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災害の教訓を今こそ生かせ、強靭で柔軟なサプライチェーン構築すご腕アナリスト市場予測(5/5 ページ)

東日本大震災や熊本地震など、災害によるサプライチェーン断絶を防ぐための柔軟で強靭(きょうじん)なサプライチェーン構築の考え方を大解剖。

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物流インフラ被災リスクの軽減対策

 サプライチェーンには当然物流事業者も含まれる。そのリスク軽減のための施策も考えなければならない。

物流事業者の荷主との連携

 災害時の荷主、物流事業者共通の行動マニュアルを整備し、連絡体制を構築する。また代替輸送ルート、目標復旧時間などの取り決めを行う。

代替出荷の確立

 各物流センターごとに、出荷が不可能となった場合の代替出荷拠点を取り決めておく。また代替出荷の手順、納入先との連絡手段などを定めておく。

設備対策

 特に倉庫や工場では、現在労働力不足を反映して原材料、仕掛品、完成品などのマテリアルハンドリングが自動化されているケースが多く、その設備が損壊すると影響が大きい。東日本大震災では立体自動倉庫が稼働しなくなった事例がある。

 操業に支障が出るのはもちろん、地震の際には高い位置ほど大きく揺れるため、荷崩れが起きて落下すると従業員に危険がおよび、物品や設備の損壊も起きやすくなる。そのために電源設備が破壊された例もある。建物の免震だけではなく、棚の転倒防止、高所からの落下防止対策(物品のストレッチ梱包(ラッピング)、カゴ車、カゴパレットの採用など)、設備防護対策(配線など)が必要になる。

 ちなみに、都内の冷凍倉庫の約60%が築30年を超えている。もし大地震で倒壊するようことがあれば、全国的に展開するコールドチェーンが断絶する可能性が高い。早急に耐震や免震設備の追加、建て替えが望まれる。

取引先、消費者被災時の対策

 自社内、サプライチェーンだけでなく、取引先や消費者の被災状況にも目を配り、社会的責任を果たせるような対策も取っておくべきだ。

災害時需要変動への対応

 小売業は被災地に支援物資を届ける使命を担っており、消費者の購買行動は時間の経過とともに大きく変化するため、その変化を踏まえた供給を行えるような柔軟な供給プロセスを確立する。

被災住民が必要としているものを把握する仕組み

 被災地店舗の在庫状況や被害状況に加え、取引先の在庫情報、物流インフラの被害状況が、自社、店舗、取引先、公共団体、行政などあらゆる関係者で情報共有できる社会インフラを整備する。

 これに関連する先進的な事例として、小売大手のイオンによる「BCPポータルサイト」構築が挙げられよう。これは加工食品メーカーなど50社と提携し、災害時にメーカーから直接出荷できる商品の情報を共有、イオングループの物流機能を利用して迅速に被災地への物品供給を行う仕組みだ。

 以上、今回は災害時のBCPを念頭にしたサプライチェーンの在り方、SCMの方法について述べた。災害対応は通常の業務オペレーションとは異なる部分が多いため、ERPツールなどを使ったシステム化にはなじみにくい。

 とはいえS&O(Sales and Operation Planning)ソリューションによる、災害が与える企業収益へのインパクトのシミュレーションや、IoTを利用した在庫、物流管理、デジタル情報共有ツールなどのIT技術は十分に援用可能だ。いつ発生するか分からない大災害に備え、BCPの役に立つ強靭で柔軟なサプライチェーン再整備を図るために本稿がヒントになれば幸いだ。

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