顔認証、顔認識で変わるセキュリティ対策:IT導入完全ガイド(1/5 ページ)
「顔認識」技術はここまで進化した。群衆の中から特定の人物を見つけ出し、10メートル離れた場所から視線の先を追う。用途は実に広い。
画像認識技術の精度と機能性が向上し、入退室管理などが中心だった従来の応用領域が、セキュリティやセーフティ全般に向けて大きく広がっている。一方、ディープラーニングをはじめとするAI(人工知能)技術との融合が進み、マーケティングや広告、交通、金融、各種サービスへの活用も既に始まっている。
「顔認識」技術はここまできた
セキュリティとセーフティの面で最も注目度が高まっているのが「集団の中で特定の人を見分ける」顔認識と顔認証の技術だろう。2020年の大イベントを前に、不審人物(テロリストや手配中の犯罪者など)の発見は重要な保安対策になる。また施設への入場や入室に際して権限のある(登録された)人物以外を拒否する用途には実際に国内でも利用されている。
これまで本人認証にはIDカード(ICカード)などの持ち物による認証や、パスワードや暗証番号などの本人の記憶に頼る認証、指紋、指や手の静脈、虹彩、顔などのバイオメトリクスが使われてきた。しかし、持ち物による認証は偽造や盗用のリスクがあり、記憶による認証も記憶情報を窃取されると脆い。
その欠点を補うために、バイオメトリクス認証の併用が勧められるのだが、顔認証以外の方法では、センサーに手や指を数秒間接触させたり、カメラをのぞき込んだりと、利用者の何らかのアクションが必要となる。また事前の生体特徴の登録にも時間と労力がかかりがちだ。
一方、顔認証のための顔情報の登録は身分証などの写真画像だけ、あるいは現場でのカメラ撮影だけで済み、登録時間も労力も最低限、嫌悪感も他の方法に比較すると少ない。また認証を行うタイミングではカメラが顔を捉えるものの、カメラの方向を向くまでもなく、手に荷物を抱えたまま撮影エリアを通り抜けるだけで完了する。
つまり顔認証は、利用者の心理的負担を少なくし、何かに触れたり、立ち止まって操作する必要がなく(非接触、非拘束)、利便性が高いのだ。さらに、登録時も認証時も一般的な解像度のWebカメラなどでの撮影で十分(登録時は写真プリントからの撮影でもよい)なので、専用装置が不要なのも特徴である。
認証の精度は大きな問題だが、現在のところ、バイオメトリクス認証の中では虹彩、指紋、静脈認証に次ぐ精度が実現しており、サイン、掌形、声紋よりも優れている。
精度の面では、NIST(米国国立標準技術研究所)が世界各社の画像認識技術をベンチマークする性能評価プログラムで、NECが2009年から2013年にかけて連続3回、1位に評価されている。2017年には動画からの顔認証性能を評価するNISTの新しいベンチマーク(FIVE:Face In Video Evaluation)でも1位を獲得した。
NIST評価は空港の搭乗ゲートのように1人ずつが撮影エリアを通るような好条件での認証精度と、競技場など人の多い場面での遠方、近距離での撮影のような悪条件での認証精度が評価されるが、NECの技術はそのどちらの条件でも、他の技術に比べ低いエラー率だった。2013年のNISTベンチマークでは認証エラー率0.3%(照合精度99.7%)を記録しているが、実際の現場では撮影条件による差が大きいため、NECでは一般的に精度公表はしていない。
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