを育てておき、どこまで学習させたタイミングでサービスインするかの決断がユーザー企業に求められる。さらには稼働後もHUEに学習させ続けるために、ユーザーが正しくシステムを使っていくことが求められる。単に以前のシステムと同じアウトプットが得られるだけでは、HUE本来のメリットは享受できないだろう。

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