「11万被災市民のため」AIで年間数億円の効果を狙う熊本市、次の5年で何をする?:イベントレポートアーカイブ(3/4 ページ)
4月3日、熊本市は、「クラウドソリューションを活用した働き方改革基盤構築プロジェクト」のスタートを宣言した。5年間の長期プロジェクトであり、自治体として最大規模の「働き方改革」への取り組みとなる。その背景と内実を取材した。
熊本市と日本マイクロソフトとの連携のポイント
震災直後から熊本市の復興支援を行ってきた日本マイクロソフトの平野拓也社長は「当社のミッションはインテリジェントな技術を通して日本の社会変革に貢献すること」と述べ、「2019年4月までにMicrosoft 365を活用した基盤を構築、市職員間および教職員間の情報交換を活性化し、迅速な意思決定を加速させ、市が推進する『多彩なライフサイクルに合わせた行政サービスの向上』に貢献するとともに、市民への情報提供を活発にし、コラボレーションをより深め、行政改革の徹底的な推進を目指す」とした。
市職員の働き方改革
(1)Microsoft 365をフル活用した市民サービスの提供
Microsoft 365を全庁で採用することで、時間や場所にとらわれない市民サービスの提供や、市民協働を推進するための環境を整備する。既に市庁には約600台のタブレットデバイスが配備済みだが、多くを占めるのは「Windows 7」搭載のデスクトップデバイス(約6000台)。教職員の利用システムもライセンスはバラバラだったが、今後全てをMicrosoft 365ライセンスに統一する。
(2)Microsoft 365に含まれるSkype for Businessの活用
市民からの問い合わせ対応などに活用し、市民向けサービス活用シナリオを検証する。
(3)MyAnalyticsを利用した全庁職員および教職員の働き方の可視化と改善
Office 365をベースに、働き方データを大量に収集、分析して可視化するのがMyAnalyticsの役割だ。これによりユーザー自身が働き方の改善点に気付き、会議の無駄、コミュニケーションの無駄などを省き、業務効率向上、時間外労働削減などに生かすことを期待する。大西市長によると「働き方の可視化により仕事ぶりが変えられる。例えば必要書類を探す時間が1日10分短縮できれば年間6億円程度の節約が可能になる」という。
(4)AIを含む最新技術利用を前提とした働き方改革の検証、実現
AIチャットbotなどの活用により職員の業務量軽減、さらに充実した市民サービスの実現を目指す。市民からの問い合わせ対応、窓口支援、施設予約などをプロトタイプで検証する他、「Microsoft Translator」を利用した外国人対応のための多言語化も予定する。
(5)日本マイクロソフトの社員の働き方ノウハウや社内実証データ提供
行政機関と民間企業との違いを比較し、両者の働き方改革の推進に活用可能にする。
(6)災害に備え、官民連携を含めた強化基盤を構築
平常時の情報インフラをそのまま非常時の連携手段の情報基盤として転用できるよう整備する。災害時に庁内情報基盤を活用することで、必要な人材、物資、資金等のリソース割り当てを最適化可能にする。
(7)NPOとの連携ネットワーク
東日本大震災において災害復興支援に活躍したNPOと連携して「地域情報ネットワーク(みんなの縁側)」を立ち上げ、そのノウハウを共有、官民連携を強化する。
(8)情報基盤活用方法の追求
新しい支援方法を自律的に生み出せる情報基盤として、発展性を持った仕組みを検証する。
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