IoTネットワークの新選択肢「SIGFOX」とは?:5分で分かる最新キーワード解説(2/3 ページ)
省電力で広い版をカバーするIoTネットワークに新たな選択肢「SIGFOX」が登場した。既存方式との違いやそのメリットを詳しく解説する。
LPWAの中でもSIGFOXが得意とする領域は?
国内のLPWAサービスが全て出そろっておらず、公表、報道されている各種スペックにもバラつきがあるが、図2のLPWAに分類される3つのネットワークについて、SIGFOXを中心に少し詳しく見てみよう。
伝送距離
SIGFOXが30キロ程度のエリアをカバー可能なのに対し、LoRaWANはその半分以下、11キロ程度である。どちらも回折性が高く到達距離が長い920MHz帯(サブギガ帯)を使っているのだが、SIGFOXの場合は極めて限られた帯域幅(100Hz)を利用するのが特徴で、混信に強く、マイナス142dBmという微弱な電波強度でも十分に有効な信号が受信できるという。これが伝送距離の長さにつながり、基地局設置数の低減にもつながるとKCCSは説明している。NB-IoTはLTEの帯域幅を絞り込んだ仕様で、伝送距離は15〜20キロといわれている。
データレート
NB-IoTが最大100kbps、LoRaWANが最大10kbps、SIGFOXは100bps。SIGFOXは他の方式よりもずっと帯域幅を狭くしてデータレートを落とすことにより、伝送距離を伸ばしているといえるだろう。
周波数帯域と無線局免許
SIGFOXとLoRaWANは920MHz帯域を利用し、無線局免許が必要ない20mW以下の送信電力での運用を行う。NB-IoTは免許事業者が提供することになる。
国内サービス業者
SIGFOXはKCCS、LoRaWANはソラコムが同社のIoT向けSORACOMプラットフォームを拡張しての提供を図っており、ソフトバンクは2016年9月にサービス提供開始を発表している。NB-IoTはLTEキャリア各社が提供予定。なお、LoRaWANは非営利団体のLoRa Allianceによるオープン仕様であるため、必ずしも事業者のサービスの利用に限られるわけではない。
カバーエリア
LTE帯域を利用するNB-IoTは既存基地局が活用できるのでカバーエリアは短期間で広くなる可能性がある。SIGFOXはKCCSが基地局設置を進めており、2017年3月までに東京、川崎、横浜、大阪をカバーする。その後ニーズに合わせて政令指定都市含む36都市(予定)を2018年3月までにカバーしていく計画だ。LoRaWANは現在のところ特定自治体内や工場、農場・牧場などの比較的限られたエリアでの実証実験が進んでいる状況だ。
まとめると、SIGFOXは低速で少量のデータを送信するデバイスに適し、今後の数年で大都市圏での利用が可能になる。また他のLPWA方式よりも広いエリアをカバーし、基地局数も少なくできる。加えて言えば、処理するデータ量が少ないことから通信モジュールも基地局もハードウェアはシンプルにでき、低コスト化が可能と考えられる。ユーザー側でゲートウェイ装置を用意する必要はなく、全てを事業者に任せられる。
LoRaWAN規格とは異なり非公開の独自仕様であるため、事業者のサービスを利用するしかないが、その代わり、グローバルなSIGFOXクラウドのサービスをどこでも利用することができ、地域的に限定されないシステムが比較的容易に構築可能になる。
KCCSのSIGFOXサービスのイメージは図3のようになっており、ユーザーはIoTデバイスを用意して設置するだけで、情報はSIGFOXクラウドに保管される。ユーザー側環境ではREST APIを利用して情報を取り出し、通知や分析などの情報活用が可能になる。ログ取得や保管、デバイス管理もクラウドサービスとして利用できるので、低コストにIoTサービスをスタートできる。
ただし制約もある。電波法上の制限により通信は上り方向(送信)だけに限られることと、SIGFOX仕様上の制約により1日の通信回数は最大140回まで、伝送可能な正味の情報量は1回当たり12バイトに限られる。よって多くの情報量を数分単位で常時収集するようなニーズには不適だ。だが、海外での実績は既に豊富にあり、活用可能なユースケースは幅広い。なお、下り方向(受信)の制約については電波法改正の要望が挙がっており、免許不要での実現が待たれるところだ。
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