「そして誰も使わなくなった…」放置されたBIツール、「牛角」チェーンの復活劇とは(3/3 ページ)
「牛角」などの飲食店チェーンで知られるレインズインターナショナルは、海外製のBIツール導入に失敗、「導入1年後には誰も使わなくなった」状況に陥った。同社のBIツール活用の軌跡とは。
国産新BIツールで1900万件のデータ処理が数秒へ
新BIツール導入効果はすぐに表れた。手間と分析時間が大幅に軽減したことが第1の効果だ。まずデータのダウンロードやPCでの処理の手間がなくなり、1250店舗、月あたり1900万件のデータの粗利集計ならExcel版を使えばたった数秒で完了するようになった。
また帳票はユーザー部門が自由に指標を選んで作成できるため、必要に応じた分析が可能になった。これが第2の効果だ。例えばレシートデータから顧客が会計した時点の時刻を抽出し、顧客の最初の注文時刻と突き合わせた帳票では、時間帯ごとに店舗の繁閑状況が正確に判断できる。
あらかじめクロス集計した帳票を作っておけば、ユーザーのデータ加工の手間も省ける。また、同じ指標でデータを見たい場合でも、「グロス値を把握したい人」と「明細データを参照したい人」に分かれることがあるが、帳票の項目にリンクを設定し、ドリルダウンやドリルスルーで詳細をたどるようにすることでそれぞれの要求を満たせる。
ユーザーからの評判も上々だ。システム部門を通さずに、手元のPCで速く、しかも技術スキルも要求されず、必要な分析ができるようになったという声が届いたという。一方のシステム部門へのデータ抽出依頼は月間数件程度に激減し、同部門の負荷減少にもつながった。
ちなみに、導入1カ月ほどで安定稼働したのちはシステム的なエラーが発生しておらず、運用管理にかかる人的コストはほぼゼロだという。
同社の「何よりもスピード」重視の社風と新BIツールは相性がよさそうだ。今後は同社を含むコロワイドグループ各社への浸透も考えているとのことである。
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