外国人観光客の動きをどこまで追えるか? 40万カ所に設置されたWi-Fiのログを可視化(2/3 ページ)
ソフトバンクが設置する全国40万カ所のWi-Fiアクセスポイントのデータ活用が本格始動。「ソーシャル・ビッグデータ」はどこまで使えるのか。
Wi-Fiデータを利用する「群流の可視化」
続いて、Wi-Fiアクセスポイントのログデータの分析について説明された。これは、全国で約40万カ所に設置されたアクセスポイントから時々刻々と収集されるデータが、NIIのシステムに逐次蓄積され、リアルタイムな分析が可能になる仕組みである。しかし、このようなデータの取り扱いにはブライバシー保護の工夫が欠かせない。これに関しては次のような配慮がなされている。
- サービス利用開始前にログデータの利用に関わる同意を取得し、事後にオプトアウトの機会がある
- ID情報は複数回の匿名化処理を行い、加工済みデータのみを分析する
- エリアを郵便番号区分単位にする
- 時間は1時間を単位とする
- 対象デバイスは10個を1つの単位として扱う
生のログデータから特定個人に行き着くことは不可能ではないので、プライバシー保護の観点からこのような仕組みが必要になる。これは総務省の「位置情報プライバシーレポート」にのっとった対応であるとのことだ。
こうして得たデータの分析により、外国人観光客がどこに来て、どこに移動したのかを「群」単位で可視化することに成功した。実証実験は2月に開催された東京マラソン2017で行われた。図3はマラソンコース(オレンジのライン)の付近にいるWi-Fi利用者を地図上にプロットしたものだ。1つの人形アイコンが10人(デバイス)を表す。この人形アイコンがどのように移動するのかを、アニメーション付きで観察できる。
例えば10時から16時までマラソンコース周辺で感知された人の群れが、16時以降23時ではどこで感知されるかの観測が可能だ。そのデータから、例えば「宿泊地として使われるのは新宿、上野、池袋が多い」というような事柄の推定が可能になる。
ビッグデータからさまざまな事実を迅速に可視化
このシステムのデモを披露した同チームの福崎昭伸特任研究員は、「同じデータの加工次第でさまざまな事実が推定できる」とし、その例を示した。図4は、マラソン当日と翌日に東京から離れた外国人観光客の動態を可視化したものだ。東京にとどまる人が多い一方、近隣3県への群流もあることが分かる。
また、東京マラソンの日に東京にいた人が、その前にどこにいたか、その後はどこに行ったかを県単位で明らかにする可視化例も示された(図5)。神奈川県から来て、大阪に移動する人、あるいはその逆のパターンが多いことが一目で分かる。
さらに比較的長期間のデータ分析の例も紹介された。図6は2月に東京に来た外国人観光客の全国への移動状況を可視化したものだ。
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