サービスによって大きく乖離(かいり)する「クラウドPBX」選択の勘所:IT導入完全ガイド(2/5 ページ)
事務所移転や働き方改革の推進などによってPBX機能をクラウドに移管する「クラウドPBX」が脚光を浴びているが、PBXの機能継承やコミュニケーション基盤連携などサービス選びには落とし穴も。その勘所とは?
音声品質をどう確保するのか
VoIP技術によって音声のIP化が以前から可能になっているが、社内の電話網をIPネットワークに統合する際には、事前のアセスメントはしっかり行っておきたいところだ。
例えばUC環境では、音声や動画などのデータストリームをリアルタイムに配送するSRTPなどのプロトコルが利用されるが、このSRTPの通信ではショートパケットが大量に配送される。ショートパケットの大量配送はネットワーク機器やサーバの負荷を増大させることにつながり、結果として音声品質に大きな影響を与える。ボトルネックになりやすいのは、プロキシやファイアウォールなど通信が集中しやすい部分だ。
また、音声やビデオのキューを優先的に通してあげるといったQoSをしっかりと設定することも品質確保には重要になるため、既存の構成で品質を落とさないネットワーク設計が可能なのかどうかも事前のアセスメントで確認しておきたい。
ちなみに、よく課題になりやすいのが、エンドポイントまでのラストワンマイルで利用されている無線LANの部分。外部からの影響を受けやすいため、音声品質を維持するためにはしっかり設計する必要がある。
なお、特定のソリューションでは、専用のツールを用いてボトルネックを特定し、それを改善していくためのフレームワークをパートナーに提供しているところもある。ただし、ツールである程度特定できたとしても、そこから原因を掘り下げていくのはアナログ的なアプローチで、ある意味職人技に近い。できる限り豊富な経験を持ったパートナーを選択してきたい。
注意したいユーザー教育
内線電話体系や保留、転送など電話の使い方は企業独自に培われてきた文化の1つで、その方法は企業の成長とともに社内で醸成されてきたものだ。現場としては、たとえクラウドPBXへ移行しても、これまで通りの使い方を踏襲してほしいというのが本音だろう。
だだし、最近ではスマートフォンの業務利用が進むなかで、固定電話の廃止とスマートフォンの内線利用といった新たな電話運用が現場にも広まりつつある。クラウドPBXに移行するタイミングでスマートフォン内線化やUC環境などへの展開も検討した場合、これまで行われてきた固定電話での運用とは大きく異なることも考えられ、現場から反発の声が上がることも少なくない。
現場には世代間のギャップやリテラシの違いなどが当然ながら存在しているため、その導入の意図やこれまでとのギャップ、実際の使い方を含めたユーザー教育を丁寧に行う必要がある。
一般的なITツールとは異なり、顧客とのやりとりや社内でのコミュニケーションに電話は欠かせないツールの1つ。この電話に関して大きな混乱を招いてしまうと、業務上支障になりかねないこともある。そのため、事前の教育はもちろん、社内ヘルプデスク体制の拡充やFAQの設置など、現場からの問い合わせにしっかり対応できる体制づくりにも取り組んでおく必要がある。
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