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「11万被災市民のため」AIで年間数億円の効果を狙う熊本市、次の5年で何をする?イベントレポートアーカイブ(2/4 ページ)

 4月3日、熊本市は、「クラウドソリューションを活用した働き方改革基盤構築プロジェクト」のスタートを宣言した。5年間の長期プロジェクトであり、自治体として最大規模の「働き方改革」への取り組みとなる。その背景と内実を取材した。

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267カ所に散在する市民をどう守るか

 このプロジェクトが立ち上がったきっかけは、熊本地震直後の混乱の中で避難所、物資拠点、市役所と区役所の間での情報連結が円滑に行えなかったことへの反省がある。

 熊本市の大西一史市長は、「11万の市民が267カ所の避難所に避難し、交通網も寸断される中で、効率的に支援物資を届けることができなかった」点を反省しつつ、「今年度(2018年度)は震災復興計画の折り返しとなる年。被災者生活再建など震災復興の加速に最優先で取り組むとともに、(市民サービスの充実と満足度向上を図るための)市役所ならびに教育機関の働き方改革を推進し、『新しい熊本』を創造していく」と、今後の展望を語った。

3.11復興時のノウハウを生かした「くまもとRねっと」

 地震直後、情報が錯綜(さくそう)した状況で、被災者と行政との間の情報共有を支えたのが、日本マイクロソフトが無償提供した「Office 365」とパートナー企業が提供した600台のタブレットデバイスをベースにした「くまもとRねっと」だった。

 Rねっとには、同社が2011年の東日本大震災後にも複数の被災自治体に「Microsoft Azure」や「Office 365」を提供して支援した経験が生かされていた。

 これにより復興支援が円滑に行えるようになったという。この経緯の中で育まれた熊本市と日本マイクロソフトとの信頼関係が今回のプロジェクト発足につながった。

日本マイクロソフトの支援を受けた「くまもとRねっと」が震災直後に活躍
日本マイクロソフトの支援を受けた「くまもとRねっと」が震災直後に活躍
熊本市を訪問し、大西市長(左)から感謝状を送られた平野社長(右)
熊本市を訪問し、大西市長(左)から感謝状を送られた平野社長(右)

 大西市長は「日本マイクロソフトは自治体の働き方を大きく変えていくための重要パートナーと感じた。庁内システムは更改予定のタイミングでもあり、これを機に『Microsoft 365』をフル装備し、日本マイクロソフトが長年取り組んできた働き方改革を、その技術と改革マインドを含めて全面的に導入する」という。

 Microsoft 365は「Office 365」「Windows 10 Enterprise」「Enterprise Mobility + Security」を統合したものを指す。モバイルの活用を前提にセキュリティ対策を含む働き方改革向けのサービスだ。

 クラウドサービスは、平時には通常業務を行う基盤となる一方、災害時などの対応には同一プラットフォームで利便性が高く効果的な情報共有や交換が可能になる。そのメリットを「身をもって体験した」のが導入の最大のきっかけになったようだ。

 また一方で強調する「働き方改革」には、「Microsoft MyAnalytics」(Office 365ベースの働き方分析ツール)に期待する。これはワークスタイルに関わる会議やメールなどの情報を個人ごとに収集して、会議や業務の無駄を発見し、効率化のための気付きを生むツールだ。同時にコラボレーションを活性化する効果もある。「Microsoft 365のAI機能を使って、世界中から得られたエビデンスを基にした個人への働き方アドバイスが得られることに期待している」(大西市長)。

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