強電気魚の電気器官をデバイス化した「シビレエイ発電」とは:5分で分かる最新キーワード解説(3/4 ページ)
シビレエイの発電器官を発電デバイスに応用した「シビレエイ発電機」が登場した。近未来の発電手法がいよいよ実現なるか。
発電機の作成と実験のプロセス
さて、田中氏らのチームの研究開発はどう進められたのだろうか。研究は6年前に着手された。当初は年に数匹のシビレエイを三重県伊勢漁港から仕入れた程度だったが、開発が本格化した2年前からは毎週3匹程度を業者から入手して利用した。実験は次のように行われた。
生体の発電性能測定
最初に取り組んだのは、捕獲後数日以内の新鮮なシビレエイへの圧迫刺激でどんな電気応答があるかの測定だ。電気器官の周辺に導電布を貼って電気を測定する仕組みを開発し、頭部を手で圧迫して測定したところ、10ミリ秒以下の短時間だがピーク電圧19ボルト、ピーク電流8アンペアを観測した。
LED点灯、コンデンサへの蓄電
同様の手法でLEDの点灯を確認し、コンデンサを利用した蓄電機構を加えたところ、長時間のLED点灯やミニカーの駆動ができ、電気器具として機能可能なことを確認した。
電気器官の発電性能測定
電気器官だけを取り出して人工脳髄液中で一時保存したあと、導電布で挟んで電極をつなぎ、「シリンジ針」と呼ばれる注射器のような道具を7本挿して、針先からそれぞれ0.25ミリリットルのアセチルコリン溶液(0.001mol/L)を一気に注入した。
すると1分以上の間電流が流れ、ピーク電圧91ミリボルト、ピーク電流0.25 ミリアンペアを記録した。シリンジ針の本数を20本に増やすと、ピーク電圧1.5ボルト、ピーク電流0.64ミリアンペアを測定した(図3、図4、図5)。シリンジ針とアセチルコリンという道具で、発電制御が可能なことが実証された。
シリンジ針とアセチルコリンを使うというアイデアがシビレエイ発電機開発の1つのポイントだ。アセチルコリンは神経のシナプスにイオンを出させるスイッチとして使われる物質である。神経回路でシナプスが他の細胞に情報伝達する仕組みを、電気器官相手に大規模に模倣して再現したわけだ。
この実証とともに電気器官を洗浄すれば繰り返し発電可能なこと、1日以上人工脳髄液に浸して保存しても発電量は下がるが発電はできることが分かった。確かに発電機としての機能があるということだ。
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