建築IoT「知能住宅」が誕生間近、自分で痛みを訴える家とは:5分で分かる最新キーワード解説(3/3 ページ)
耐震安全性向上と被災家屋の復旧早期化を目的とする「知能住宅」が登場した。産官学連携による建築物に対するIoT応用はいかに?
「知能住宅」のこれから
これらの要素技術を統合したものが知能住宅だ。現在、大分県国東市の協力により、実地での技術検証ができるモデルハウスの建設を計画する。
図4のように試験体模型を利用した実証研究は進められたが、今度は実際の建物での実験が重ねられる。2017年夏頃の完成を目指す実験用の建物は、図5の模型に見るような茶室だ。
建物を利用したデータにより基礎研究をさらに進めるとともに実地での検証を行い、次には都市レベルのネットワークを想定したテストベッドとしての施設、設備を構築する考えだ。現在は、国東市の地元建築業者との協力体制ができ、既に建築材製作や加工業者、計測機器メーカー、設計事務所、ゼネコンとの協力も視野に入った。
伊藤氏によると基礎研究とネットワーク構築にそれぞれ2〜3年の時間は必要だが、研究成果を目に見えるようにするには「2020年が1つの目安」となる。
知能住宅の実現は大きな社会的、経済的意義があるが、研究プロセスを通して建築関連の計測の方法に新展開=技術革新の可能性も期待できる。最先端の計測技術、環境発電、小電力無線ネットワーク、AIを利用した被災度判定と、多様な技術を統合した建築IoTの今後に注目したい。
関連するキーワード
環境発電
環境内に存在する比較的小さなエネルギーを電力に変換すること。主に光、熱、電磁波、振動などのエネルギーを効率的に集めて電力にする。中でも電磁波や振動などのような微小なエネルギーを対象にした技術は「エナジーハーベスト」とも呼ばれる。
常時メンテナンスができない場所、広範囲に設置された大量のセンサー、広い圃場の環境計測のためのセンサーなどのエネルギー源として一部利用され、今後応用範囲が広がることが期待される。
「知能住宅」との関連は?
住宅などの建築物に備えたセンサーにより建物の劣化や損傷を知らせるのが知能住宅だ。外部からの電力供給や交換が必要な電池の利用ではなく、独立してセンシングと通信が可能なデバイスのエネルギー源として、家屋内に常に存在する熱や振動のエネルギーの利用を考えた。特に圧電デバイスを利用した振動発電は有力な技術の1つ。
圧電デバイス
圧力を加えると電力に変換するのが圧電デバイス。環境内の振動で発電する環境発電の1技術として世界的に研究開発が進む。発電への応用例では、床に敷き詰めた圧電デバイス上を人が通ると照明が灯る発電床などの例があり、道路や橋梁などの交通振動での発電なども研究される。
「知能住宅」との関連は?
地震などによって建物に力が加わる部分に圧電デバイスを仕込むと、揺れの状態などが計測できる。また、建物の微細な振動によってセンシングやデータ送信が行える程度の発電が行えると見込まれる。
Wi-SUN
Wireless Smart Utility Networkの略語。最大1キロ弱程度の距離で相互通信を行う小電力無線通信規格。NICTの主導で開発され、他の近距離無線規格よりも小電力で長距離のデータ伝送ができ、雑音にも強い特長がある。
「知能住宅」との関連は?
圧倒的な小電力性を生かし、環境発電によるミリワットレベルの電力で信号送信可能なセンサーの実現のために最有力な通信規格として検討される。
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