「そして誰も使わなくなった…」放置されたBIツール、「牛角」チェーンの復活劇とは(1/3 ページ)
「牛角」などの飲食店チェーンで知られるレインズインターナショナルは、海外製のBIツール導入に失敗、「導入1年後には誰も使わなくなった」状況に陥った。同社のBIツール活用の軌跡とは。
日々、経営の宝となるデータは集まるものの、大量のデータをExcel上で加工し、集計することに限界を感じている企業は多い。しかし、いざBIツールを使おうとしても、利用者の活用促進が進まなかったり、インフラ性能の問題に頭を悩ませたりすることもあるだろう。
「牛角」などの飲食店チェーンで知られるレインズインターナショナルもそうした問題を抱えていた。同社は一度海外製のBIツール導入に失敗、「導入1年後には誰も使わなくなった」状況に陥ったという。しかし、今はその失敗を生かし、経営スピードを大幅に上げるBI活用、利用普及に成功している。
ウィングアーク1stが2月28日に開催した「BI導入成功企業が語る、失敗しないBIツール選定ポイントと活用ノウハウ」セミナーで、同社の常務取締役 経営戦略統括本部長 大場良二氏が登壇し、同社の事例を紹介した。本稿では、同氏が語ったBIツール導入の経緯やポイントを紹介していく。
売上、受注、勤怠管理システムの相互参照で経営スピードにブレーキ
レインズインターナショナルは社員571人、直営店アルバイト4750人(2017年12月末現在)を要する外食店舗経営、フランチャイズ、食材等の卸売を主事業とする横浜市の企業である。創業は1987年だが1996年に現在の焼肉チェーン「牛角」の全身となる店舗をオープンして以降、「しゃぶしゃぶ温野菜」や「土間土間」などのブランドを次々に立ち上げ、2003年(7年後)にはグループ1000店舗と急成長を遂げてきた(2017年末現在では国内1251店舗、海外145店舗に拡大)。
その急成長の秘訣は「何よりもスピード重視の経営」だと大場氏は言う。朝に出した命令を夕方には変えるという意の「朝令暮改」は一般に悪いマネジメントの例だが、それを是をとする文化が同社にはある。朝決めたことでも問題があると分かれば解決策を夕方には実行する、そんなスピード感を大切にしているということだ。
そのスピード経営を支える要素は数あるが、中でも「売り上げ」「発注」「勤怠」の情報は、経営の可視化や改善の上で非常に重要だ。しかし、1250を超える店舗から毎日収集するこれら情報は一度データセンターに集約されるものの、集計や保管などの処理は個別のアプリケーションを通して行わざるを得ないという問題があった。
全体最適を想定したシステム構築は理想だが「店舗展開スピードが非常に速いため、現場業務の遂行を最優先した結果」個別最適なシステム導入になってしまったという。また、フランチャイズ店ではシステム導入は自店の経費となり、簡単にシステム刷新とはいかない事情もある。
DL、Excelでの加工、集計…データ分析で人間関係にもひびが生まれる
各システムの情報を横串で分析するには、個別にログインして参照、データ抽出してExcelで集計する必要があった。
とはいえ、売上データだけでも、商品コード単位で月あたり1900万件を超えるデータ量が集まり、そのダウンロードや単純な集計処理には多くの時間がかかる。さらに、売り上げデータをその他の発注データなどと突き合わせて複雑な集計を行うには、一層の時間がかかる上、現場スキルが足りないという問題もあった。
また、システムの定型帳票とは異なる軸でのデータ抽出したい場合にも、大変な工数がかかっていた。例えば、店舗ごとの日別、月別の売り上げデータだけでなく、時間帯や顧客の属性別といった細かい単位でのデータを抽出したい場合に、ユーザー部門ではどうにもならず、別途システム部門に依頼する必要がある。こうしたニーズは度々発生していたが、多忙なシステム部門にデータ抽出を依頼しても結果が出てくるまで1〜3日を要しており、結果的に部門間の人間関係にもストレスが発生していた。
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