クラウドカメラが窃盗の瞬間をとらえた、工事現場が抱える課題を大幅改善:事例で学ぶ!業務改善のヒント(1/3 ページ)
建設現場の人手不足が騒がれているが、実はもう1つ大きな課題がある――資材や工具の盗難だ。中堅ゼネコンの今西組はあるITを導入したことで、犯罪の瞬間を捕えることに成功した。そのリアルな様子を紹介しよう。
建設現場の人手不足が騒がれているが、実は現場にはもう1つ大きな課題がある。資材や工具の盗難だ。防犯カメラの設置が現場の記録や盗難の抑止に有効な手だてとされてきたが、従来の防犯カメラ・録画装置システムは多額の費用と設置の手間がかかり、短期間で現場が変化する建設業界には、最適とは言い難かった。
しかし、最近はクラウド型のカメラが開発されたことにより、そのハードルは随分下がってきている。近畿圏と首都圏で事業を展開するゼネコンの今西組ではクラウド型カメラを導入したことで盗難現場を記録するという大きな成果を得た。さらに、現場管理や人材採用などの分野でも、思わぬ副産物を得られたという。
盗難によるロスを最小限に抑えたかった
今西組は、創業120年を超えるゼネコンだ。2017年5月時点の従業員数は70人。大阪に本社を置き、近畿圏と首都圏を中心に事業を展開する。老人ホームや保育園など公的な施設の施工を数多く手掛けており、官公庁・地方自治体関連の売り上げは約5割に及ぶ。また、銀行などのように高度なセキュリティが求められる案件を請け負うケースも多く、官民からの信頼度が高い企業といえるだろう。
そんな同社では、他の建設会社と同様に「防犯対策」に悩んでいた。専務取締役の今西良介氏は、こう語る。「夜から早朝にかけての工事現場は、人の出入りがほとんどなくなり、とても無防備な状態になります。現場には電線や鋼管といった資材や高価な電動工具が多いが、職人が毎日持ち帰れないものもあるため、置かれたままの資材や工具が盗まれるケースは、決して珍しくありません」(今西組専務取締役・東京支店統括 今西良介氏)
こうした盗難の被害額は、数百万円に達することもあるという。また、夜間に資材や工具が盗まれると、翌日以降の作業に影響が出て、工期の遅れなどをもたらすため、被害は甚大になる。
「当社でも以前から、こうした盗難のリスクをできるだけ抑えたいと考えていました。ただし、だからといって夜間警備員を設置するのは、コスト的に現実的ではありません。そこで、防犯カメラの設置を以前から検討していました。ただ、既存の防犯カメラシステムには不満が大きかったですね。カメラ自体の値段は高いし、そのためのストレージなどを設置するのに手間も時間もかかりました。そのため、正直にいうと、ダミーを置いて犯罪の抑止を試みていました」(今西氏)
今西氏がクラウド型防犯カメラシステムの「Safie(セーフィー)」の存在を知ったのは、2016年夏のこと。今西氏の高校時代の友人がSafieを開発したセーフィーの代表取締役である佐渡島隆平氏と知り合いで、話を聞いたことがキッカケという。
「導入コストは、カメラ1台当たり15万円程度。運用コストは、録画データを14日間保存できる基本プランで、カメラ1台当たり1650円/月額。これは、従来の防犯カメラに比べて、圧倒的に安い水準で、2016年の9月には各現場で使うことを決めました」(今西氏)
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