検索
連載

移動体の位置情報の活用標準「OGC Moving Features」とは?5分で分かる最新キーワード解説(4/4 ページ)

移動体の状況が把握できるオープンな地理空間情報記述とアクセス方法を定めた国際標準仕様「OGC Moving Features」とは一体何か?

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

スポーツ選手の動きの分析

 少々変わったユースケースとして、スポーツ選手の動きの分析にも有効と考えられている。図8のように、サッカー選手がボールのパスを受けてからドリブルしてシュートやパスをする状況を、数値的に記述することができる。これはスポーツ科学やスポーツ戦術研究、あるいはスポーツ鑑賞にも貢献しそうだ。

サッカー選手の動きの把握と分析の模式図
図8 サッカー選手の動きの把握と分析の模式図

 これらのほか、例えばGPSの他に複数のレーダー情報を利用する移動体(航空機や自動車など)の運行管理や、地図上の犯罪者、犠牲者、警察の動きのシミュレーションによる犯罪パターン予測、スマホGPS情報などを利用した交通調査、そしてもちろん津波などからの避難シミュレーションなど災害対応・防災のためのシステムなど、各種のユースケースが提案されている。また自動車の自動運転のインフラとしても活用可能なものになりそうでもある。

 今のところ移動体の移動履歴に関する標準ができただけの段階で、実際のGISや防災システムなどへの実装はこれからだ。準天頂衛星「みちびき」の本格運用が間近に迫り、数センチ単位での測位が可能になりそうな今、地理空間情報のますますの活用により、多様なビジネスチャンスが生まれそう。IoTの進展にも「OGC Moving Features」は一層貢献しそうだ。

関連するキーワード

OGC標準

 代表的なOGCのデータ交換標準には、ISO19136:2007・JIS X 7136:2012としてリリースされたGML(Geography Markup Language/世界初の地理空間情報の国際標準)、Googleの独自仕様をOGCで議論してリリースしたKML、都市の3D地理空間データ交換形式であるCityGMLがある。またWebサービスインタフェースとして地図配信のためのWMS(Web Map Service)やWFS(Web Feature Service)、衛星画像などの画像データ配信サービスのWCS(Web Coverage Service)、メタデータの登録・収集・検索サービスのCSW(Catalog Service Web)などがある。

「OGC Moving Features」との関連は?

 上記の各種標準と並び、移動体に関する移動履歴の記述とデータアクセスを規定したのが「OGC Moving Features」。2015年2月に「OGC Moving Features Encoding」が、2017年3月に「OGC Moving Features Access」が標準としてリリースされた。

ISO 19141:2008

 最も権威ある国際標準化団体のISOが標準化した「地形情報 - 移動フィーチャのスキーマ」。移動体の地理空間情報の取り扱いに関する標準規格だが抽象的なもので、システム実装のためには具体的なデータ交換方法の標準化が必要。

「OGC Moving Features」との関連は?

 ISO 19141:2008標準のデータモデルなどをベースにし、時間と空間の2つを指定して移動体の移動状況を記述可能にして活用しやすいアクセスインタフェースを定義したのが「OGC Moving Features」。

GIS(Geographic Information System/地理情報システム)

 GISは2次元あるいは3次元の地理空間情報と、各種のモノや人の位置情報、あるいは統計情報、地名情報、画像情報などのさまざまな情報を重ね合わせて地図として可視化したり、シミュレーションを行ったりできるシステムのこと。日本では政府が特に災害対応や防災対策のために重要視しており、国や地方自治体がGISを導入、高度情報通信社会のための重要ツールとして位置付けている。民間でも地図と各種情報を組み合わせたサービスはB2BでもB2Cでも盛んに登場しており、ビジネス上の優位性を獲得するためのツールとみなされるようになってきた。

「OGC Moving Features」との関連は?

 各種GISの位置情報ソースになるサービスは多様だが、サービス業者によってデータ形式が違い、簡単にはシステム横断的なデータ分析ができない。特に移動体の移動状況のデータについてはこれまで一部しか標準ができていなかった。「OGC Moving Features」はその不足分を補い、複数ソースからのビッグデータの統合と分析を可能にし、さらにGISの活用領域を拡大するものと期待される。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る