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第1回 ワークスタイル“改善”で終わってない? 本当の「変革」に必要な3つの要素とは成功事例から考える「働き方変革」(2/3 ページ)

モバイルやWeb会議、仮想デスクトップを導入したものの、ワークスタイル“変革”ではなく“改善”で止まっていないだろうか。問題を根底から解決し、働き方を変革する方法を紹介する。

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ワークスタイル変革を進める上での課題

 このようにワークスタイル変革は大きなメリットがある。一方で、ワークスタイル変革を進める上での課題も存在している。それは、ワークスタイル変革に伴って管理職や一般従業員が抱く不安と、セキュリティへの課題だ。

管理職や一般従業員の不満

 ワークスタイル変革を実現するには「いつでも、どこでも働くことができる環境の整備」が必要になる。それは管理職の「部下の業務状況が見えないし、本当に生産性を向上できるのか」という不安と、一般従業員の「本来の勤務時間や勤務場所に関係なく、いつでもどこでも働かされてしまい、私生活が犠牲になるのではないか」という不安を伴う。

 管理職の不安は、従来の手法をITツールに置き換えることと、管理職に対する社内研修を地道に実施することで拭い去ることができる。

 オフィスに出社することを前提とした従来の働き方であっても、部下は常に管理職の目の前にいるわけではない。管理職は、日報やホワイトボードで部下の業務を間接的に把握しているケースが多いのではないだろうか。それならばCRM(顧客関係管理)やプロジェクト管理ツールで部下の業務を見える化し、チャットやビデオ会議で管理職と部下のコミュニケーション環境を整えればよい。

 「本当に生産性が向上するのか」という不安に対しては、会社全体で新しいワークスタイルの実現に向けた方向性を定めた上で、繰り返し管理職へ向けて、部下の管理方法やITツールの使い方についてのレクチャーをすることが大切だ。そこで「ITツールをどのように活用すれば生産性が向上するのか」「どのように部下を管理すればいいのか」など管理職が感じている不安を地道に拭い去るとよい。

 一方で、一般従業員の不安を解消するには「いつでもどこでも働けることは、決して私生活が犠牲になるわけではなく、むしろ従業員と家族の将来につながる」と理解してもらうことが大切になる。例えば、親の介護や子育てなどで出社できない場合でも、ITツールを活用することで自宅から仕事ができる。ITツールを使い、業務を効率化できれば、残業時間が減って、家族との時間を増やすことが可能だ。

 また企業にとっても将来を考えた場合、ワークスタイル変革に取り組むべきである。なぜなら少子高齢化によって働く世代が減り、介護する世代が増える中、競争力を維持するためには生産性を向上しなければならないからだ。そのため、従業員一人一人が働き方を変革し、生産性を高め、創造性を発揮できる環境を整備しなければならない。

セキュリティの不安

 従業員が外出先や自宅で仕事をできるようにする上で、企業が心配するのがセキュリティだ。従業員の私用のクライアントPCやスマートフォンがウイルスに感染したり、盗難や紛失したりして、業務データが漏えいしたら、企業として信頼を大きく失うことになる。

 情報漏えいに対しては、画面転送型で業務データがクライアントPCに残らないデスクトップ仮想化や、遠隔操作でデバイス内のデータの削除や使用可能なアプリケーションを制限できるEMM(エンタープライズモビリティ管理)を用いたりすることで対策できる。これらの技術を活用することで、企業が業務データを制御できるセキュアなBYOD(私物端末の業務利用)を実現可能だ。従業員が使い慣れたデバイスを利用できるようにすれば、生産性の向上が期待できる。

 近年、会社が利用を許可していないチャットツールやオンラインファイルサーバなどを従業員が自身の業務効率化のために業務で使用する「シャドーIT」が問題となっている。このリスクから、シャドーITにつながり得る便利なツールの使用を禁止している企業は少なくない。しかしこの方法は、業務効率の低下や、さらなるシャドーITの増加につながりかねない。

 シャドーITに対して効果的だと考えられる対策は、従業員が便利だと思うような最先端のツールをいち早く社内に導入し、従業員が未許可ツールを使う必要がない状況にすることだ。従業員は誰でもリスクを取って仕事をしたいわけではないため、自然と未許可ツールから会社管理のツールへ移行していくと考えられる。

 このように、ITツールの活用によってさまざまな課題を解決し、新しい働き方の実現を大きく加速することができるのである。

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