クラウドカメラが窃盗の瞬間をとらえた、工事現場が抱える課題を大幅改善:事例で学ぶ!業務改善のヒント(3/3 ページ)
建設現場の人手不足が騒がれているが、実はもう1つ大きな課題がある――資材や工具の盗難だ。中堅ゼネコンの今西組はあるITを導入したことで、犯罪の瞬間を捕えることに成功した。そのリアルな様子を紹介しよう。
現場管理や人材採用などでも思わぬ活用法
防犯のためにSafieを導入した今西組だが、使っているうちに思わぬ活用法が見えてきた。その1つが、「現場管理」である。
「工事現場には、さまざまな資材や大型工具が置かれている上、協力会社や職人さんの車も多数入ります。これらを未整理な状態で放置すると、現場の動線が悪くなって作業効率が落ち、事故などの危険性も高まります。しかしSafieを使えば、本社など遠隔地にいても現場の様子が手に取るように分かります。どこからでも、現場のスタッフに対して適切な指導ができるのです。
ただし、現場スタッフの中には、カメラで常時監視されていることに抵抗のある人もいます。また、現場に直接関係のない上司からあれこれ指示されると、現場の裁量が小さくなったり、スタッフのモチベーションが下がったりする危険性もあります。このあんばいが難しいところで、当社では各現場の映像を見る権限を、現場と直属の工事部長だけに限定しています」(今西氏)
もう1つの意外な活用法は「人材採用」だった。「たとえ建築系の学部・学科で学んでいる学生でも、『今西組』と聞いてピンと来る学生は多くありません。会社説明会などで当社の魅力を伝えようとしても、いまひとつピンとこない方もいました。そこで、Safie導入後、会社説明会で学生に撮影した現場の映像を見せたのですが、それが大好評だったのです。最大の理由は、ゼロから建築物を作る仕事の楽しさ・やりがいが、リアルな映像を通じて伝わったことだと思います。さらに、現場で働いている社員に、学生から直接質問できる時間を設けたところ、『リアルな仕事内容が分かった、現場で働いている人に直接質問できて良かった』という反応をたくさんいただきました」(今西氏)
学生にはいまだメジャーな大企業が人気で、中堅企業が学生を獲得するには相当の工夫が必要だ。自社の魅力を打ち出す方法として今西組のような分かりやすい仕掛けは効果的だったのだろう。
同社はSafieを教育に使う道も模索中だ。録画された映像を編集すれば、作業の流れが分かる教材がすぐに作れるだろう。また、現場に出入りする車の整理などにも活用できないか検討中だ。今西氏は、Safieを使って業務効率改善や安全性向上などが図れないか、現場主体で検討してもらっているとのことだ。
業務効率を高めるため、さらなるIT化を進める
今西組では、今西氏が主導してSafie以外にもIT関連製品を幾つも導入している。背景にあるのは、建設業界をよりよくしたいという思いだ。
「建設業界には、古い習慣がたくさん残っています。でも、今のままではいけないと思うのです。もっと生産性を上げ、短い時間でたくさんの利益が得られる体制に変えていく必要があります。そのためには、ITの積極導入は欠かせないというのが、私の考え方です。
将来はSafieに画像認識機能が加わるといいですね。例えば、現場に出入りした車のナンバープレートを認識して記録する、置かれている資材の数量を自動的に調べるなどの機能が追加されれば、私たちの仕事はさらに効率がアップすると期待しています。そのためには、代表の佐渡島さんにがんばってもらわなきゃ(笑)」(今西氏)
建設業はサービス業。それが、今西氏のポリシーだ。「安全性をきちんと確保しながら工事期間を短縮する。工事現場の近隣に迷惑を掛けないよう、細心の注意を払う。そんな取り組みを進めるために、SafieなどのITサービスを、今後も積極的に活用したいですね」(今西氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.