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ガスト全店のマニュアル電子化、5万人の退職者を減らせるか?事例で学ぶ!業務改善のヒント(1/3 ページ)

毎年5万人もの退職者が出てしまうすかいらーくグループ。抜けた穴を埋めるために都度5万人ほどの採用、教育活動も必要だった。そんな同社は離職率低下に向け、マニュアルの改善に目を付けた。その軌跡を追う。

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 約10万人の従業員に対し、毎年5万人が退職。その穴を埋めるべく毎年5万人の採用を行っている――。これは大手飲食チェーン、すかいらーくの実情である。

 同社は採用への応募者数には困っていないと語るが、新しく従業員を雇用する上では、膨大な採用コストや教育コストがかかる。また、顧客へのサービス品質はベテラン従業員の方が高い傾向にあるため、従業員の離職率を下げるだけでなく、長期的に育成する視点が重要だった。

 そこで、同社は従業員向けのオペレーションマニュアルを電子化し全面的に刷新、これにより新しく雇用した従業員の教育スピードを向上させるとともに、離職率の低下につなげようとしている。本稿では2017年2月5日に行われた、すかいらーくとスタディストの発表会見で紹介内容を基に、同社の軌跡を紹介する。

従業員数10万人を超えるも、その半数の5万人が1年で退職

 大阪万博が開催されたのと同じ1970年、日本で初めてのファミリーレストランとして「すかいらーく」1号店を東京都府中市に出店したすかいらーく。その後、順調に事業を拡大し、現在、「ガスト」や「バーミヤン」をはじめとした同社の店舗数は3144店、パート、アルバイトを含めた従業員数は10万人を超える。

金谷 実氏
すかいらーく 常務執行役員 金谷 実氏

 しかし、同社は店舗で働く人材面にある問題を抱えていた。すかいらーく 常務執行役員 金谷 実氏は、「当社は、昨今多くの企業で課題に挙げられているような人材獲得難に陥っているわけではない。幸い、知名度が高くなったこともあり、アルバイトへの応募数は増えている。採用数も2015年から増加し続けているが、問題は採用した従業員の定着率が低いことにある」と言う。

 冒頭に紹介した通り、すかいらーくでは毎年5万人が退職している。そのため、各店舗では退職者が生じる度に新しい人材を雇用する必要にかられていた。もちろん、新人を雇えばその分レクチャーなどに手間とコストがかかる。また、接客の品質にも少なからず影響を及ぼすだろう。

 金谷氏はこの問題の原因として「店舗でのオペレーション業務の難易度が高いことが関係している」と語る。その一番の要因がメニューの改定だ。店舗従業員にとって、メニューの改定はオペレーション内容の変更につながり、その都度、変更内容を覚え直す必要がある。改定の頻度が高ければ高いほど従業員に負荷がかかり、業務の難易度が高くなる。実際に金谷氏によれば、「例えば、グランドメニューの種類と改定が少ない『しゃぶ葉』では、その他のメニュー改定が多い業態と比べて離職率が10%ほど低いといったデータもある」という。

 そこで、すかいらーくはオペレーション業務のマニュアルに目を付け、そこに改善を施すことにした。具体的にはマニュアルを電子化し、従業員の個人端末からマニュアルがいつでも参照できるようBYOD(Bring Your Own Device)の仕組みを形成。従業員がメニューの作成手順などといったオペレーション内容を、各自都合のよいタイミングで自学自習できる環境をつくり、トレーニングを充実させることが狙いだ。

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