顔認証、顔認識で変わるセキュリティ対策:IT導入完全ガイド(2/5 ページ)
「顔認識」技術はここまで進化した。群衆の中から特定の人物を見つけ出し、10メートル離れた場所から視線の先を追う。用途は実に広い。
顔認識・認証技術のあらまし
画像の中から顔の部分を抽出(顔検出)し、そこから本人ならではの「特徴点」を幾つか検出(特徴点検出)して、登録された特徴点と照合(顔照合)するのが顔認識、照合技術の基本である。
顔検出はデジタルカメラなどでも搭載されている技術で身近なものになっているが、その顔の情報から特徴点を割り出すのがこの技術の肝心なところ。瞳中心、鼻翼、口端などの特徴に加え、目鼻の凹凸や傾きなども含めたさまざまな特徴が抽出される。これにより、照合時に対象者が横を向いていたり、メガネをかけていたり、顔の一部が隠れていたりしても、正確な照合が可能になる。
照合時にはこうした多数の特徴の中から個人識別に最適な特徴を選択して照合する。この技術の組み合わせにより、顔の経年変化にも対応可能になり、登録画像の撮影から年月がたっても対象者を特定できるという(ただし、子どもから成人への変化は難しい)。
利用できる画像の解像度としては、NECの技術では目と目の間が15ピクセルあれば認識可能で、カラー、モノクロ画像で差はない。赤外線カメラの画像でも問題ない。低解像度でも、対象者がどんな向きでも顔認証が可能になるよう、ディープラーニングを用いた性能と精度向上が図られているところだ。
では次に、顔認識・認証技術はどのような場面に生かされるのか、ユースケースを紹介していこう。
ウォークスルー顔認証
駅の改札でSuicaをかざして通る要領でゲートを通ると認証されるのが「ウォークスルー顔認証」だ。2016年のリオ五輪で日本PR拠点だった「Tokyo 2020 JAPAN HOUSE」では、カメラの前で立ち止まらずに歩いて通過すると顔認証が行われるゲートセキュリティが導入されていた。記者会見場として使われた同施設に入場する記者は、プレスパスのIDカードをタッチしてゲートを通る直前に顔が撮影され、即座に登録データと照合されるシステムになっていた。顔とIDカードの二重認証を行っていたわけだ。およそ1秒未満で認証が行えるこの技術は、入退管理に広く役立てることができるだろう。
例えばイベントチケット購入者の顔画像を購入時に登録すると、イベント会場では顔パスできるようにすることも可能だ。ただし濃いサングラスやマスクの着用では認証できない可能性があるため、サングラスやマスクを外すことを求めるといった人による補助的な対応も必要ではある。
入退室管理・勤怠管理
入退室の際の顔認証、勤怠管理のタイムカード代わりの顔認証は、既に多くの導入事例がある。社員など入室権限のある人の顔を登録して、出入り口で認証するシステムだ。そこでの時刻データが人物プロファイルとひもづくので、正確な入退室、勤怠管理が行える。
オフィスでの利用の他、例えば多くの協力会社が出入りするイベント会場のボランティア受付、介護施設における入居者の無断外出検知、店舗での万引き常習犯発見などにも活用されている。海外では空港での入国審査などの保安目的にも広く使われている。
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